GEヘルスケアグループの世界中核拠点の1つであるGEヘルスケア・ジャパン(株)が主催する「第23回GEヘルシーマジネーション大賞」の一般部門 大賞に東京都世田谷区在住の介護士,岩﨑大(いわさき まさる)さん(33歳)の作品,「所を捨て,一緒に暮らそう。」が,学生部門 大賞に京都大学法学部4年生の坪田将明(つぼた まさあき)さん(23歳)の作品,「見逃される老人達」が選出された。
GEヘルシーマジネーション大賞は誰でも応募できるヘルスケアに関するアイデアコンテスト。今年は世界に先駆けて進みつつある高齢化に焦点をあて,「世界一,シニアが健やかに輝く国,日本へ」をテーマに,世界に誇れる高齢社会の構築,または高齢化を取り巻く諸問題解決に貢献するアイデアを募集した。医療関係者のみならず,学生,主婦,会社員や定年後の方々など,20歳から74歳までの幅広い職業と年齢層の方から81編の応募を集めた。
一般部門大賞を受賞した岩﨑さんは,介護の現場で働く経験の中から,「人は刺激が必要です。そしていろんな人々との触れ合いの中でその刺激は得られる物です」と指摘し,「今こそ,施設を開放しよう。そして高齢者,障害者,学童保育,保育所など限られた人を施設に閉じ込めるのを止めて,一緒に暮らそう」と強いメッセージを発信している。
学生部門大賞を受賞した坪田さんは,市民向けの無料法律相談会に携わった経験をもとに,「痴呆を患う老人(中略)は周囲に親身になって相談してくれる人間がおらず,近隣住民や家族と無用のトラブルに巻き込まれていることが多い」という現状を,「周りの人間がサポートする以外に無い。家族が頼れないならば,地域単位で彼らの状況を把握し,援助を行う組織が不可欠だと考える」と分析しつつ,「今のままでは痴呆という健康問題は永遠に解決しないだろう」と警鐘を鳴らしている。
高齢社会研究の第一人者である審査員の東京大学 高齢社会総合研究機構 執行委員 辻哲夫 教授は,「いずれ(の作品)も高齢社会に向けての思いを生き生きと描いた優れたもので,皆様の思いにあるような明るく温かい高齢社会を皆で目指したい」と総括したほか,同じく審査員を務める財団法人消費者教育支援センターの有馬真喜子理事長は,「全体に,高齢者を社会のなかの弱者,困った存在,庇護しなければならないものとして捉えるのではなく,高齢者は年輪を重ねた存在感のある存在であると捉え,まさに『シニアが輝く』ような社会を,みんなで一緒につくろうよ,という感覚が満ちあふれていました。人を排除しない,インクルージョンの力強さのある日本をみる思いがありました」と振り返っている。
また本大賞では,大賞受賞者が賞金と同額(5万円)を本人が選択した医療福祉施設・団体・機関に寄付するというプログラムを設けており,一般部門大賞受賞の岩﨑さんは医療法人社団心身会が運営するグループホーム「わらく」(東京都狛江市)に,学生部門大賞受賞の坪田将明さんは同じく5万円を,NPO(非営利活動)法人「きずなの会」(本部:愛知県名古屋市)に寄付した。
グループホーム「わらく」は,2003年に狛江市にオープンした医療法人社団心身会グループの複合介護施設「和楽」にあるグループホームで,認知症高齢者の共同生活を支援および介護している。心身会は,内科・循環器内科・老人内科・老人精神科の医療機関,デイケア,デイサービス,認知症高齢者グループホーム,介護老人保健施設などをもつ医療法人で,現在東京・調布市を中心に,地域に根差した医療と,高齢者およびその家族を支援する医療と看護,介護に取り組んでいる。
NPO法人「きずなの会」は2001年9月,高齢者等の人権擁護活動を目的として愛知県から認証を受けて設立。以来,身寄りがない高齢者や障害者の方,身寄りがあっても頼みにくい方たちの万一の時に「家族の代わりになって」支援することを目的として,幅広く活動している。2009年5月には内閣府から全国認証を受け,2010年10月現在,約4,300名の高齢者等と「生活支援契約」を結び,親族に代わる生活支援活動を行っている。
今回の寄付について,受賞者,ならびに寄付金贈呈先の「わらく」と「きずなの会」の代表はそれぞれ,以下のコメントを寄せている。
(第23回GE ヘルシーマジネーション大賞 一般部門大賞受賞 岩﨑大さん)
