GEヘルスケアグループの日本法人であるGEヘルスケア・ジャパン(株)は4月9日(金),次世代のコンピューター断層撮影装置(CT)「Optima CT660 Pro(オプティマ・シーティー660・プロ)」を,全国の臨床病院を主対象に発売する。
Optima CT660 Proは,米ゼネラル・エレクトリック(GE)が昨年5月に立ち上げた医療戦略「ヘルシーマジネーション」の重点分野の1つである「地域に適した技術開発」の一環として,国内の医療機関の声をもとに国内で開発・製造した64列CT。2009年5月に発売した高機能モデル「LightSpeed VCT Vision」に相当する診断能力を有しながら,ガントリ(機構部)上部に12インチのカラーモニターを初めて搭載して,検査時の患者不安の軽減や操作性の向上を図るとともに,小型化や電力消費量の削減など高い経済性を実現した。
Optima CT660 Pro最大の特長である同社初搭載の新開発カラーモニター「Xtream Display(エクストリーム・ディスプレー)」では,クマやペンギンなどのキャラクターを活用したアニメーションや検査内容を説明する動画を放映可能なほか,検査時の息止め指示と検査の残り時間を表示でき,小児から高齢者まであらゆる患者の安心感を高める。加えて,検査で最も時間のかかる患者の位置決めを迅速化できるセミオートポジショニングモードや,夜間・休館時の急患が発生した際にも専任操作者以外が対応可能な緊急検査モードなど,ユーザーの操作性を高める機能を搭載している(下図参照)。
またOptima CT660 Proの高い経済性を支えているのが,そのコンパクト性とランニングコストの低さである。Optima CT660 Proの最小設置面積は3m(縦) x 5m(横)と同社製64列CTに比べて約12〜24%小さくて済む。またこれまでの64列CTの必要電源容量は150kvAだったが,Optima CT660 Proは16列以下のCTと同じ75kvAで済むため,これまで16列以下のCTを使用していた医療機関も検査室の改修や電源工事をすることなくOptima CT660 Proに切り替え可能となる。さらに,夜間や休日の待機電源を抑える機能を搭載することで,従来の同社製装置に比べて電気代を6割節約,医療機関のコスト削減に貢献するほか,環境性能の充実も図っている。
Optima CT660 Proは,幅広のワイド検出器とハイピッチのヘリカル(螺旋)スキャン,ならびに新開発のクリア・ビュー・テクノロジーの搭載で,高速かつ高画質での撮影と被ばくの低減を両立。高速性を実現するのが,幅40mmのワイド検出器による1.375のハイピッチ・ヘリカル撮影で,心臓なら5心拍で,全身も10秒で撮影可能。新開発のクリア・ビュー・テクノロジーに含まれる主要機能は,新画像再構成技術「エイサー(ASiR:Adaptive Statistical Iterative Reconstruction)」と「シーブイアイアール(CViR:Clear View Image Reconstruction)」の2つである。
近年の検出器の多列化に伴い,撮影断層像は加速度的に薄くなり,より微細な病変検出に貢献してきたが,同時に画像ノイズも増大するため,断層像ごとの密度分解能は低下し続けてきた。この画質の劣化を補うためには,X線照射量を増やすことが不可欠であるが,照射量の増大は被ばく量の増加につながるため,画質向上と低被ばく化は常にトレードオフの関係にあった。
Optima CT660 Proは,新画像再構成技術ASiRを搭載することで,撮影画像から密度分解能を左右する画像ノイズを除去することに成功,照射するX線量が同一の場合の密度分解能を従来に比べて最大20%向上し,一枚ごとの画質向上を実現した。逆に従来と同等の画質であれば最大40%の被ばく量削減が可能で,高画質と被ばく低減の真の両立を実現している。微細な病変を捉える必要のある検査においてはこれまでと同じX線量で,通常の画質で十分な場合にはX線照射量を大幅に低減した撮影を可能にすることで,患者と担当医に最大限のメリットを提供する。またこのASiRの搭載で,従来機では出力80kWで撮影したのと同等の画質を48kWの出力で描出可能となるため,医療機関の省エネにも貢献する。
また,CViRの搭載で撮影画像からアーチファクト(偽像)成分のみを除去,ASiRとあわせて更なる画質の向上を実現。この高速かつ高画質撮影の実現で,臨床的には,救急や小児医療などの高速低被ばく検査及び検診への有用性が期待されている。 |