マイクロソフト(株)は,ITを活用した医療機関向けの院内の業務効率化や安全性向上などのソリューション推進を拡充し,地域医療サービスの質の向上支援を目的とした「地域医療連携ソリューション」の推進を加速化する。
厚生労働省の策定した「地域医療再生計画」では,医師の不足などにより,地域の病院,診療所,開業医などの医療機関の連携による,医療サービスの提供が求められている。また,医療機関では,患者の症状に応じた,適切で迅速な治療が求められており,地域の医療機関が相互に連携をする際に,診断画像などの診療情報を共有する手段として,ITが有効とされている。
マイクロソフトは,これまでの医療機関とのコミュニティ活動を通じて得たノウハウをもとに,汎用的なマイクロソフトのテクノロジとインターネットの組み合わせによる「地域医療連携ソリューション」を更に加速させ,パートナー企業との連携により,医療現場のニーズにあわせて提供する。
地域の中核病院は,汎用的で,オープンなマイクロソフトのテクノロジを活用した「地域医療連携ソリューション」を導入することで,放射線画像・レポートや検体検査などの医療情報の集約や,連携する医療機関との情報共有が可能で,今後クラウドへの移行も容易になる。また,連携先の医療機関と,患者の診療情報の情報共有をする際に,PC端末に情報が残らないので,強固なセキュリティを確保することが可能になる。
マイクロソフトは,パートナー企業との連携により,クラウドの活用を見据えながら,2012年までに30機関への本ソリューションの導入を目指していく。本ソリューション採用の第一弾として,国家公務員共済組合連合会立川病院(以下立川病院)において採用が決定し,運用が開始された。
●主な特長
- 医療機関のニーズにあわせた情報システムの対応が可能となり,電子カルテシステムやオーダリングシステムに縛られないオープンな情報システム環境を実現
- 医療機関の情報システムで利用されている業界標準技術(HL7)やシステム毎に異なる固有のフォーマット(XML,CSV,固定長)と柔軟に連携
- 汎用的なマイクロソフトテクノロジとインターネットを活用することで,クラウドへの移行や制度の変更,連携する医療機関の追加など,情報システムの柔軟な対応が容易
- 利用者権限に応じて情報を提供すること,専用ソフトを活用した従来の地域医療連携ソリューションと同等のセキュリティやサービスレベルを提供
- 地域の中核病院と連携する医療機関は,専用端末や特別なアプリケーション,専用線を導入することなく,Windows® オペレーティングシステム(OS)の標準機能やブラウザーでインターネット回線を通じて利用可能
今回,地域医療連携ソリューションを決定した立川病院では,かねてより連携先医療機関から「紹介患者の診療情報や検査結果情報をより早く確実に提供して欲しい」といった要望を受けており,この要望を満たし,なおかつセキュリティを確保し,連携先医療機関にとって負担にならない解決策として,本ソリューションを採用し,導入することを決定した。立川病院は,本ソリューションで,2010年内に20機関と連携し,2012年内には60〜100機関との連携を実現し北多摩地域での効果的な地域医療連携の促進と発展を目指す。
これまで,立川病院では,紹介患者の検査結果を紙や電子媒体で連携先医療機関に提供していたが,本ソリューション導入により,連携する医療機関と患者の医療情報のデータの共有,および共有の自動化が実現した。
また,立川病院と連携する医療機関では,紹介された患者の検査結果を入手するのに平均3〜4日,複数検査の場合は約3週間かかっていたが,本ソリューションの導入により,所有しているPCやブラウザー上で,検査を実施した翌日には検査結果を参照することが可能になった。立川病院と連携する医療機関側は,インターネット接続回線とPCさえあれば,特別な初期投資は不要で運用後のサービス使用料も発生しない。なお,セキュリティ面においては,患者基本情報などの個人情報がデータとして利用者側に渡らないよう,USBメモリなどの外部デバイス使用や,画面のスクリーンショット保存機能,印刷操作に制限を設けるなどの対策がとられている。
●立川病院において採用されたソリューションの概要
連携対象システム:医事会計システム,放射線画像システム,検体検査システム,紹介患者システム
構築パートナー :JFEシステムズ,ストローハット,東芝メディカルシステムズ
構成ソフトウェア製品:Windows Server® 2008,SharePoint® Server 2007,SQL Server® 2008,BizTalk® Server 2009,Intelligent Application Gateway 2007,Silverlight® 3.0
以下,立川病院の地域医療連携ソリューションの運用にかかわった関係者のエンドースコメント。
■JFEシステムズ(株) 常務執行役員:SIソリューション事業部長 宮原一昭 氏
「JFEシステムズは,マイクロソフト株式会社様による「地域医療連携ソリューション」の推進に賛同するとともに,「地域医療連携ソリューション」が,地域の中核病院を中心とする地域医療サービスの向上に寄与するものと確信しております。JFEシステムズは,これまでマイクロソフト製品をベースとした様々なソリューションを提供して参りました。今後もマイクロソフト株式会社様との連携により,これまで蓄積した知見,ノウハウを最大限に活用し安定した「地域医療連携システム」の推進を実現すべく,企画,設計,開発,運用・保守までトータルなご支援をご提供して参ります。」
■東芝メディカルシステムズ(株) SI事業部 SE部 参事 五十嵐州一 氏
「東芝メディカルシステムズ株式会社は,立川病院様のご依頼を受けてマイクロソフトと連携し,院外からリモートデスクトップ接続して画像とレポートを参照するシステムの構築を行いました。今回の「地域医療連携ソリューション」では,既存の放射線画像システムを活用し,院内と院外から同様の操作感で参照できる情報システムを実現しました。本ソリューションは,今後,多くの病院に通信インフラ以外の初期コストの削減というメリットを提供できるものと期待しています。」
■立川病院
「立川病院は,マイクロソフトの「地域医療連携ソリューション」の推進に賛同し,心から歓迎いたします。立川病院では,マイクロソフトが推進する「地域医療連携ソリューション」を採用したことで,電子カルテシステム等の医療ベンダーに縛られないオープンな環境をベースに,地域の連携先医療機関が容易に利用できるしくみを構築することができました。今後,この仕組みを更に推進して連携医と一層の強化をはかり,地域医療の質の向上と活性化につなげたいと考えております。マイクロソフトには,今後も中立的な立場で地域の医療機関の事情に応じたソリューションを更に展開していただくことを期待しています。」
●立川病院 システム構成図
●立川病院 地域医療連携システム画面イメージ
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