エドワーズライフサイエンス(株)は,僧帽弁専用の人工弁輪「カーペンターエドワーズフィジオリングU」(以下,フィジオリングU)を,全国の医療機関向けに発売開始した。
フィジオリングUは,僧帽弁形成術に世界で最も多く使用されてきた人工弁輪「カーペンターエドワーズフィジオリング」(以下,フィジオリング)の次世代モデル。多くの臨床例で培われた経験の蓄積と新技術を組み合わせ,僧帽弁本来の立体的な形状と動きに合わせたデザインを実現した。
部分的に柔軟性を調節して弁輪へかかるストレスを軽減し,これまでのフィジオリングと比べ僧帽弁によりフィットするよう生理的形状に近付けた3次元設計を採用している。さらに,縫着輪にカフを付けて術者が縫合しやすいデザインとした。
心臓弁膜症のひとつである僧帽弁閉鎖不全症は,左心室と左心房を隔てる僧帽弁が十分に閉じず,左心室から左心房へ血液が逆流してしまう病気で悪化すると心不全などを引き起こす。治療には,弁置換術と弁形成術という二つの治療法がある。弁置換術は,悪化した弁を,ウシの心膜などで作った人工弁に取り換える治療法。一方,弁形成術は患者自身の弁を生かし,心臓弁の周囲(弁輪)に人工の弁輪を縫い付けることで,弁を正常な状態に戻るよう形成し,血液の逆流を止める治療法。フィジオリングUは,僧帽弁形成を行うための人工弁輪である。
●カーペンターエドワーズフィジオリングUの特長
◆柔軟性のあるセミリジット構造
僧帽弁の生体的な動きに合わせて部分的に柔軟性を変えている。弁の開閉によって動きが出る部分には柔軟性を取り入れ,動きの少ない部分はより硬くすることで,弁輪へ掛かるストレスを軽減することが期待できる。
◆ダブルサドルシェイプ
前尖部に鞍型(サドルシェイプ)のデザインを初めて採用したフィジオリング発売から15年,3Dイメージやコンピュータのリモデリング技術の向上により,僧帽弁本来の立体的な形状が更に明らかになった。また,本来の僧帽弁輪も前尖,後尖ともに鞍型であることが解明された。フィジオリングUでは,それら最新の研究結果を反映し,前尖部へのサドルシェイプに加え,後尖部にもサドルシェイプを採用した。
◆縫いやすいカフ
針を通しやすくするために縫着輪のデザインを改良。これにより,正確かつ容易に人工弁輪を縫着することができるようになった。
日本では弁形成術の数は年々増加している。日本胸部外科学会の統計資料によると,1996年に年間2,677例だった弁形成術数が2007年には7,609例に増加している。人工弁輪の場合,自己弁を温存出来るため,血液を固まりにくくするための長期的な抗凝固療法が不要であるなど,術後のQOLの向上が期待できる。最近は,可能な症例には弁形成術を行うことが多くなっている。
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