特定非営利活動法人日本インターネット医療協議会(略称:JIMA)では,2003年より“eヘルス倫理コード”と呼ばれる自主的基準で医療・健康サイトを評価・審査,準拠が認められたサイトに信頼を意味するトラストマークを付与する事業を行ってきたが,このたび,導入が比較的容易で,費用無料のマークを医療機関等のサイトに付与する新たな認証サービスを,本年8月1日から開始する。従来の有料マークとあわせ,2年以内に1,000以上の医療・健康サイトへのマーク付与を目標に,規制が及びにくいインターネットにおいて,サイトの運営者が自主的に質の確保に努めていくトラストプログラムのいっそうの普及をめざす。
現在,インターネットの医療機関のホームページは,広報もしくは情報提供の扱いで,医療法における広告規制の対象外とされている。しかし,平成19年4月の医療法の広告規制の見直しにより,たとえば,インターネットでの検索サイトで検索結果のページで表示される文言や不特定多数に送付する電子メールなど,一部ケースでは広告として扱われることが厚生労働省のガイドラインに明示された。
同協議会が1昨年,昨年と継続的に行った調査では,複数の大手検索サイトを使って広告表現としては認められない「アンチエイジング」や「審美歯科」などの用語で検索したところ,医療機関名が特定できるかたちで違反表現が使われていた。保健所等の監督機関の指導があるにもかかわらず,今も状況が変わらない理由には,インターネットは広告規制がないとの甘い解釈や,インターネットでは刻々と内容が更新されていて違反情報が特定しにくいなどがある,とみている。
1998年の発足時から,JIMAでは「医療情報発信者のガイドライン」の自主的基準に基づき評価・審査したサイトに認証マークを付与する事業を行ってきたが,長年の取り組みにもかかわらず,マークの数が伸び悩むなど普及面での課題があった。同様の活動は海外でも行われているが,自主的な取り組みには限度があり,規制強化の動きも出てきている。中国では,昨年7月の「インターネット医療保健情報サービス管理弁法」の施行により,インターネットで医療健康関連の情報を発信する場合は,地域の行政監督書の許可が必要で,医療広告は承認を得た範囲内とされ,違反には厳しい罰則が科せられるなどの規制が始まった。
わが国では,厚生労働省の「医療情報の提供のあり方に関する検討会」で,インターネットで提供されている情報には問題が多い,との指摘が相次ぎ,同省も「社会保障審議会医療部会」(平成17年12月)の方針を踏まえ,関係団体とも協議の上,「インターネット上で)適切な広報を行うためのガイドライン」を作成していく,としていた。インターネット上の公共性のある医療情報に関しては,今後,サイトの運営管理者の責任が求められるようになってくるものと予想される。
JIMAでは,法的規制によらずに自主的ガイドラインで質を確保する仕組みを提唱,2003年に医療・健康サイトの注意点を細かくまとめた“eヘルス倫理コード”を策定・発表,本コードによるサイトの第三者評価と認証マークの付与を中心とした信頼性向上のプログラム=JIMAトラストプログラムを運用してきた。しかし,申請時の費用や審査の厳しさがマーク普及のネックになっていると分析,トラストプログラムの更なる普及には,導入が容易で費用無料のマークも必要と判断した。
新プログラムでは,医療機関等の非営利活動を主とするサイトを対象に,運営主体者情報の開示,問合せ窓口の設置,医療広告等関連法規の遵守,プライバシーポリシーの掲示など,eヘルス倫理コードのミニマムスタンダード(最低基準)によるセルフアセスメントを行い,マークを申請。適合性が認められると,レギュラータイプのトラストマークが付与され,サイトに掲示することができる。新しいマークは,従来のマーク(ゴールドタイプ)とは異なるデザインになっている。また,従来のマークを取得するには,申請料,審査料,マーク使用料が必要だったのに対し,新しいマークは費用無料となる。簡易審査と費用の無料化により,申請者の負担を軽減,医療機関等がプログラムを導入しやすくし,マークの付与数が増え,認知度が高まることも期待している。
JIMAでは,医療機関向けのホームページ制作会社などの協力も得て,2年以内に1,000以上の医療・健康サイトに両タイプのマークを付与,規制が及びにくいインターネットにおいて,サイト運営者が自主的に質の向上に努めていくトラストプログラムのいっそうの普及をめざしていく。eヘルス倫理コードは,すでに英語版,中国語版もできていて,カナダのうつ病の日本語サイトにマークを付与している。アジアでの普及も視野に入れている。
また,普及にあたっては,組織内でeヘルス倫理コードの運用を担当したり,これを外部から支援する業務を担う人材育成を目的に,2004年より資格認定してきたeヘルス倫理コードマネージャー,同アドバイザーを活用。さらには,マーク付与数の増大で,評価チェックが薄くならないよう,インターネット上の医療情報や医療広告をウォッチするヘルスインフォメーションウォッチャー(HIW)を育成・起用,問題があれば適切なフィードバックと必要に応じて行政窓口に通報・問合せを行っていく全体的な仕組みを構築していく方針である。
日本インターネット医療協議会は,医師や患者,市民が中心となって1998年に任意団体として発足,2003年6月にNPO法人化。理事長は,辰巳治之・札幌医科大学教授。
●参考ページ
・JIMAトラストプログラムについて
http://www.jima.or.jp/trustguide/trustprogram.html
・JIMAトラストマーク申請手続き案内
http://www.jima.or.jp/trustguide/trustmark_annai.html
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