東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 関節疾患総合研究講座の岡敬之氏と,(株)イノテックが合同で開発した膝関節診断支援ソフトKOACADが,Microsoft Innovation Award 2010 最優秀賞を受賞した。同センターで行っている変形性関節症の統合研究プロジェクトROAD(Research on Osteoarthritis Against Disability)スタディの成果である。このソフトウェアは,健康に大きな影響を与えて社会問題にもなっている変形性膝関節症のレントゲン上での全自動診断に,世界に先駆けて成功したもの。医療ソフトでは初めての受賞で,12月2日のMicrosoft Innovation Day(東京,九段)で発表された。
●発表者
岡 敬之(22世紀医療センター 関節疾患総合研究講座 助教)
吉村典子(22世紀医療センター 関節疾患総合研究講座 准教授)
中村耕三(22世紀医療センター長,整形外科・脊椎外科 教授)
川口 浩(整形外科・脊椎外科 准教授)
●受賞ソフトウェアの内容
変形性関節症(osteoarthritis; OA)は,高齢者の要支援・要介護原因疾患のそれぞれ第1位・第3位を占めており,高齢者の健康寿命の延伸,全国民の健康向上に大きく関与している。中でも,変形性膝関節症は国内で患者数2400万人と推定されており,その予防法・治療法の開発は社会的にも焦眉の課題。それにもかかわらず,変形性関節症の研究は国内・国外を通じて,他の生活習慣病に比べても明らかに遅れている。これは,糖尿病におけるヘモグロビンA1c や骨粗鬆症における骨密度測定に相当するような定量評価法が,変形性関節症には存在していないためである。
22世紀医療センター(中村耕三センター長)では,2005年より変形性関節症の統合研究プロジェクトROAD(Research on Osteoarthritis Against Disability)スタディを樹立し,関節疾患総合研究講座の岡敬之氏が中心となって膝関節レントゲン画像の定量評価・客観的重症度指標の確立に取り組んできた。その結果,ソフトウェアKOACAD(Knee osteoarthritis computer associated diagnosis)の開発に成功した。このソフトウェアは,膝関節レントゲン画像において重症度指標(内・外側の関節裂隙の最小距離および面積,骨棘面積,大腿脛骨角)を瞬時に全自動で計測して定量値を出力するものである。従来のレントゲン読影においては評価者内および評価者間評価にばらつきが大きいことが問題となっていたが,本ソフトの利用により一定で正確な重症度評価が可能になった。
本ソフトウエアは岡敬之氏が独自に開発に着手し,(株)イノテックと共同でバージョンアップした。 |