ケアストリームヘルス社(以後,CSH)のデジタルイメージング装置と画像解析技術が,シカゴ フィールド博物館が所有する世界的に貴重な収集品に隠された秘密を発見し,分析を行う上で,重要な役割を果たしている。
CSHは,フィールド博物館が所有する100万個を超える標本や遺物からデジタルX線画像を撮影し,保存し,配信することを可能にするCRシステムを寄贈した。フィールド博物館では,増え続けるデジタル画像の管理,閲覧,保存を行うために,CSHのPACSシステムも使用している。
古代エジプトのミイラのX線画像はデジタル画像の可能性を示している。最近になって撮影されたミイラの鮮明なデジタル画像は,頭頂葉に今まで分からなかった腐食を捉えた。このことは,このミイラが生前,寄生虫に蝕まれていたか,貧血,あるいは栄養失調の状態であったことを示している。また同じミイラの骨盤のデジタル画像は,このミイラが30から40歳の女性のものであることを示している。他にも,ペルーの「false head(人工の頭)」と呼ばれるミイラに付けられたマスクのX線画像は,この中に貝殻が詰められているという驚くべき事実を明らかにした。南米の西海岸沖に生息する食用のナンベイチドリマスオガイ(Mesodesma donacium)の貝殻2枚が,明瞭な画像によって確認できた。貝殻は意図的にマスクの詰め物に使われており,食事を提供する意味があったと考えられるが,他の遺物には,貝殻が詰められたものはなく,その目的は不明である。
イランのササン朝神殿からもたらされた王の彫像のX線画像は,1940年代後半に行われた復元作業の一環として,その頭部に金属片が加えられたことを明らかにした。X線画像をチェックする以前,フィールド博物館の研究員は,長い年月,彫像が地面に埋まっていた間に堆積した塩分を水で洗い流す計画であった。もうそうしたなら,埋め込まれた金属片がさびて,その圧力で彫像に亀裂が入ったかも知れない。今,新しい情報を得た研究員は,水を使わずに遺物の保存状態を安定させる技術の開発を進めている。
CSHのCRはミイラ,革製品,かごのような有機物や,陶器,化粧しっくい,ビーズなどの高密度な遺物のX線画像を鮮明に捉えることができる,まさに理想的なシステム。同様にフィールド博物館に設置されたCSHのワークステーションは,すばやく用意した文献や画像イメージへの簡単なアクセスを可能にする強力なデータベースを持った画像ビューワーである。
CSHには,様々な産業のニーズを満たす非破壊検査システムを開発・販売する非破壊検査ソリューショングループという事業部があり。同事業部は博物館や美術館からの要請に応える社内リソースを有しており,建築物,ミイラ,恐竜,彫刻,絵画,歴史的遺物等のX線画像を撮影する最新のデジタルシステムを提供している。
1. X線撮影されるミイラ Mummy being x-rayed
撮影:Karen Bean
画像提供: フィールド博物館
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2. ミイラ(頭部画像(1)) Mummy image (head 1)
鮮明なデジタル画像は,頭頂葉に今まで分からなかった腐食を捉えた。このことは,このミイラが生前,寄生虫に蝕まれていたか,貧血,あるいは栄養失調の状態であったことを示している。
撮影および画像提供: フィールド博物館 |
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3.
ミイラ(頭部画像(2)) Mummy image (head 2)
このミイラの傾いた頭部画像は,ミイラのあごから首のラインにかけて詰め物を確認した。両眼に見られる乾燥した詰め物は,ミイラ化のために残されたと考えらる。
撮影および画像提供: フィールド博物館 |
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4.
ミイラ(骨盤) Mummy image (pelvis)
この古代エジプトのミイラの骨盤は,CSHの新しいCRシステムで撮影された。X線画像は広く,そして浅い坐骨切痕,恥骨結合と広い恥骨下角を写しており,このミイラが30から40歳の女性ものであることを示している。高吸収域の腹腔内には,内臓と砂あるいは塩が入った袋が詰められており,おそらく内臓を入れる壷(canopic jar)に入れて保存するより,むしろ内臓をミイラ内に戻す方を選択したものと考えられる。この手法も当時しばしば行われた。
撮影および画像提供: フィールド博物館 |
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5.
ミイラ(脚) Mummy image (leg)
古代エジプトのミイラの右大腿骨骨折部位は,周辺に新しい骨の成長が見られないことから,死亡後,ミイラ化された後に折り曲げられたことを示している。
撮影および画像提供: フィールド博物館 |
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6.
ペルー人のマスク Peruvian mask
「false head(人工の頭)」と呼ばれるマスクは繊維質の織物でできており,木片とペイントで装飾がされている。もともとは,ペルーの首都リマから南東に15マイル下りたパカマック(Pachamac)で見つかった南米のミイラに付けられていたものである。
撮影: John Weinstein 画像提供: フィールド博物館 |
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7.
マスク Mask image
ペルーの「false head(人工の頭)」と呼ばれるマスクのX線画像は,この中に貝殻が詰められているという驚くべき事実を明らかにした。貝殻は意図的にマスクの詰め物に使われており,食事を提供する意味があったと考えられるが,他の遺物には,貝殻が詰められたものはなく,その目的は不明。
撮影および画像提供: フィールド博物館 |
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フィールド美術館について
1893年に設立,1921年より現所在地。世界を代表する自然歴史博物館で,2400万点以上にのぼる遺物や標本を有している。また著名な科学研究施設としての機能も持ち,多数の国から70人以上の科学者が,人類学,植物学,自然環境保護,異文化理解,地質学,動物学の分野の研究を行ってい。 www.fieldmuseum.org.
住所:1400 South Lake Shore Drive
開館時間:朝9時から夕方5時まで(クリスマス及び新年を除く)
※2008年5月7日米国ニュースリリース翻訳 |