GEヘルスケアグループの日本法人であるGE横河メディカルシステム(株)は,医療用ITシステム「Centricity(セントリシティ)」シリーズの新製品を発売する。今回市場投入するのは,医用画像保管・電送システム(PACS)の上位機種「Centricity PACS / SE Premium(セントリシティ・パックス・エスイー・プレミアム)」,インターネット経由で画像読影のみならず,高度な画像再構成までを可能にしたPACS「Centricity RA600 Dynamic Web(セントリシティ・アールエイ600・ダイナミック・ウェブ)」,ならびに同一患者の過去の撮影画像や診断結果を自動表示することで診断医の読影精度と効率向上を実現するレポーティングシステム「Centricity i3(セントリシティ・アイキューブ)」の3機種。
Centricity PACS / SE Premiumを大学病院や地域基幹病院などの大規模病院,Centricity RA600 Dynamic Webを新規PACS導入予定の中・小規模病院を主対象に販売する。また,Centricity i3を既に同社のPACSを保有している医療機関,ならびに放射線科を有する中・大規模病院を主対象に販売する。
●主な特長
Centricity PACS / SE Premium
Centricity PACS / SE Premiumは,同社のPACS「Centricity PACS」シリーズの上位機種で,同社とGEヘルスケアが共同開発した。基本ソフト(OS)にLINUX(リナックス)を採用し,高い拡張性や高速画像表示を誇る「Centricity PACS / SE」に,システムを冗長化しダウンタイムを最小にする機能を搭載,さらなる可用性向上を実現した。
診断装置のデジタル化の進展や診療報酬の改定などに伴い,現在急ピッチでフィルムレス化が進んでいるが,フィルムレス環境下においては,システムやネットワークが障害で停止した際には,即診療の停止につながってしまう。Centricity PACS / SE Premiumでは,サーバーやストレージ(外部記憶装置),ソフトウェアなどシステムを構成するすべての要素を2重にした「デュアル・ノード・クラスタリング・システム」を採用し,高いレベルの可用性を実現,一部に障害が発生した際にも,もう片方のシステムに切り替えることで診療の継続を可能にしている。
またCentricity PACS / SE Premiumには,2,000枚を超える最新CTの断層像を3秒以内に表示可能な画像圧縮・高速転送技術をはじめ,一回のマウスのクリックで3次元の画像解析や心臓・冠動脈の3次元画像を自動構築する機能など,放射線科のほか幅広い診療科のニーズに対応する臨床用アプリケーションを搭載。さらに撮影を担当した検査技師のコメントを画像データ上に貼り付け,読影医が確認できるようにしたり,読影医が大量の撮影画像の中から臨床医に必要なデータを抽出し,画像上にメモ表示できるようにしたりするなど,チーム医療の推進機能も有し,精度および効率性の高い診断を実現する。
また,X線血管撮影装置「Innova(イノーバ)」シリーズなど循環器用診断装置と,CTやマンモグラフィなどのX線診断装置の画像を,静止画・動画ともに一元的に統合管理可能なほか,X線診断用ワークステーション,循環器用ワークステーション,そして院内配信用ウェブビューワーすべてにおいて,レイアウト画面と操作性の統一が図られるなど,読影医・臨床医の利便性向上に貢献している。
さらに顧客医療機関と同社のメンテナンスセンター「テクニカルアシスタンスセンター」を光ファイバーやADSLなどのブロードバンド回線で結び,顧客の「Centricity PACS」シリーズを365日24時間体制で自動の遠隔監視を行い,さらなる可用性向上を図っている(オプション)。
Centricity RA600 Dynamic Web
Centricity RA600 Dynamic Webは,GEヘルスケアが昨年10月に買収した米PACS大手のダイナミックイメージング社の製品で,容量1テラ(テラは一兆)バイトのサーバーと読影ワークステーションで構成されている。このPACSは米国の顧客満足度調査で12カ月間以上連続トップを獲得した製品で,今回他の言語に先駆けて日本語対応を図った。
Centricity RA600 Dynamic Webは,新規に撮影した画像から数年前に撮影しサーバーに保管されている画像まで,インターネット経由で閲覧ソフト上に瞬時に比較表示できるほか,MPRやMIP,デジタルサブトラクション(DSA)などこれまで個別の専用ワークステーションが必要だった高度な画像処理・解析を,ダウンロード可能なソフトウェア上で一括してできるようにした。CD-Rなどの記録用ディスクへのデータの書き出しや検査情報の管理機能も有している。また,必要な画像をインターネット経由で閲覧ソフト上に表示し,個人のパソコンにダウンロードする必要がないため,セキュリティー面でも高い安全性を誇る。
このように,Centricity RA600 Dynamic Webは,インターネットに接続可能な環境であれば,現在PACSに求められるあらゆる機能をウェブ経由で一括して実現可能にした。医療機関にとっては,画像処理・解析用の専用ワークステーションを別々のベンダーから購入する必要がなくなるため,大幅な利便性向上につながるほか,コスト面においても病院経営に貢献する。また,院内はもとより,権限が付与されたユーザーであれば院外からでもアクセス可能なため,必要に応じて他の医療機関の専門家に診断してもらう遠隔診断にも使用できる。臨床的には,検査から結果報告までの患者の待ち時間短縮につながる。
Centricity i3
Centricity i3は,画像診断をする際に正確な検査部位情報を収集することで,放射線科医の読影の確度ならびに効率の大幅な向上を実現するレポーティングシステム。CTやMRなどで撮影をする際に,同システムはCentricity PACSに対し正確な検査部位情報を送信する。そのため,臨床医が撮影画像を見て,診断レポートを作成する際に,同タイプの画像診断装置(モダリティ)で撮影した同じ部位の直近のレポート,ならびにPACSデータベースと連動した直近の同一部位画像をそれぞれリアルタイムで自動表示可能である。従来は,過去のレポートを参照する場合には膨大なレポートの中から自分自身で探し出す必要があったほか,過去の画像を見る場合にも自動表示されるのは同日に検査したもののみという制約があったため,臨床医の読影効率の大幅アップに貢献する。臨床的には,検査から結果報告までの患者の待ち時間短縮につながる。
またCentricity i3は,モダリティ・ワークリスト・マネージャー(MWM)機能を標準搭載しており,CTやMRなどのモダリティから患者基本情報を取得することも可能である。
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