私が,この度受賞を受ける事が出来たのは,全て,私と常日頃,話し,食べ,歌い,料理をし,入浴し,睡眠し,排泄し,笑いあった入居者さん,及びグループホームわらくのみなさんのお蔭だと思います。素直に,一番,感謝をしている我が職場に,寄付する事で少しでもみなさんのお役に立てたいと思い,選ばせて頂きました。
(グループホーム「わらく」 ホーム長 菊地克夫さん)
岩崎様,この度の大賞受賞 心よりお喜び申し上げます。希望に満ちたとても力強い作品であったと思います。また,小施設を寄付先として選んで頂いたことを光栄に思い感謝申し上げます。「遂にここにもタイガーマスクが…!」という喜びに近いものも感じますが,当グループホームで暮らしている方々は,恵まれない人達ではありませんし,障害者でもありません。“認知症”という症状を如何にハンデとならない様に支援するか!それが私達の役目であると思います。世話をしているのではなく,生活を支援しているのです。今の若い人達には無い秘めた力,知恵を沢山持っています。ハンデがあるとすれば,それは高齢であることです。作品にもありましたが,閉じ込めるのではなく,地域住民として人々と交流し,開かれた“所”を目指しています。そして,支援するスタッフにも光が当たる様に,社会に,行政に発信し続けていきたいと考えています。有り難うございました。
(第23回GEヘルシーマジネーション大賞 学生部門大賞受賞 坪田将明さん)
きずなの会は,身寄りがない高齢者や障害者の方,身寄りがあっても頼みにくい方達に対して,万一の時に「家族の代わりになって」支援することを目的に幅広く活動なさっています。独居高齢者を中心に身元保証や財産管理を通じてサポートを行う同法人の活動は,これから少子高齢化がますます進む中で重要になってくると思います。また,私の提言である,周囲に助けてもらえる人がいない高齢者にも支援の手を与えてほしいという考えにも通じます。同法人の活動の拡大・充実に寄付金を使って頂きたく選出致しました。
(NPO法人きずなの会 理事 杉浦秀子さん)
このたびはきずなの会へのご寄付を賜りまして,きずなの会職員一同にかわりまして心より御礼申しあげます。きずなの会は10年前に名古屋でスタートした,高齢者障がい者の方の身元保証をお引き受けする団体です。入院や入居の際に必要となる保証人がいない,親族はいても色々な事情で頼めない,夫婦だけの世帯で互いが保証人になることができない,などさまざまなご事情を抱えた方々が,きずなの会の支援を求めてお見えになられます。そういう方々をきずなの会は生涯にわたって,家族の代わりとなって,必要な支援をしていきます。多くの方々が,坪田様のおっしゃるように周囲からの助けの得られにくい方がたです。中には大変な経済困窮の方もいらっしゃいます。こういう方がたに対する私どもの支援活動に対して,共感とご理解をいただき今回のご寄付をいただけましたこと,本当にありがたく,今後の活動の励みとさせていただきます。ありがとうございました。
●第23回GEヘルシーマジネーション大賞 選考結果
≪一般部門 大賞≫
岩﨑大(いわさき まさる) 介護士・33
作品タイトル:
「所を捨て,一緒に暮らそう。」
受賞作品: 僕は今,グループホームという形態の介護施設で働いている。入居者さんの内ほとんどが認知症患者である。僕らは出来る限り認知症の進行が遅くなるよう務めている。しかし痛切に感じるのは,如何に僕らが,よい声かけをし,笑わせても,たった一人の子どもの笑顔には決して勝てないと言う事である。認知症の人に限らず人は刺激が必要です。そしていろんな人々との触れ合いの中でその刺激は得られる物です。今こそ,施設を開放しよう。そして高齢者,障害者,学童保育,保育所など限られた人を施設に閉じ込めるのを止めて,一緒に暮らそう。例えば,みんなが集いやすい駅の上などに。そして,屋上野菜畑なんかがあってその収穫祭を広場で鍋を振る舞おう。老人バンドがいたっていい。車椅子で踊ろう。各々が問題を抱えていても,各々が出来る事をしあって支えていこう。施設という『所』ではなく『営み』の場を造る,そしてその中で活きる事がなによりも健康であると思う。
受賞コメント:
介護の仕事の中で,日々感じている希望や願いを賞という形で受け止めて頂き大変感謝しております。今回発信させて頂く事で少しでも,介護につきまとうネガティブな印象を変えていけたら幸いです。高齢化,孤族化が進むこれからは,共に暮らすという目的のもと,行政,企業,テクノロジーそして何より一人一人が手を取り合って高齢社会のモデルを世界に提示できる国になるよう1mmでも前進に尽力したいと考えております。
