三菱重工業は,京都大学医学部附属病院から最新鋭の放射線治療装置(線形加速器システム MHI−TM2000)を受注した。がん患部の位置を正確に把握し,ピンポイントで照射できる先端医療マシンで,周辺の身体組織への放射線障害を極力回避しながら高精度のがん治療を簡便に行うことができるのが特徴。納入は7月の予定。これにより,同装置の受注累計は2008年4月の市場投入以来,国内で4台,海外で1台の計5台となる。
京都大学医学部附属病院は1899年設立のわが国を代表する総合病院。放射線治療科は日本の放射線治療をリードしており,先進的ながん放射線治療を積極的に行っていることで名高い。
放射線を用いたがん治療では,体内の見えない病巣へ正確に放射線を当て,周辺の正常組織への副作用をいかに抑えるかが課題となる。MHI−TM2000は,エックス線撮像装置を2基装備し,世界最高レベルの精度の正確な放射線照射を可能としたことにより,正常組織への副作用を極力回避するだけでなく,従来装置では患者が乗った寝台を旋回させることで生じる位置ずれリスクを,患者側ではなく装置側を旋回させることで極小にした。また,これまで熟練した放射線技師が時間をかけて行っていた患部への位置合わせを自動でも可能とし,より簡便に実現することで,患者・医療スタッフ双方の負担を大きく軽減している。
同社は,現在,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け,肺呼吸や消化器の働きにより揺れ動くがん病巣をリアルタイムで追尾しながら連続的に照射する世界初の「動体追尾放射線照射」機能(薬事未承認)を有す装置の開発を進めるなど,製品の幅を着々と広げつつある。当社は今後も,医療機器の開発・製造・販売を強力に推進していく。 |