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Technical Note

2010年3月号
CT Colonographyの画像処理・表示法における技術開発の現状

「ZIOSTATION」 CT大腸解析ソフト

神林麻里
マーケティング部

近年,大腸がんが増加している。2008年のがん死亡率を部位別で見ると,大腸がんは女性では1位,男性で3位となっている1)。早期発見が望まれる大腸がんだが,検診の受診率は24.9%となっており,ここ数年横ばい状態である2)。そこで低侵襲なCTによる大腸がんスクリーニング検診が注目されている。ザイオソフトではCT Colonography(CTC)ソフトウェアを開発している。当社のCTCソフトウェアの最新の情報と取り組みについて紹介する。

■大腸解析に適したワークフロー

ザイオソフトでは2005年より大腸解析ソフトを開発しており,すでに5年以上の実績がある。CTのボリュームデータで仮想内視鏡(Virtual Endoscopy:VE)を表示するだけでなく,効率良くスクリーニング検査などを行える新しい表示方法であるVirtual Gross Pathology(VGP)での表示方法を開発した。当社の大腸解析ソフトは,実際のワークフローに沿ってスムーズに解析が行える。実際には,<データオープン→腸管自動抽出→VGPとVE+MPR像でスクリーニング→マーキング→詳細観察と計測→レポート作成>と一連の検査方法に沿ったフローになっている。ワークフローに沿った各機能について以下の各項目で説明する。

■大腸の自動抽出

大腸を含むボリュームデータから腸管を抽出する。自動抽出アルゴリズムにより,データを開くだけでマスク処理を行い大腸のみを抽出する(図1)。エア注入が十分でない場合は,大腸が抽出されず途切れてしまうことがあるが,その場合でも画像上に表示されるパスをつなぐだけで簡単に修正できる。3D画像処理ワークステーションのマスク処理機能がついているので細かい画像の修正も簡便に行える。

図1  大腸のみを自動抽出
図1 大腸のみを自動抽出

■2体位比較表示

大腸CT検査では残渣の影響を受けやすいため,多くの施設では2体位での撮影を基本としている3)。残渣の影響を比較するためにも2体位での比較読影が必要であるが,2体位をリンクして表示することでより効率的な観察が可能となる。2体位比較では体位が異なるため腸管の位置がずれることも多いが,当社ソフトウェアの比較読影レイアウトでは,腸管全体を把握できるリンク機能でズレを調整した2体位比較表示も簡単に操作できる(図2)。

図2  2体位比較表示:VGPレイアウト
図2 2体位比較表示:VGPレイアウト

■広い範囲を観察できるVGP

当社では歪みの少ない展開像であるVGPの開発を進めてきた。VGPは大腸を切り開いた画像である(図3)。腸管の仮想中心線より円筒投影法を用いて展開しているものであるが,独自の画像解析アルゴリズムにより歪みが少ない展開像を実現している。
従来の大腸解析では,仮想内視鏡で腸管を往復し,視角を変えながら読影しなければならなかった。また,襞や屈曲が多いため読影に時間がかかっていたが,VGPでは広範囲を一度に観察できるだけでなく,平面上に展開することで,襞や屈曲などに隠れた病変も見つけやすい4)。平面的なポリープについても光源を変えることで十分に病変を指摘できる5)。実際の読影実験でもVGPでのスクリーニングは効率が良いという結果が出ている6)

図3  歪みの少ない展開像(VGP)
図3 歪みの少ない展開像(VGP)

■CTの特長を生かしたVE+MPR像

CTを用いた大腸検査の利点の1つに大腸の壁情報を得られることがある。三次元画像の全体像による位置同定はもちろん,VE像にMPR像を加えることにより,壁の肥厚や浸潤の状況および血管やリンパの情報を得ることができる7)8)図4)。マーキングした病変は詳細観察画面で表示され,自動的に直交MPRを表示する。直交MPRでは病変の計測も可能なので,リンパや血管情報,浸潤等の情報と合わせて術前情報の把握に役立つ。
表示レイアウトを複数用意しており,ワークフローや部位によって最適なレイアウトを選択できる(図5)。

図4  2体位比較表示: VE+MPR表示レイアウト
図4 2体位比較表示: VE+MPR表示レイアウト

図5  図2〜4のレイアウト以外にも,部位や目的別に複数のレイアウトを用意
図5 図2〜4のレイアウト以外にも,部位や目的別に複数のレイアウトを用意

■タギングとエレクトロニッククレンジング(W.I.P.)

CTCにおいては残渣の処理が問題となる。近年,バリウムを用いたタギングとタギングによるエレクトロニッククレンジングの研究が進んでいる9)。タギング方法は複数混在しており標準化が待たれるところである。当社ではエレクトロニッククレンジングの研究も進めている。

■大腸CAD(W.I.P.)

欧米では大腸CAD(Computer-Aided Detection)の研究も進んでおり,ポリープの形状をコンピュータが検出することで,読影の効率を上げることが期待されている。VGP上にCADの結果を表示することで読影効率の大幅な向上が期待されるが,当社ではこれらの研究も進めている。

■高解像度大型モニタに よる広範囲表示の可能性

大腸は1mを超える長い器官である。そのため,通常のモニタ表示では全領域を表示することは困難であり,読影を行う場合は画面をスクロールする必要がある。2画面表示などで全体表示をする場合でも,ベゼルの問題がある。近年,汎用PCでもモニタの大型化が進んでいるが,医用画像用モニタにも4MPを超える高解像度大型モニタが登場した。
当社のソフトウェアではいち早くこれらの高解像度大型モニタに適したレイアウトを提供することができる。高解像度の大型モニタであれば,画面内で大腸のすべての範囲の表示も可能である(図6)。

図6  高解像度大型モニタでの表示例
図6 高解像度大型モニタでの表示例

CTCはすでに実臨床レベルで行われているが,CT大腸解析ソフトにより,読影効率を向上させ,より検査をスムーズに行うことができる。低侵襲なCT大腸検査は今後,検診などでも広まるだろう。実際の内視鏡検査にはないCTのメリットを生かすためにもCT大腸解析ソフトにはさらなる発展が期待されている。

●参考文献
1) 人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部編), 国立がんセンター がん対策情報センター, 2008.
2) 国民生活基礎調査(厚生労働省大臣官房統計情報部), 国立がんセンターがん対策情報センター, 2008.
3) 山葡ハ尋, 平野雄士 : CT Colonographyの実際 撮影法. INNERVISION, 23・1(Suppl.), 4〜5, 2008.
4) 富松英人・他 : 仮想内視鏡による消化管診断. 臨床画像, 24・3, 2008.
5) 飯沼 元, 松本和彦, 森山紀之・他 : CT Colonography 大腸癌スクリーニングへの応用を目指して. 胃と腸, 43・6, 2008.
6) 富松英人, 飯沼 元・他 : 大腸3D画像の有用性. 新医療, 32・10, 2005.
7) 飯沼 元, 三宅基隆, 森山紀之・他 : CTを用いた仮想内視鏡(virtual endoscopy)による消化管診断. 49・9, 日本消化器内視鏡学会雑誌, 2007.
8) 飯沼 元 : MDCTと三次元画像. 臨床放射線, 52・11, 2007. 9)永田浩一, 遠藤俊吾・他 : 電子クレンジングソフトウェアによる大腸3D-CT検査画像の構築. 日本大腸肛門学会誌, 61, 204〜205, 2008.

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