2008年8月18日 中国発表
米ゼネラル・エレクトリック(GE)のヘルスケア事業部門であるGEヘルスケアは,北京オリンピック開催期間中の8月18日(月),心臓突然死と整形外科疾患のリスクに関する初期の所見を,オリンピック医療チームのリーダーと共同で発表した。この所見は,2006年のトリノオリンピック以降,2回にわたって実施したオリンピック選手の医療研究から明らかになったもので,この研究では健康状態のモニタリングと早期の処置が,ケガの予防とコンディションの向上につながることを実証しようとしている。
アスリートの心臓研究にて心臓突然死に関する知見が明らかに
ボストンにあるマサチューセッツ・ゼネラル・ホスピタルの心臓専門医であるマリッサ・ウッド氏は,オリンピック選手を対象とした研究により,アスリートにおける心肥大の健康パターンが明らかになり,肥大型心筋症との鑑別が可能になったと発表した。これまで,心臓の大きさが心臓突然死(SCD)のリスクの指標とされてきたが,同医師が米国の重量挙げと男子ボートのチームを対象に調べたところ,心臓が健康かどうかを示すファクターは,心臓の大きさではなく,血液を送り出す際の心臓収縮作用が正常かどうかであることが明らかになった。この研究は,GEヘルスケアの可搬型循環器用超音波診断装置「Vivid i(ヴィヴィッド・アイ)」を使用して実施されている。
マリッサ・ウッド医師は,「私たちは今回の結果を踏まえて,現在心臓の健康状態の指標を作成しており,今年後半に発表する予定です。この指標を用いることで,トレーナーやコーチは心臓の状態が持久型アスリートの成績にどう影響するか把握できるようになります。また今回の研究は,一般の人を対象とした心臓疾患の診断と治療において,一段と効果的で新しい方法につながる見識を医療関係者に提供することになるでしょう」と述べている。
ウッド医師の研究に基づき,国際オリンピック委員会(IOC)のメディカルディレクターであるパトリック・シャマシュ医師は,オリンピック選手に対し定期的な心臓検査の実施を推奨している。さらに同医師は,「トップアスリートに事前心血管検査を義務付けることを全面的に支持します。そうすれば,競技に参加する前に選手を検査し,病気の進行や心臓突然死につながる可能性のある異常(またはその疑い)を見つけることができるようになります。IOCではすべての選手の健康管理を最優先に考えており,関連する疾患を発見することで,臨床医は選手が競技を続けられるかどうかをより早い段階で判断できるようになります。そして何よりも,選手のニーズに最も適しており,かつ選手の安全を考慮したトレーニングプログラムを作成することができるようになるのです」と語った。
選手の成績アップのカギは自覚症状のないケガの発見
デトロイトにあるヘンリー・フォード・ヘルス・システムのマルニックス・ファンホルスベーク医師は,ケガが起きる前に超音波スキャンにてアスリートの筋骨格構造の弱点を見つける方法を2005年から研究してきた。この研究の初期の結果から,複数の選手で自覚症状のないケガが発生し,特に女子選手で予想以上にその確率が高いことが分かった。この研究は,米国の重量挙げチーム,ボクシングチーム,そして女子ナショナルサッカーチームを対象に,GEヘルスケアの超音波診断装置「LOGIQ e(ロジック・イー)」を使用して実施されている。
マルニックス・ファンホルスベーク医師は,「驚いたことに,トップレベルのトレーニングを受けたアスリートにおいて,痛みの訴えがないにも関わらず,ケガの可能性を示す初期の兆候が定期的なスキャン検査にて認められました。超音波診断装置を用いれば,筋骨格構造や組織の可動性など,他の検査方法では分からない問題を発見できることが明らかになりました」と述べている。
米国女子ナショナルサッカーチームのディフェンダーで,同医師の調査研究に参加したヘザー・ミッツ選手は,「私たちアスリートは厳しいトレーニングを繰り返していますので,小さなケガがより深刻な負傷につながることもあります。定期的な検査を受けることで,出場を控えるべきかどうかを判断することができますし,問題ないと分かれば,トップレベルのトレーニングを行うこともできます」とコメントしている。
GEヘルスケアが掲げる「Early Health(アーリーヘルス)」のビジョンと同社のスポーツ医療への取り組みのもと,こうした画像診断技術は,トップアスリートと一般の人の体について臨床医が理解を深めるのに貢献している。
GEヘルスケアのクリニカルシステム担当CEOであるオマール・イシュラック氏は,「予測に基づくヘルスケアと疾患の早期発見を進めれば,病気が進行してから治療を受けるリスクを大幅に減らすことができます。より良い医療を提供するには,治療選択肢が豊富な早期の段階において,疾患の診断を可能とする技術の開発に資源を集中することが肝要です」と述べている。
8月18日(月)の記者発表時には,アーロン・ピアソル米競泳選手の右肩をLOGIQ e でライブ撮影
左:ヘンリー・フォード・ヘルス・システム 筋骨格放射線科 科長
マルニックス・ファンホルスベーク博士
真中:アーロン・ピアソル 米オリンピック競泳選手(これまでに5個の金メダルを獲得)
右:米オリンピック委員会パフォーマンス・サービス メディカルディレクター
マイケル・リード博士
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