GEヘルスケアグループの日本法人であるGE横河メディカルシステム(株)はこのほど,同社製MR「Signa(シグナ)」シリーズの最新2機種「Signa HDxt 3.0T(シグナ・エイチディーエックスティー・3.0テスラ)」と「Signa HDe Second Edition(シグナ・エイチディーイー・セカンドエディション)」を発売する。
Signa HDxt 3.0Tは,現在臨床用としては国内最高の3T(テスラ)の磁場強度を有する同社製MRIの最上位機種,Signa HDe Second Editionは同社が開発・製造し,2005年12月の発売以来,既に全世界で400台以上,国内でも100台を越える受注実績を有する「Signa HDe 1.5T(シグナ・エイチディーイー・1.5テスラ)」の後継機種である。
●Signa HDxt 3.0T
Signa HDxt 3.0Tは,業界に先駆けて全身用3T MRIを国内市場に投入した同社が,これまで培ってきた高磁場MRIのノウハウを結集し,全身領域での高精細画像が得られるように高いハードウェア性能と最新のアプリケーション・ソフトウェアを高い次元で融合した装置。従来の3T MRIに比べて,薄いスライスでの撮像能力の向上,ならびに全身各領域での脂肪抑制の効果を一段と強化している。
Signa HDxt 3.0Tの高度なハードウェア性能のカギとなるのが,18チャンネル超伝導シムコイルと傾斜磁場コイルを2組搭載した「Twin Gradient(ツイン・グラディエント)」,ならびに1秒間で最大5,400枚と業界最速を実現した超高速画像再構築(リコンストラクション)機能である。
MRIで全身領域など広い領域を撮像するには安定した静磁場を作りだすことが不可欠だが,Signa HDxt 3.0Tではマグネットに独自開発の18チャンネル超伝導シムコイルを採用することで,コンパクトな装置ながら広範囲にわたる静磁場の精密調整を可能にし,優れた静磁場均一性を実現している。この均一性が撮像視野の最大化につながり,臨床的には乳房での安定した脂肪抑制や体幹部領域のDiffusion(拡散強調画像)など,全身領域で高画質な撮像を可能にしている。
Twin Gradientは,頭部の機能画像や体幹部領域の高精細撮像に必要な高い傾斜磁場強度とスピード特性を有し,かつ生体へ与える勾配磁場の変化率を小さくするために長さを短くした「Zoom Modeコイル」と,脊髄を始めとする全身を広くカバーすることが可能な「Whole Body Modeコイル」の2組の異なる性質を持った傾斜磁場コイルを1つのMRIに組み込んだGE独自の技術。2組のコイルの搭載に伴い,さまざまな撮像部位に最適な設定が可能となる。
また,従来のMRIでは高分解能で数多くの枚数を撮影すると,撮影後の画像計算に時間がかかるのが常だったが,Signa HDxt 3.0Tでは1秒間で最大5,400枚と,業界最速の超高速画像再構成を実現,日常的に高度なVolume撮像が要求される3Tにおいて検査効率を大幅に向上する。
Signa HDxt 3.0Tは他の3T MRIを圧倒するこれらの高いハードウェア基盤を有することで,次のような搭載アプリケーションを有効活用でき,3Tの高磁場性能を最大限発揮することが可能となっている。
ソフトウェアにおいては,Signa HDxt 3.0Tの中核をなすアプリケーションが,国内で初めて,局所的な静磁場不均一の際にも高精細画像の描出を可能にした「IDEAL(アイデアル)」である。患者がテーブルに乗ってMRIの架台の中に入ると,全身に静磁場がかかるが,複雑な形状を有する頚部や空気を多く含む胸部,手術後の生体内金属の周囲など,原理的に静磁場が不均一になりやすい部位がある。静磁場が均一にかかっている状態では,人体の脂肪をムラなく抑制した画像描出(脂肪抑制画像)ができるが,静磁場が不均一な箇所ではこの抑制がうまくできず,結果として局所的な画質の低下が発生していた。Signa HDxt 3.0Tは,新開発の「フィールドマップ」技術を搭載することでこれを克服,局所的な静磁場の不均一が発生した際にも,頭部から脚部までのすべての部位において,高精細画像の描出に成功した。
