GE横河メディカルシステム(株)は,国立循環器病センター研究所(NCVC)と共同で,超偏極キセノンガスを応用したMRシステムを開発,日本で初めて肺の画像化に成功した。
生体組織中にある水分や脂質の水素原子の密度を画像化する従来のMRシステムでは,空洞で密度の低い肺などの撮影が不可能とされてきた。そこで,GEYMSとNCVCでは,水素原子の代わりとして,無色,無臭で人体にも無害なキセノンガスに着目。開発された3TのMRシステムは,超偏極と呼ばれる希ガス状態にすることで信号強度が最大10万倍に増強されるキセノンガスの体内分布情報を撮影可能にしている。この装置を使い,肺の画像化が行われた。
新開発のキセノンMR装置は,生体組織の化学変化や働きを検出できるため,肺がんの診断において,がんの良性,悪性の判断がより的確になるなど,従来より診断精度が向上することが期待される。また,キセノンガスは,化学的にも不活性で代謝を受けないことから,血中に溶解し灌流測定にも利用可能なため,脳内血流の画像化が高精度かつ迅速に行え,脳梗塞予防診断にも貢献するという。NCVC放射線医学部の飯田英秀博部長は,「キセノンガスが組織に拡散しやすいなどの特性を生かし,生理情報検査などの応用領域を開拓していく」と述べている。
同社では,今後,キセノンMRシステムの商品化を進めるとしており,すでに発売ずみの「SIGNA 3.0T(シグナ・サンテンゼロ・テスラ)」などに搭載可能なオプション製品として開発を進めている。
開発中の製品は,高価な超電導マグネットや制御装置などを共有できるようになっており,1台で従来MRシステム,キセノンMRシステムの機能を担うことができる。これにより医療機関は,2システム購入する必要がなく,コスト削減になるという。
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