三菱電機(株)は,がん治療に使用される粒子線治療装置用に,がん病巣へ世界最高クラスの精密照射ができる小スポットビームとハイブリッド・スキャニング照射法を開発した。今後,実証試験などを行い2012年度から順次実用化を目指す。
陽子線治療装置イメージ図(回転ガントリー内) |
ハウスマシン棟外観 |
●開発の特長
1. 世界最小クラスの照射ビームスポットにより正常細胞への影響を低減
- 小スポットビームの開発により,陽子線の照射スポットサイズを世界最小クラスとなる従来比半分以下の約3mm(1σ,水中)を実現
- 炭素線の照射スポットサイズについても将来的には従来比半分以下の約1mm(1σ,空気中)を目指す
2. ビーム照射線量制御による連続照射を実現し,治療時間を短縮
- ハイブリッド・スキャニング照射法の開発により,次の照射スポットへの移動中のビーム 照射線量を管理することで,病巣に沿った精密な連続照射を実現
- 連続照射により治療時間を短縮
3. 加速器から照射系まで,トータルシステム提供による高い安定性を発揮
- 加速器や回転ガントリーは,信頼性の高い従来の機器をそのまま採用
- ビーム位置と強度の高い安定性を実現する加速器を提供
- 照射系装置内の真空化やヘリウム充填によりビーム散乱を軽減し,高精度化を実現
●開発推進体制
スキャニング照射技術を利用した治療装置の開発を推進するため以下の施策を実施。
(1) ハウスマシンによる陽子線治療装置の開発
同社電力システム製作所(神戸市)内に粒子線高度利用研究棟(以下,ハウスマシン棟)を保有しており,現在ハウスマシン棟にスキャニング照射法の検証用実証機を製作中。
検証試験終了後は運転技術員のトレーニングセンターとして活用する。
(2) 群馬大学との共同研究
同社製炭素線治療装置の納入先である群馬大学と共同研究を実施。産学の力を結集して将来技術の開発を進めている。 |