東芝メディカルシステムズ(株)の最新3テスラMRIシステム Vantage Titan 3Tのグローバル1号機が2010年9月,杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)にて,臨床撮像を開始した。
Vantage Titan 3Tは,従来3テスラでは画像化が難しいとされていた腹部や骨盤領域などの躯幹部を撮像できる最新技術「Multi-phase Transmission」を搭載。頭部や整形領域だけでなく躯幹部でも3Tのメリットである高SN比を生かした診断画像が得られるため,幅広く日常の臨床で使えるMRIシステムである。
杏林大学 医学部 放射線医学教室 教授 似鳥俊明氏は「広い開口径とすぐれた静音化機構が,従来の3TMRI装置には無かった快適な検査環境を被験者に提供してくれている。使用者側にとっては,独自に開発搭載されたMulti-phase Transmissionの効果は予想以上で,3T装置の躯幹部応用拡大に強力なツールになると期待できる。また非造影MRAも優れたSN比のもとで使用でき,応用範囲の拡大が可能となる。新たな診断法・領域の開拓に頭をめぐらせる事を我々に許すポテンシャルを持ち,3TMRIならではの高い診断能を,手馴れた1.5T装置の検査感覚で得ることが出来る完成度の高いシステムと言える。」と評価している。
なお,3T使用経験は9月20日に行われる日本放射線学会秋季大会 ランチョンセミナー,10月2日の日本磁気共鳴学会 ランチョンセミナーにて講演を予定している。
■第46回日本医学放射線学会秋季臨床大会
ランチョンセミナー「Open Bore 3T MRIと320列面検出器CTの最新臨床応用」
日時:9月20日(月・祝)12:15-13:15
会場:パシフィコ横浜 502室
座長:倉敷中央病院 放射線科 渡邊祐司氏
講演1:Toshiba 3T MRIの初期臨床経験
杏林大学医学部放射線医学教室 本谷啓太氏
■第38回日本磁気共鳴医学会大会
ランチョンセミナー「次世代のOpen Bore 3T MRIによる臨床応用」
日時:10月2日(土)12:10-13:10
会場:つくば国際会議場 第3会場
座長:杏林大学医学部放射線医学教室 似鳥俊明氏
講演1:Open Bore 3T Technology
東芝メディカルシステムズ(株) 青木郁男氏
講演2:3T MRIの臨床応用〜中枢神経領域を中心に〜
杏林大学医学部放射線医学教室 土屋一洋氏
「Multi-phase Transmission」技術で画質のムラを改善
MRIは高磁場になるほど画像化に必要な電波が高周波になる。電波は高周波になるほど,また対象物が大きくなるほど人体との干渉度が増し,RF磁場(B1)の不均一が発生し,画像のムラにつながる。
東芝3T MRIシステムは,この問題を解決するために「Multi-phase Transmission」技術を新開発,搭載した。Multi-phase Transmissionは送信の位相と振幅を調整してRF磁場の不均一を改善し,画像ムラを低減させる最新技術。RF磁場の精度を向上させるために,全身コイルの構造にも工夫を加えるとともに,RFアンプを増やし,全身コイルに給電するポイントを従来の2ポイントから4ポイントに増やした。これにより躯幹部でも高均一画像を可能とした。(図1 Multi-phase Transmissionによる回転磁場の補正イメージ図)
図1
世界最大クラスの71センチ開口径と静音化機構
MRIの検査音は原理的に,磁場が高くなるほどうるさくなる。また,画質を確保するために,架台開口径が狭いものもある。東芝は,静音化機構「Pianissimo」と架台開口径を確保するための薄型傾斜磁場「Slim Gradient」を搭載し,広い検査空間と,騒音から開放されたリラックスできる検査を実現。体が大きな患者さんや側臥位の患者さんでも,最先端の検査を快適な環境で受けることができる。
3Tにおける非造影MRA
日本人の死因の第2位,第3位が心疾患,脳血管疾患である現状を踏まえると,脳卒中診断から躯幹部各臓器における分枝動脈の診断,足指や手指の末梢血管の正確な診断を,造影剤なしで高磁場の優れたSN比のもとでおこなえるという臨床メリットは大きいものと期待される。
腎性全身性線維症(NSF: nephrogenic systemic fibrosis)を引き起こす可能性があるとされるガドリニウム含有造影剤を使用せずに撮像する非造影MRA。東芝は定評と実績ある非造影MRA技術であるFBI法やTime-SLIP法をVantage Titan 3Tに搭載。中枢神経系の血管はもちろん,腹部や骨盤,四肢末梢の血管にいたるまで,各診療領域において3Tの高いSN比を活かした非造影MRA検査を行うことを可能とした。
|