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NEC
マサチューセッツ総合病院と
病理画像診断支援システムの
プロトタイプを開発・共同臨床実験を開始

(2009/10/22)

●問い合わせ先
NECイノベーティブサービスソリューション事業部
TEL 03-5441-6085
http://www.nec.co.jp/

 

 NECは,学術研究病院として最高位のハーバード大学関連病院「マサチューセッツ総合病院(以下 MGH)」の協力を得て,乳腺組織を対象とした「病理画像診断支援システム」を開発し,MGHに同システムのプロトタイプを納入,同病院の臨床サンプルを用いた共同臨床実験を10月より開始した。

 NECは従来から,中央研究所とNEC北米研究所において,病理画像診断支援システムの研究開発,国内検査センター等との実験を進めてきた。今回のMGHとの実験を契機に,「病理画像診断支援システムe-Pathologist」の名称で,北米,欧州,日本を含むアジアなどグローバルな事業展開を図っていく。

 病理画像診断支援システムは,現在病理医が顕微鏡を用いて行っている病理診断を,コンピュータで支援するものであり,デジタルスキャナを用いてデジタル化された病理組織画像中の組織および細胞の特徴から,がんと思われる領域の自動抽出,治療法選択のための免疫染色画像の特徴量計測などを高精度・高速に行うもの。

 NECが今般MGHの協力を得て開発したシステムは,乳腺組織を対象とし,H&E(ヘマトキシリン&イオシン)染色スライド画像から乳がんと思われる部位を自動抽出する機能と,特定の抗体を持つ細胞を染めた免疫染色スライド画像から,染色細胞を自動抽出・計測する機能を有するもの。NECとMGHは,昨年10月より,MGHが保有する膨大な病理サンプルを用いて,NECの機械学習アルゴリズムを「教育」し,上記の機能を実現するなど,開発を進めてきたが,本年10月より,実際の病理診断ワークフローでの利用を想定した共同臨床実験を開始した。

 NECとMGHは今後,前立腺組織を対象として同様の機能の開発を進める予定。また,MGHでは,同システムを導入することで,同病院の病理診断ワークフローの自動化,効率化,精度向上を進める予定。

 NECは,胃がん・乳がん向けシステムの日本市場向け販売を開始,MGHとの臨床実験の成果をもとに,2010年度上期中の出荷を予定している。北米市場向けは,MGHとの臨床実験後,乳がんと前立腺がんに関して,必要な法制(FDA基準)に基づく手続き等の対応後,販売を開始する予定。さらに同社は,本システムの病院,診療所,検査機関,学術機関などに対するSaaS/クラウド指向のサービス提供も計画している。

 がんの早期発見のためのスクリーニング装置の発展・普及や高齢化の影響で,特に先進国ではがん診断数が増加傾向にある。一方で恒常的な病理医不足が日本だけではなく,海外でも問題となりつつある。病理診断は,手術その他の治療法を決定するための確定診断となるため,見落としや誤検出があってはならない重要なプロセスであり,コンピュータを援用した診断支援が従来から求められていた。

 本システムにより,病理診断の迅速化,見落とし・誤診の低減,病理医間の診断レベル均一化の促進,最適治療法選択における精度向上が期待されると共に,病理画像や数量化情報の医師間の共有によるチーム医療の向上やネットワークを通した遠隔医の普及などにも貢献することができる。

●病理画像診断支援システムe-Pathologistの構成

本システムは,画像データを管理する病理画像管理サブシステムと病理画像を解析する病理画像解析サブシステムの2つのサブシステムから構成されている。
病理画像管理サブシステムは,バーコード付き病理スライドから画像取得装置(デジタルスキャナ)によりデジタル化された画像の蓄積・管理,病理画像解析サブシステムの実行管理,ラボの病理ワークフローに基づくバッチ処理の運用管理,解析結果の表示・レポート作成などを行う。
病理画像解析サブシステムは,乳腺,前立腺等の組織種毎に,それらの画像解析を行い,がん部位抽出などを行う。

●システムの特長

病理医の判断プロセスを模したヒューリスティックと,機械学習技術の組み合わせにより,高い認識精度を実現する。
低倍率での構造解析と,高倍率での細胞核評価などの組み合わせによるがん部位抽出が可能。