クックジャパン(株)は,腹部大動脈瘤(AAA)の血管内治療(ステントグラフト内挿術:EVAR)用デバイスとして日本で初めて承認された「クック ゼニス AAA エンドバスキュラーグラフト」(以下ゼニス)が,薬事法第14条の4第1項第1号の規定にともない,承認から3年を迎えたことから,PMDAによる再審査に向けた申請準備を進めていることを発表した。2006年7月11日に日本の薬事法第14条第1項に基づき,厚生労働省より新規の医療機器として承認(承認番号:21800BZY10175000)されて以降,約3,000の日本人患者がゼニスを用いた治療を受けており,国内での売上はトップを誇っている。
腹部大動脈瘤の血管内治療の適応は,開腹外科手術におけるハイリスク因子が存在するなどの医学的な諸条件により決められる。ステントグラフトを用いた手術は,従来の開腹手術に比べ切開部分が非常に小さく,全身麻酔を行う必要も少ないため,患者様の身体にかかる負担が大きく軽減される。また,開腹手術では術後に3〜4週間の入院期間を要していましたが,ステントグラフト手術では1週間以内に退院することが可能で,患者さんの生活の質(QOL)の向上に寄与する低侵襲の手術方法としての認知が高まっている。
奈良県立医科大学 放射線医学教室教授の吉川公彦氏は,次のように述べている。
「腹部大動脈瘤のステントグラフト治療は,他の病気で従来の手術による治療が困難な患者さんや高齢の患者さんにとって有用な治療法となっています。高齢化が進む日本で,今後も多くの患者さんを治療できるようになることを期待しています。」
また,東京慈恵会医科大学外科学講座統括責任者教授の大木隆生氏は,次のように述べている。
「医学史上特記すべき発明にはペニシリンや心臓バイパス術などいくつかの画期的なものがありますが,ステントグラフトは従来の開腹手術に比べて格段に高い安全性と低侵襲性ゆえに医学史に刻まれる画期的な発明です。そのステントグラフトがわが国でも使用できるようになった2006年7月11日は記念すべき日です。慈恵医大では過去3年間で500名以上の腹部大動脈瘤患者にステントグラフト術を行い,手術に伴う死亡は未だにゼロでありますが,これは開腹手術では到底達成できなかった事でしょう。」
さらに,日本ステントグラフト実施基準管理委員会事務局長である戸田中央総合病院副院長の石丸新氏は,「ステントグラフト治療は開腹手術に比べ患者さんの入院期間が短く,多くは格段に早く日常生活へ復帰することが可能です。この治療は,実施基準の審査に合格した経験豊富な医師によって安全に行われており,さらに普及するものと期待されます。動脈瘤でお悩みの患者さんには,基準管理委員会がインターネット公開している情報を利用して治療についての理解を深めていただきたい。」と語っている。
これらの利点から,日本でのステントグラフト内挿術の使用は過去3年間で劇的に増加した。ゼニスは上述のように腹部大動脈瘤の治療用として約3,000症例に使用されているが,今年に入ってからの症例数は更に拡大している。クックジャパンは現在,ゼニスの最新型や胸部大動脈瘤用ステントグラフト,また,より進化したステントグラフト内挿術製品の日本での承認に向けて活動している。
「日本の優れた医師のもと,ゼニスはこの3年間ですばらしい成果をあげてきました。動脈瘤や大動脈疾患に苦しむ日本の患者様への治療技術を向上するため,クックジャパンは今後もクックの最先端の血管内治療技術を日本に届けていきたいと思います。また,ゼニスの承認からこれまでの3年間で,数多くの患者様の治療に貢献できたことを大変嬉しく思います。」とクックジャパン代表取締役社長グレン・アスラン氏は述べている。
さらに,「国内治験施設の諸先生と関係機関のご尽力のもと,ゼニスは日本初の大動脈ステントグラフトとして承認されました。この度,承認後3年目の再審査と言う節目を迎え,市販後の臨床成績が検証され,今後の治療成績の更なる向上につながればと思います。」とゼニスの国内治験と承認申請を担当したクックジャパン シニアレギュラトリーサイエンスアドバイザー高田勝次氏は述べている。
また,クックジャパン アオルティク・インターベンション事業部 事業部長 山口直之氏は,「日本で最初に承認された製品,また世界的なリーダーとして,ゼニスは安定した品質と幅広いレンジにより日本の腹部大動脈瘤血管内治療の普及に貢献してきたのではないかと思います。クックジャパンはこれからも医師の皆様がより安全で低侵襲の治療を患者様に提供できますようサポートを続けて参ります。」と述べている。 |