もう一つの核となる新規アプリケーションが,数多くの撮影方法でのVolume撮像を可能にする「Cube(キューブ)」である。これまでMRを使用した血管撮影(MRアンギオグラフィー)や,解剖学的構造が捉えやすいT1強調画像など,Volume撮像が可能な撮影方法は限られており,骨軟部の評価に有用なプロトン密度強調画像や,脳脊髄液に接する病変を検出しやすくするフレアー法などでは不可能であった。Signa HDxt 3.0Tは,「モジュレーテッドRF」と呼ばれる特殊RFパルスを生成する技術を新たに搭載し,プロトン密度強調画像,フレアー法,ならびに病変の拾い出しに有用性の高いT2強調画像の3つの撮影方法においてもVolumeの撮像を可能にした。臨床的には,特に頭部における全ルーチン検査のVolume撮像が可能になり,一段と精度の高い診断ができるようになる。
またSigna HDxt 3.0Tは,左右の乳房のVolume画像を一回で撮影し,乳腺腫瘍の鑑別診断に有用性の高い「Vibrant(バイブラント)」や,高分解能と高コントラストを両立し,腹部のVolume撮像に有効な「LAVA(ラバ)」といった既に医療機関から高い評価を得ているVolumeアプリケーションを搭載するなど,全身領域で高精細なVolume画像の描出を実現している。
●Signa HDe Second Edition
Signa HDe Second Editionは,日本の医療機関のニーズにマッチしたSigna HDe 1.5Tの高性能と高い経済性を一段と強化したMRIである。
性能面においては,日本独自開発のハードウェアと最新のアプリケーションでさらなる高画質化と機能の充実を図っている。
ハード面ではまず,日本で独自開発した最先端の水冷テクノロジー「Gradient Spec Controller(GSC:グラディエント・スペック・コントローラー)」の採用により,高速イメージング時の最大の課題であった「グラディエントが発生させる熱」を大幅に抑制することに成功。この熱抑制に伴い,ラジオ波(RF)パルスの照射に必要な間隔(TR:repetition time)を最短で1.3ミリ秒まで大幅に短縮,一段と高速の撮像を可能にしている。また,パッシブシムと18ch超伝導シムコイルを組み合わせたHD Magnetを搭載,高い静磁場均一性よる安定した画質の撮像を実現したほか,全身各部位に最適設計されたHDコイルの採用で高感度な信号取得を実現,高画像化を図っている。
また,同社製1.5T MRでは初めて,RF信号を高精度デジタル処理する「Digital CERD(デジタルサード)」技術を搭載,従来のアナログ処理で発生していた信号の減衰やノイズの発生を克服し,全領域の高画質化を実現する。
ソフト面においては,VibrantやLAVA,ならびにMRIにとって致命的な体動を補正する「Propeller(プロペラ)など,既に高い臨床評価を獲得しているHDアプリケーションに加えて,拡散の3次元的な方向性を画像化する「Diffusion Tensor(拡散テンソル)」や3次元的に神経線維の走行を描出する「Tractography(トラクトグラフィ)」を始め,通常のMRI画像では得られないスペクトル情報を得ることで,付加価値の高い情報を提供する「MR Spectroscopy(MRスペクトロスコピー)」,従来の撮像法ではコントラストのつきにくい変形関節症のような軟骨疾患の画像評価を行う「CartiGram(カルチグラム)」など,臨床現場の声を受けて新たに機能評価アプリケーションを強化,一段と付加価値の高い診断を実現する。
また,Signa HDe Second Editionは日本の臨床現場の声を取り入れた高い経済性を誇る。専用の機械室をなくすレイアウトも可能にしたことで,設置スペースを従来に比べて約4割削減し,またシングルキャビネットにより自由度の高いレイアウトを実現したほか,高性能マグネットやGSCの採用で従来の1.5T MRIに比べて消費電力を約4割削減している。さらに,ケーブルを約4割少なくし,配線の多くを出荷前に仕上げることで,取り付け期間を従来の3〜4週間から1週間に短縮,導入コスト低減に貢献する。
Signa HDxt 3.0TとSigna HDe Second Editionはともに,本体とテーブルをワンタッチで脱着可能な「モービル型患者撮像テーブル」を採用し,撮影中に患者の容体が急変した際など緊急時の退避性に優れた設計としているほか,ワイドスクリーンによる日本語での操作やブロードバンド回線を用いて仮想的に顧客医療機関を訪問し,装置の操作のアシストを行うTipVA(ティップブイエー)の適用など,格段の利便性向上を図っている。 |