GEヘルスケアグループの日本法人であるGE横河メディカルシステム(株)は4月17日(金),PET(陽電子放射断層撮影装置)と16列マルチスライスCT(コンピューター断層撮影装置)を一体化し,がんをはじめとした腫瘍検査に優れた特性を持つPET/CT「Discovery PET/CT 600(ディスカバリー・ペットシーティー・600)」を,大学病院,地域基幹病院,画像センターなどを主対象に発売する。
Discovery PET/CT 600は同社のPET/CT「Discovery」シリーズ5機種目となる最新機種。最大の特長は,PET/CTの宿命と言われている呼吸などに伴う「体動」に起因する課題を解決し,微小な動く病変の描出能力を一段と向上させたことである。臨床的には,従来は確定診断が困難であった微小ながんや転移・再発がんの発見・診断に威力を発揮し,がん治癒に最適な治療プロセスを患者に提供する。
同社が2003年に国内初のPET/CT「Discovery LS」を発売して以来,PET/CTは5年にわたって加速度的な発展を遂げてきたが,その間同装置の問題点も次第に明らかになってきた。そこでDiscovery PET/CT 600の開発にあたっては,顧客医療機関へのヒアリングをベースに集計したところ,現在のPET/CTが抱える最大の問題は,PETとCTの撮影スピードの違いから生じる画像化時の位相のズレに起因するものであるということが浮き彫りになってきた。 全身を撮影するのに,PETでは通常10〜20分かかり,その間呼吸などによる体動が伴うため,描出する画像は撮影時間中の動きを加算平均したものとなる。一方,CT撮影は息止めの状態で行われ,わずか10数秒で完了する。PET/CT検査では,診断時の正確性を高めるため,体内に投与された放射性医薬品の分布を表示するPET画像を,体内の正確な位置情報を表すCT画像をもとに補正しているが(吸収補正),PET画像とCT画像に位置のズレが,病巣位置の誤認識,偽像(モーションアーチファクト),定量値の過小評価という3つの問題を引き起こしていた。
そのような状況下において,Discovery PET/CT 600では新たに『Motion Free PET/CT』というコンセプトを掲げ,「Motion Correct(モーション・コレクト)」と「Motion Match(モーション・マッチ)」という2つの機能を搭載することで,PET画像とCT画像のズレを解消し,この問題を克服している。
これまでのPET/CTにおいては,撮影後のPET画像の吸収補正に通常のヘリカルCTで連続撮影した画像を使用していたが,Discovery PET/CT 600ではこの吸収補正に,対象部位を静止して複数回CT撮影をし,その加算平均画像を描出するAverage Cine CT(アベレージ・シネCT)機能を利用するMotion Correctを搭載。Static PET画像におけるより正確なCT吸収補正が可能になることで,モーションアーチファクトの低減と定量精度の向上を実現している。
また,PETとCT両装置の呼吸同期撮影,ならびに同じ呼吸位相での吸収補正(Phase Matched PET/CT吸収補正)を可能にするMotion Matchを搭載,微小病変を捉える確度を高め,定量性を大幅に改善している。
Motion CorrectとMotion Matchの搭載で,Discovery PET/CT 600はこれまでの体動に起因する課題をクリア,従来困難であった微小,かつ動く病変部の描出を可能にすることで,がんをはじめとする腫瘍検査に高い有用性を提供する。
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従来のPET/CT(左)とDiscovery PET/CT 600(右)の画像
従来のPET/CTではほとんど集積が見られない(左)が、
呼吸同期をかけることによって集積が明瞭に描出されている(右) |
またDiscovery PET/CT 600は,データ処理時の利便性や操作性の向上を図っている。従来のPET/CTでは,PETとCTの呼吸同期収集データの処理をマニュアルでこなしていたが,Discovery PET/CT 600ではこのデータ処理をコンソール上で自動化し,Motion Match時の処理時間を従来の約30分から6分の1の約5分に短縮するなど,データの処理時間を大幅に改善しルーチン検査での使用を可能にしている。また,使用前に毎日実施する検出器点検の自動化は現在GE製PET/CTでのみ実現しているが,Discovery PET/CT 600ではこの自動点検時間を従来の10分から5分へと半減するなど,利便性を高めている。さらに,同社製PET/CTでは初めてコンソールを日本語で表示するなど,操作性の向上も実現している。
さらに,Discovery PET/CT 600は,3D逐次近似画像再構成においても撮影中に再構成画像を表示可能な「リアルタイムPET/CTビュー」を搭載することで,ディレイスキャンの指示など検査時の柔軟性を高めている。
加えてDiscovery PET/CT 600は,従来からクラス最高を誇るPETの検出器の感度をさらに向上させたほか,最新の3D逐次近似画像再構成法「VUE Point Plus(ビューポイント・プラス)」を採用することで,SN比を高め,特に周辺部位の空間分解能の向上,ならびに高集積部でのアーチファクト(虚像)の低減を実現している。また,ハードウェアの強化を背景に,従来収集後約150秒/bedかかっていたPET画像表示を最速で約40秒/bedで可能にするなど,VUE Point Plusの搭載で画像再構成のさらなる高速化を実現している。 |