在日米国商工会議所(ACCJ)医療機器・IVD小委員会(以下、ACCJ医療機器・IVD小委員会)は、このほどACCJが独自に行った医療機器の申請・承認に要する時間や課題に関する調査結果をまとめた。この「2008年デバイスラグ調査」によると、欧米でアクセス可能な医療機器のおよそ半分はいまだ日本に導入されていないということが判明した。
さらに、この調査結果によると、これまでの厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)の施策により、申請から承認までの審査期間(「承認ラグ」)はかなり短縮されているが、この短縮した期間の長さはそのまま申請前にシフトし、依然として深刻なデバイスラグが存在することがわかった。この審査前の遅れ(「申請ラグ」)を含めた全体的なデバイスラグは、入念な審査を必要とするPMA相当製品では約3年(35ヶ月)の遅れがあり、比較的低リスクな510(k)相当製品においては約3.6年(43.4ヶ月)もの遅れが生じていることが明らかとなった。
ACCJ医療機器・IVD小委員会は、こうした実態を認識するとともに、あらためて本年6月に 経済財政諮問会議が発表した「経済財政改革の基本方針2008」(以下、「骨太の方針 2008」)に盛り込まれた、デバイスラグ解消に向けた施策「医療機器の審査迅速化アクショ ンプログラム」の策定を強く支持するとともに、厚生労働省およびPMDAと協力し、こうした「承認ラグ」の解消、「申請ラグ」の更なる短縮そしてPMDAの人員採用と教育研修などについて、積極的な施策を提言していき、日本の患者が本来であれば恩恵に浴することができる先進医療技術の早期の導入について行政に積極的に協力していく。
●用語の定義について
- 「申請ラグ」:申請前の遅れ。米国食品医薬品局(FDA)申請日から総合機構申請日までの期間。
- 「承認ラグ」:申請後の遅れ。総審査期間の日米差。
- デバイスラグ:「申請ラグ」と「承認ラグ」を足したもの。
- PMA: Pre-Market Approval Application(市販前承認)。患者や機器使用者に影響を及ぼす可能性のあるリスクの程度によってFDAが分類した3クラス(Class T、U、V)のうち、生命や健康面などへのリスクが大きく、高度管理を要するClassVに分類された医療機器の大部分(例:血管手術用レーザー、メディカルバルーンなど)に対し、その安全性と有効性を証明するために必要とされるデータ(臨床データを含む)のFDAへの申請。
- PMA相当製品:日本で承認された品目であって、米国でPMA申請をし、承認された品目。
- 510(k):Pre-Market Notification(市販前届出)。患者や機器使用者に影響を及ぼす可能性のあるリスクの程度によってFDAが分類した3クラス(ClassT、U、V)のうち、ClassUに分類される医療機器の大部分(例:輸液ポンプ、移植用脊椎矯正用具など) に対し、アメリカで流通している既製品と同等の安全性と有効性を証明するために必要とされるFDAへの届け出。
- 510(k)相当製品:日本で承認された品目であって、米国で510(k)(市販前届出)申請をし、認可された品目。
●「骨太の方針2008」について
6月28日に発表された「骨太の方針2008」には、医療機器関連で以下の3つの戦略が盛り込まれている。
- 「革新的技術特区」(スーパー特区)の第一弾としての「先端医療開発特区」の創設
- 「革新的医薬品・医療機器創出のための5ヵ年戦略」(2007年4月26日)に基づいた政策による、医薬品・医療機器産業の革新
- 「デバイスラグ」の解消に向けたアクションプログラムの策定
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