ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)メディカル カンパニーは,頻脈性不整脈の根治治療の一つであるアブレーション治療用イリゲーションカテーテル「NAVISTAR®THERMOCOOL®」(販売名:ナビスター サーモクール)の心房細動,ならびに心室頻拍の適応追加について2011年10月5日(水)付で厚生労働省より承認を取得した。
「ナビスター サーモクール」は,頻脈の原因となる心筋を焼灼する際に,カテーテルの先端から生理食塩液を灌流しながら通電し,標的病変を冷却しながら焼灼することで,過度な温度上昇を防止し,血栓形成リスクを低減させるイリゲーションカテーテル。心腔内の形態を立体的に認識する同社の3Dマッピングシステム「CARTO®システム」との併用で,より高精度な解剖情報による適切な診断と通電部位の決定,さらに安全なカテーテル操作を行い,不整脈の原因となる心筋を正確に焼灼する。日本において,2009年7月の発売以降,T型心房粗動に適用され,不整脈の治療をサポートしてきた。
この度,このナビスター サーモクールに,心房細動と心室頻拍の適応が追加された。
心房細動は,不整脈の中でも特に患者さんの多い疾患で,日本での患者さんは約100万人(発作性・慢性を含め)と推定されている。また,心房細動は特に加齢とともに増加するとされているが,その発症率は60代の男女では人口の1%,70代では2.1%となり,発症率の高い男性を見ると,60代では1.9%,70代では3.4%となっている。また,超高齢社会に突入した日本では心房細動の患者さんは今後増えていくと考えられている。心房細動は,それ自体が致命的な疾患ではありませんが,持続することで,心房内に血栓ができやすくなり,その血栓が心原性脳梗塞など重篤な疾患を引き起こす原因となる。脳梗塞の約30%が心原性のものであると考えられている。
弘前大学大学院医学研究科 循環呼吸腎臓内科学講座 奥村謙教授は,「心房細動の患者さんには,抗不整脈薬治療では効果が得られなかった方が多くいらっしゃいましたが,『ナビスター サーモクール』の心房細動治療への適用が承認されることにより,安全に確実にアブレーション治療を行うことができるようになり,心房細動を根治治療することで,脳梗塞の発生リスクを低減させる可能性が期待され,患者さん及びそのご家族の皆様のQOL(生活の質)の向上を期待します。」とコメントしている。
一方,心室頻拍とは,頻脈性不整脈の中でも特に心臓のポンプ機能が低下するため,場合によっては意識の消失や突然死に至ることもある,重篤な不整脈。心室頻拍に対しては現在,抗不整脈薬や植込み型除細動器による治療が行われているが,抗不整脈薬の効果が十分ではなかったり,植込み型除細動器の作動によるQOLの低下が問題になる場合がある。この心室頻拍へのカテーテルアブレーション治療の適応追加により,深刻な不整脈で困っている患者さんに対し,新しい治療オプションを提供できるようになる。
横浜労災病院 不整脈科 野上昭彦部長は,「この『ナビスター サーモクール』の心室頻拍に対するカテーテルアブレーションの適応追加により,患者さんは薬剤,植込み型除細動器に次ぐ新たな治療オプションが増える事になります。それにより,今まで治療が困難であった心室頻拍や,植込み型除細動器の頻回作動に悩まされていた患者さんのQOL向上に役立つが期待されます。」とコメントしている。
●「NAVISTAR®THERMOCOOL®」の製品特長
- ナビゲーション下でのイリゲーション
同社の3Dマッピングシステム「CARTO®3」,「CARTO® XP」システムと併用することで,カテーテル先端部分を視覚化することができ,それにより,安全なカテーテル操作と,高精度な解剖情報で適切な診断と通電部位の決定をサポートする。
- 血栓発生リスクの低減
先端チップおよび電極と心筋の接触面に生理食塩液を灌流させて冷却することにより,過度な温度上昇を防止し,血栓発生のリスクを低下させる。
- 高効率通電による手技時間短縮
効率的な通電により,手技時間のロスを防ぐ。通電中は常に設定した出力で安定しているため,短い焼灼時間での効果的な通電を可能にする。
- 2006年8月米国FDAより,心室頻拍治療への適用承認を取得
米国では,2006年8月にFDA(米国食品医薬品局)より,同製品の心室頻拍治療への適応が承認された。
- 2008年11月米国FDAより,心房細動治療への適用承認を取得
2008年11月にFDA(米国食品医薬品局)より,当製品の心房細動治療への適応が承認された。他の不整脈も含め,全世界で累計50万人以上の患者さんに使用されている。
- 2009年7月 日本での実績
2009年7月に発売以来,日本では20,000人以上の治療実績がある。
|