東芝メディカルシステムズ(株)は,64列同時撮影マルチスライスCT Aquilion
64の新アプリケーションソフトの発表を行い,この新機能を搭載した64列マルチスライスCTシステム
Aquilion
64を4月1日より販売する。
これまで様々な心臓CT検査のスキャン法が開発されてきたが,被ばく低減を実現しながら高画質が得られる技術の開発に関し,臨床の現場からのニーズは大きいものがあった。同社は,これらに応えるべく,さらなる低被ばくで行える心臓CT検査,スキャン時間の短縮化や造影剤量低減を実現しても,臨床的有用性については高画質を維持できるスキャンシステム,その他に冠動脈狭窄の情報やその性状評価の期待やメタボリックシンドロームの診断に寄与する画像処理臨床アプリケーションの開発を続け,今回,商品化し販売活動を開始する。
●主な特長
◇スキャン機能
- 心電同期フラッシュスキャンシステム
従来,心臓CT検査においては診断で必要な画質は維持しながら,被ばく低減化を行う試みとして,さまざまな被ばく低減スキャンを用いていた。しかしながら,被ばく量は飛躍的に低減するが連続した心位相の撮影が困難,画質の低下,撮影時間の増加,高心拍,不整脈等の受診者への検査が難しいといった問題があった。「心電同期フラッシュスキャンシステム」は,ヘリカル撮影しながら任意の心位相においてのみX線を照射し心臓を撮影する同社独自の機能である。そして,連続した心拍で撮影可能であり,高心拍・不安定な心拍の受診者にも対応できることが期待される。この機能により,より多くの受診者に対して,短時間,低被ばくでの心臓CT検査が可能となる。被ばく線量は従来の冠動脈CT検査の最大で1/4程度*1が可能,造影剤量も抑えられ,受診者の負担も低減される。
- バリアブルピッチヘリカルスキャンシステム
診断に必要な画質を維持したまま,寝台の移動速度を変化させる技術。例えば,冠動脈撮影の後,天板を止めることなく移動速度を変化させ,連続移動により大動脈の撮影を一連の検査として行えるスキャン法である。通常,天板移動速度は,心臓撮影時は遅く,腹部領域撮影時は早くなる。そのため,これまでは異なる2つの検査として行われており,造影剤量の増加および術者の手間がかかっていた。同社は,世界で初めて,得られたデータの連続性を良好に保ったまま検査中での速度変化設定が行えるという技術を実現した。これにより,不要な被ばくを抑えながら,一度の造影においてタイミングを逃すことなく高速に広範囲の撮影ができるようになり,低被ばく,適正な造影剤量,短時間の検査を同時に実現されることにより,急性期における複数の疾患に関する鑑別診断への応用など,受診者への負担低減が期待される。
- 呼吸同期スキャンシステム・呼吸同期再構成システム
呼気/吸気等の呼吸位相を認識し天板を全検出器幅分移動させるごとに停止させ,任意の呼吸位相のみの撮影を行う方法と,ヘリカルで撮影しながら呼吸位相の情報を同時に収集し任意の呼吸位相のデータから画像再構成を行う方法があり,症例や受診者の状態に応じて選択が可能。呼吸停止が困難な症例を持つ受診者や小児においても,画像ぶれの少ない画像が得られる。
◇画像処理臨床アプリケーション
- カルシウムスコアリング
冠動脈石灰化領域をカルシウムスコアリングアルゴリズムで算出して,経過的評価を行うことにより,石灰化領域のスコアの変動を観察することができる。
- プラークビュー
ソフト
冠動脈プラークの性状を画像上で観察することができる。プラークのCT値の違いを色の違いで表現することができる。プラークの観察により突発的に起こりうる虚血性心疾患のリスクの把握が期待できる。また,ワークステーションに画像転送することなく,CT装置のコンソールで作業可能なため,検査効率の向上も図れる。
- 体脂肪面積計測ソフトウェア
腹部単純撮影画像1スライスを用いて,皮下及び内臓脂肪の状態を計測できるため,低被ばく,短時間で検査を実施できる。また,一般の腹部単純撮影データからの抜粋による検査も可能で,不要な被ばくなしで検査することも可能。CTによる腹腔内脂肪量測定は,メタボリックシンドローム診断基準検討委員会*2からも推奨されている。
なお,本アプリケーションソフトウェアは,4月4日(金)〜6日(日)にパシフィコ横浜にて開催されるITEM2008(2008国際医用画像総合展(第67回日本医学放射線学会総会・第64回日本放射線技術学会総会学術大会・日本医学物理学会と同時開催))にて展示される。
*1:連続照射によるごく一般的な冠動脈CT検査に比べて1/4程度の被ばく低減(同社比)
*2:メタボリックシンドローム診断基準検討委員会:日本人のエビデンスに基いたメタボリックシンドロームの診断基準設定のために日本動脈硬化学会,日本糖尿病学会,日本高血圧学会,日本肥満学会,日本循環器学会,日本腎臓病学会,日本血栓止血学会,日本内科学会が合同で2004年に発足させた委員会。
|