審査員講評:
実に明るく且つ身近で現実的であり,またお年寄りの方々が実際どういうことに喜びを感じるのかという本質を捉えた素晴らしいアイデアだと思います。たくさんの方々が楽しそうに集っている微笑ましい光景が目に浮かぶようだ。
≪学生部門 大賞≫
坪田将明(つぼた まさあき) 京都大学法学部4年生・23
作品タイトル:
「見逃される老人達」
受賞作品:
私は市民向けに無料法律相談会を行う部に所属している。学生による相談ということから,弁護士や行政に頼れない,相手にされない方々によく来所頂くのだが,その中には痴呆を患う老人も多い。彼らは周囲に親身になって相談してくれる人間がおらず,近隣住民や家族と無用のトラブルに巻き込まれていることが多い。最悪のケースであると,痴呆に付け込まれ,利用され,相続や契約で不利な地位におかれていることもある。自らの力で声を上げられる方,周囲に協力してくれる人がいる方は幸福である。しかし,私の出会った老人達は統計の数字にも出ず,保護も受けられない見捨てられた人々なのだ。自らの力で主張できない彼らが尊厳を持って人生を送るには,周りの人間がサポートする以外に無い。家族が頼れないならば,地域単位で彼らの状況を把握し,援助を行う組織が不可欠だと考える。今のままでは痴呆という健康問題は永遠に解決しないだろう。
受賞コメント:
学生部門大賞に選ばれとても光栄に思います。「世界一,シニアが健やかに輝く国,日本」を築いていくためには,なによりもまず厳然としてある高齢者が不当に抑圧されている現状を改善し,安心して社会で生活し活躍する素地を作らねばならない,と考え提言させていただきました。受賞を通して私のアイデアを御覧になった皆様が,そのような視点から新たな問題点,改善点を身の回りで発見されることに繋がれば幸いです。
審査員講評:
普段私たちが中々気づかない所での深刻な問題に関する強烈なメッセージが込められた。身近に誰も助けてくれる人がいない高齢者の方々を援助するには地域単位で周りの人間がサポートすべきということがご自身の体験を基にした切なる思いとして伝わってきた。
≪優秀賞5名≫
氏名 |
職業 |
作品タイトル |
堀井 弘 |
パート職員 |
おばちゃんのお惣菜店 |
原田 圭祐 |
会社員 |
“人生の師”が“学校の先生”となる場を制度化する。 |
渡辺 なみこ |
専業主婦 |
亀の甲より年の功! |
石田 秀樹 |
会社員 |
キッズ×シニア=キャリアウーマン |
岡村 智子 |
販売員 |
老人ニュース |
*岡村智子さんは同大賞専用ホームページにて実施した一般投票での選出 |
●第23回GEヘルシーマジネーション大賞 表彰式・寄付金贈呈式
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下段左から: |
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・ 優秀賞受賞 |
岡村 智子さん |
・ 一般部門 大賞受賞 |
岩﨑 大さん |
・ 審査員 GE ヘルスケア・ジャパン(株) 代表取締役社長 兼 CEO |
熊谷 昭彦氏 |
・ 優秀賞受賞 石田 秀樹さん ・ 優秀賞受賞 |
渡辺 なみこさん |
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上段左から: |
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・ 寄付金贈呈先:NPO 法人きずなの会 事務局責任者 |
冨田 真弓さん |
・ 寄付金贈呈先:NPO 法人きずなの会 理事 |
杉浦 秀子さん |
・ 寄付金贈呈先:グループホーム「わらく」 ホーム長 |
菊地 克夫さん |
・ 審査員 東京大学 高齢社会総合研究機構 執行委員 教授 |
辻 哲夫氏 |
・ 協賛(財)消費者教育支援センター 専務理事 |
富岡 秀夫氏 |
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