GEヘルスケアグループの日本法人であるGE横河メディカルシステム(株)は4月4日(金)から,PET(陽電子放射断層撮影装置)機能を搭載したSPECT(単光子放射断層撮影装置)の新製品「Infinia8 Hawkeye4(インフィニア・エイト・ホークアイ・フォー)」を,核医学検査を行う基幹病院を主対象に発売する。
SPECTやPETなどの核医学診断装置は,患者に投与された放射性医薬品から放出される微量の放射線を検出器で捉えることで,医薬品の分布を画像化する装置。CT(コンピュータ断層撮影装置)などによる「形態画像」に比べ,代謝や血流などの生理学・生化学的な「機能画像」が得られることが特長。SPECTは脳の断面の血流状態を観察できるため,脳血管障害や脳梗塞,認知症などの検査に活用されているほか,心筋や腫瘍の診断に使用されている。一方,PETは主に腫瘍の早期発見に高い有用性を誇っている。 同じ核医学診断装置だが,SPECTに比べてPETは高額であるため,現状導入できる医療機関は大学病院や大規模病院などに限られている。しかしながら,拡大するPET検査の需要に対応するため,PET機能を搭載したSPECTがこれまでに発売されているが,PETの画質や撮影時間など,臨床使用には充分でないところもあった。
今回発売するInfinia8 Hawkeye4は,同社のSPECTブランド「Infinia」の最上位機種で,既に全世界で高い評価を獲得しているSPECT機能に,高精細画像の撮影と患者の負担軽減を実現するPET機能を組み合わせたSPECT-PET複合機。最新のPET-CTに比べ撮像時間や画質はやや劣るものの,SPECTとPET検査が一台の装置でできるため,比較的少額な投資で,PET検査を行うことが可能になった。
Infinia8 Hawkeye4では,患者の体内から放出される放射線を捉える検出器を改良し,画質の向上と撮影時間短縮の両立を実現した。放射線の検出にはクリスタルが使用されているが,その構造上,クリスタルを厚くすると,検査時間を左右する感度が向上する一方,画質に影響する分解能が低下する。同社ではこのクリスタルの表面に格子状の刻みを入れる独自の特殊加工を施すことで,分解能を低下することなくことなく従来に比べて約4倍の感度を達成した。分解能と感度の両立を可能にしたことで,画質の向上と検査時間の短縮を実現した。 また,クリスタルが捉えた放射線を電気信号に変える光電子増倍管(PMT)の数を95本にほぼ倍増(従来は59本)するとともに,SPECT検査時とPET検査時用に別個の計測回路を採用。SPECTとPETどちらの検査においても最適な放射線の収集をできるようにすることで,PET画像においても従来のSPECT-PET装置に比べ高精細画像の撮影を可能にした。
さらに,Infinia8 Hawkeye4には画質の向上を図るために,吸収補正専用CTを搭載している。患者の体内から放出される放射線は体外に出るまでの間に患者自身によって吸収されるため,減弱されて検出される。吸収の割合は,人体の密度などの違いにより一定ではなく,体表に近い部位に比べて体内深部の放射線のほうがその割合が大きくなる。そのため,撮影画像は正確な放射性医薬品分布を表しておらず,撮影後に画像補正(吸収補正)を実施する必要がある。 この吸収補正を,高精度で容易に行うために同社が開発したのが,吸収補正専用CT「Hawkeye(ホークアイ)」です。同社ではこのHawkeyeを2002年からSPECTのオプションとして発売しているが,Infinia 8 Hawkeye 4には,一回転で最大4枚と従来の4倍の画像撮影を可能にした新型X線検出器を搭載。画質の向上のほか,撮影時間の半減や,被ばく量を診断用CTに比べて最大10分の1にするなど,患者の負担を軽減している。
また,同CTを搭載したことで,核医学診断装置による「機能画像」とCTによる「形態画像」の2種類の画像を連続に取得できるようになったことから,核医学装置ワークステーションXelerisを使用して,両画像の重ね合わせが可能になり,病変部位の位置特定が容易になる。
Infinia8 Hawkeye4は,市販されているSPECTとしては唯一,検出器と筐体間のケーブル接続をなくしたスリップリング機構を採用している。そのため,検出器は一定方向に連続的に回転してデータを収集することができる。短い半減期をもつPET用放射性医薬品(同検査に主に使用されるものは110分で放射線量が半減する)では,検査中の減衰により画質が劣化するが,スリップリング機構により短時間で複数回転してデータ収集。それらを加算することで,減衰の影響を極めて少なくした。これにより,アーチファクト(偽像)の少ない高画質画像の撮影が可能になる。
Infinia8 Hawkeye4は臨床的には,心筋核医学検査における吸収補正の効果や,骨検査,腫瘍検査における重ね合わせ画像による腫瘍の正確な位置特定などに高い有用性が期待されている。なお,同装置はPETと違い検診での使用には適していない。 Infinia8 Hawkeye4を使用することで,これまでSPECTに特化してきた医療機関がSPECT検査に加え,PET検査も実施できるようになる。また,SPECT検査を実施していない時間にPET検査を行うことができるため,稼動率向上が図れる。同装置は通常SPECT検査を実施し,週に1〜2日PET検査の需要がある医療機関に最適な装置。なお同装置でのPET検査にはポジトロン断層撮影の診療報酬加算が適用される。 |