GEヘルスケアグループの日本法人であるGE横河メディカルシステム(株)の超音波事業部の開発グループ(リーダー:加藤生氏)はこのほど,社団法人日本超音波医学会が選定する「第8回技術賞」を受賞した。同社の受賞は第2回に次いで,2度目となる。
今回受賞した技術は,「Hybrid Contrast Imaging(ハイブリッド・コントラスト・イメージング)」。日本初の超音波診断用低音圧造影剤「ソナゾイド® 注射用(以下,ソナゾイド)※1」に対応したフルデジタル超音波診断装置「LOGIQ 7(ロジック・セブン)」に搭載した技術。ソナゾイドから得られた超音波信号を,血流由来のものと,組織還流由来のものとに分別し,それらの信号を着色してBモード※2に重ねて表示できるようにした。これにより,造影像と通常の断層像とを同時に観察可能となり,診断時の利便性向上に大きく貢献する。
今回の受賞を受けて,GEヘルスケアのGlobal Diagnostic Ultrasound & IT担当Vice PresidentであるTerri Bresenham氏は,「日本超音波医学会において,GEの次世代超音波造影撮影技術に対して技術賞を受賞したことを大変誇りに思います。この技術革新を通じて,私たちは患者さんの負担を軽減し,検査者の生産性を向上させることができます。ソナゾイドの技術がこうした夢に近づけてくれるのです」と述べている。
Hybrid Contrast imaging技術は,LOGIQ 7に搭載されているRaw Data Management技術と併用することにより,造影検査画像の撮影後の加工を可能にしている。撮影後にモード変更や受信に関連する条件設定を変更することで,ソナゾイドの染影状態や体内を流れる様子を鮮明に描出可能となるため,診断の精度向上に貢献する。同技術により,装置条件の不備による再撮影の必要性から開放され,被験者の負担軽減につながるほか,検査者の生産性の向上に貢献する。
臨床的には肝臓の腫瘤性病変の鑑別診断に有効性が高く,「肝細胞がん」,「転移性肝がん」,「肝血管腫」,「FNH(限局性結節性過形成)」などの鑑別のみならず,肝がんの局所治療効果判定ならびに治療後のフォロー診断に貢献する。また,ラジオ波焼灼療法(RFA:Radio Frequency Ablation)※3などの局所治療における治療ガイド(病変位置の正確な把握)や治療効果の判定に有用。
駿河台日本大学病院 超音波室室長 小川眞広氏は,今回受賞したHybrid Contrast Imagingの臨床価値について,次のように高く評価している。 「一言で言えば,臨床の現場に則したアプリケーションであり非常にすばらしいと言えます。いまや肝腫瘍性病変の鑑別診断および肝癌診療における治療効果判定において必須とも言われる造影超音波検査では特に強い威力を発揮します。Hybrid Contrast Imagingは造影剤情報とBモード情報を分離しやすく重ね合わせやon/off,2画面表示などが瞬時にできるため細かな血流情報がBモード上のどこに当たるのかを随時確認することが可能でBモード情報に造影情報を加味して診断を行えることが大きな強みといえます。単に検者が検査を施行し易いということに留まらず,Raw data保存をして後から検証することもできるため,超音波検査の客観性が向上するばかりか検査自体の信頼性をも向上させ超音波検査がより質の高い検査法へと進化したことが実感できます。」
技術賞の詳細
(社)日本超音波医学会のホームページ(http://www.jsum.or.jp/)。
※1
「ソナゾイド」はGEヘルスケアと第一三共株式会社との共同開発により創製され,第一三共が2007年1月から国内販売している第二世代の超音波診断用造影剤。同造影剤を注入することで,血管からの信号が増強され,腫瘍への流入血管の特定や腫瘍全体の組織染影,ならびに腫瘍の治療の効果判定などが可能
※2 Bモードとは体内から戻ってくる超音波信号の強さを白から黒の明るさの変化に変換し,画面に表示する方法
※3 ラジオ波焼灼療法(RFA:Radio Frequency Ablation)とは,超音波画像を見ながら,腹部表面から刺した針に高周波電流を流して,腫瘍を焼いて壊死させる手法。手術をすることなく低侵襲ながん治療が可能 |