米国医療機器・IVD工業会(AMDD)は11月16日,厚生労働省に対し,医療安全問題に関する提言書を提出し,X線装置などの特定保守管理医療機器への保守点検の現状,そして改善策を提言した。
特定保守管理医療機器への定期的,かつ適切な保守点検は,医療法で義務付けられている。2009年に日本画像医療システム工業会(JIRA)が,日本の1,000医療施設を対象に行い,2010年に発表した調査によると,特定保守管理医療機器への保守点検の実施は一部に留まっており,ポータブルX線装置,造影剤注入器,手術用X線装置では,それぞれ16.2%,16.8%,20.4%のみという結果が出ている。
特定保守管理医療機器に対する保守点検の未実施は,以下のリスク発生が危惧され,行政,医療施設,医療機器販売業者といった,関係各方面での努力が求められる。
1) 問題発生の都度,緊急修理を要することによる生産性の低下
2) 整備不良の機器の故障率の増加
3) 患者や医療従事者を巻き込む医療事故の発生
●提言内容
■医療施設への提言:担当職員への十分な訓練と教育の実施
医療施設は,担当者が,医療機器の標準的な取り扱い手順を守り,日常的な保守点検の実施を保証するため,各医療機器に同梱されている添付文書を元に,十分な訓練と教育を実施することが必要
■行政などへの提言:医療施設の保守点検を促進するための奨励策の検討
厚生労働省や財団法人日本医療機能評価機構などの行政関連機関は,医療施設での保守点検義務の徹底を促進するために,以下のような奨励策の検討が必要
例1)(財)日本医療機能評価機構の評価項目に,特定保守管理医療機器の保守点検記録の確認を加えるなど,監査を通して保守管理の徹底を促す
例2)特定保守管理医療機器への保守点検義務を遵守する医療施設に対し,診療報酬上にインセンティブを設定する
■医療機器製造販売業者への提言:医療施設への十分な情報提供と研修の実施
製造販売業者は,医療施設に対し,保守点検の必要事項に関して,積極的な情報提供を行うとともに,医療施設が,日常的な保守点検義務を十分に遵守できるよう,技師や職員に研修を実施することが必要
医療機器への定期的,かつ適切な保守点検は,検査や治療中のトラブル発生や整備不良による故障のリスクの減少,さらには患者や医療従事者を巻き込んだ医療事故発生の予防につながる。AMDDは,特定保守管理医療機器に対する保守点検実施率の向上は,医療安全の確保のために非常に重要な問題と考え,引き続き,厚生労働省をはじめとする行政機関,医療施設,医療機器製造販売業者といった関係各所への提言を行っていきたいとしている。 |