(株)竹中工務店は,明るく開放的なMRI検査室を実現する磁気・電磁波一体型のシールド技術(特許出願中)を開発,現在建設中の久留米大学病院(福岡県久留米市,1期工事2009年2月竣工予定)のMRI検査室に初適用する。
この新技術は,シールド材で部屋全体を箱状に密閉する従来の方式ではなく格子状の窓のような形状の開口を設けるにもかかわらず,高いシールド機能を保持できる開放的なMRI検査室を可能にする技術である。
患者さんの心理的負担軽減の観点からMRI装置自体の開放性が進む中,この技術により,検査室についても開放感のある明るい室内を実現する。更に,検査室外の付き添い人が確認できるため,老人や子供といった不安の強い患者さんでも安心して検査を受けられる。
開口部をユニット化することにより取り外しが容易になるため,病院にとっては数年毎に行わなければならない装置の更新に伴う改修を,休診期間を長引かせずに短期間で行うことができる。開口部の自由度が高いため,院内スペースを有効に活用でき,複数台設置にもフレキシブルに対応する。平成18年の診療報酬改定以降,中小規模の病院にも普及の進む1.5Tの装置はもちろん,大学病院を中心に急速に普及が進む高解像の3TのMRI装置まで,幅広く対応できる。
●新技術の概要
MRI検査室には,MRI装置から発生する磁気の検査室外への漏洩と,検査室外からの電磁波の侵入を防ぐことが求められている。これまでは,磁気及び電磁波のシールド機能を持つ,開放感のほとんどない厚い壁で囲うのが一般的で,数年毎のMRI装置の入れ替え時には検査室ごと施工し直す必要があり,コストがかかるだけでなく,検査ができない期間が長くなっていた。
今回の磁気・電磁波一体型のシールド技術は,角筒状の磁気シールド材料と電磁波シールド材料を組み合わせて積み上げ,ガラスでサンドイッチ状にはさんだ形状をしている。格子状でデザイン性が高く,ガラスを通じた採光や眺望確保による,開放的な検査室環境を実現する。また,格子状にしたことにより,MRIからの漏洩地場が放射状に広がる背面や正面にも設置可能となり,顧客ニーズに合わせて部屋のどの部分にも適用が可能である。
●運用効率も考慮した各種メリット
◎現状レベルから最先端の3Tまで最適な磁気シールド性能を発揮
磁気シールド性能の調整が容易で,漏洩磁場レベルやコストに見合ったオーバースペックにならない最適な磁気シールド性能を発揮する。複数台設置についても,事前のシミュレーションで最適な磁気・電磁波制御をする。
◎装置更新時の診療停止期間を短縮
ユニット化したことで取り外しが容易なため,開口部から装置を搬出入することができる,将来対応を考慮したMRI検査室である。振動や埃の少ない短工期の効率的な更新工事により,診療停止期間を短縮する。
◎自由度の高い特色ある施設設計を実現
MRI装置の漏洩磁場には方向性がありますが,格子状にすることで装置の側面だけでなく,あらゆる方向に磁場が発生する背面においても,磁気シールドの効果を十分に発揮する。室内の設計自由度が格段に増し,限られた病院スペースの有効利用を図ることができる。
◎開放的な室内環境で患者のアメニティーを向上
患者さんの心理的不安感を取り除く,明るく開放感のある検査室を実現。角筒で構成するため外部からの視線を適度に遮ることが可能で,開放感とともに患者さんのプライバシーの確保といった相反するニーズを同時に満たす。
●久留米大学病院の事例紹介
久留米大学病院では,患者さんのアメニティー向上がニーズとして挙げられたことから,外壁部側と待合室側の2箇所に同シールド窓を設置する。外壁部側は,屋外からの採光と眺望を確保すると同時に,将来的なMRI機器更新時の搬出入として活用することができる。待合室側は,被験者が子供の場合などに付き添いの方が室内の様子をうかがえ,患者さんが安心できる空間を実現する。
MRI検査室は,第1期工事で完成後,2008年12月末に装置を搬入設置,運用(検査)開始は運転調整後5月頃からになる予定。
|
|
久留米大学病院MRI室 完成イメージ図 |
外部に面した開口部 |
|