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クラウドとモバイル時代に解き放たれる3Dの無限の可能性

【月刊インナービジョンより転載】

■320列CTによる自動的左室機能評価の有用性
  ─心電図同期心筋血流SPECT(QGS)との対比

日本大学医学部内科学系循環器内科分野 平塚 淳/依田 俊一/國本 聡/平山 篤志

心電図同期心筋血流SPECT(QGS)は心筋血流情報に加え,局所および全体の左室機能評価が可能であり,他のモダリティとの比較においても再現性の高い検査法として広く用いられている1)。また多列検出器CT(Multi detector-row CT:MDCT)による冠動脈CT検査は,冠動脈疾患の診断ツールとして広く普及しており,非侵襲的に冠動脈の形態評価を行うことが可能となってきている2)3)。近年,ソフトウェアの開発によりMDCTにおいても,左室機能指標が自動算出可能となったが4)6),320列CTとQGSにおける左室機能評価の対比については報告がない。今回,ザイオソフト社製の冠動脈CT用心機能解析ソフトウェアから自動的に算出される左室機能指標の定量性について,16分割QGSから得られた指標と比較検討を行った。

●対象患者

2009年6〜9月の間に当院にて320列冠動脈CT検査を施行した連続205例中,虚血性心疾患が疑われ,3か月以内に安静時201Tl/負荷時99mTc-tetrofosmin心電図同期心筋血流SPECT検査を施行した55例(男性38例,平均年齢64±21歳)を対象とした。心房粗細動,心室性頻拍などの不整脈を認めた症例や観察期間中に著明な病態変化を認めたものは対象より除外した。55例の患者背景は,陳旧性心筋梗塞症18例,狭心症12例,心不全5例,心筋症2例,スクリーニング18例であった。

●心電図同期心筋血流SPECT プロトコール

安静時に201Tl 111Mbqを投与し, 10分後より心電図同期下にてSPECT撮像を行った。終了後,Adenosine 160μg/s/minにて薬物負荷を開始し,3分後に99mTc-tetrofosmin 740mbqを投与した。今回のプロトコールでは運動負荷にて誘発された虚血による一過性の心機能低下(Stunning)の影響を除外するため7),負荷方法は全例Adenosineによる薬物負荷とし,負荷終了1時間後にSPECT撮像を開始した(図1)。

図1 心電図同期心筋血流SPECTプロトコール
図1 心電図同期心筋血流SPECTプロトコール

●CTプロトコール

320列CT(東芝メディカルシステムズ社製Aquilion ONE)を用いて,2mm間隔,1心拍を10%間隔で10フェーズの画像を再構築し,ザイオソフト社製ワークステーション「ZIOSTATION」のCT心機能解析ソフトを用いて,AutoとManualにて左室機能指標を算出した(図2)。

図2 CTプロトコール 320列CT(東芝メディカルシステムズ社製Aquilion ONE)を用いて2mm間隔,1心拍を10%間隔で10フェーズの画像を再構築し,ザイオソフト社製ワークステーション「ZIOSTATION」のCT心機能解析ソフトを用いて,AutoとManualにて左室機能指標を算出した。
図2 CTプロトコール
320列CT(東芝メディカルシステムズ社製Aquilion ONE)を用いて2mm間隔,1心拍を10%間隔で10フェーズの画像を再構築し,ザイオソフト社製ワークステーション「ZIOSTATION」のCT心機能解析ソフトを用いて,AutoとManualにて左室機能指標を算出した。

●撮影条件

検査前β遮断薬はメトプロロールで平均33mg(0mg〜60mg)投与を行い,撮影時心拍数は平均59.05bpm(40〜84bpm)であった。造影剤投与量は 平均39.69mL(26〜84mL),撮影時(造影時)被ばく量は平均19.78mSv(5.93〜48.06mSv)であった。

●CTによる心機能解析

ManualによるCT心機能解析では,長軸像および短軸像ともに拡張期,収縮期を視覚的に判断し,設定することにより左室拡張末期容積(EDV),左室収縮末期容積(ESV),左室駆出率 (EF)を算出した(図3)。AutoによるCT心機能解析では,1心拍を10%ごとに10フェーズに分割し,これから得られるtime-volume curveからEDV,ESV,EFを自動算出した(図4)。ザイオソフト社製のソフトウェアでは,10フェーズの画像を取り込み,全フェーズ解析のボタンをワンクリックするだけで,十数秒程度で容易に心機能指標の自動算出が可能であった(図5)。自動解析にて得られる心機能指標はEDV,ESV,EFの ほか,身長,体重の入力によりCO,CI,PFR,PERなどのパラメータも算出可能であった。(図6)。

図3 320列CTによる心機能解析(Manual)
図3 320列CTによる心機能解析(Manual)

図4 320列CTによる心機能解析(Auto)
図4 320列CTによる心機能解析(Auto)

図5 320列CTによる心機能解析(Auto)
図5 320列CTによる心機能解析(Auto)

図6 心機能自動解析から得られるパラメータ
図6 心機能自動解析から得られるパラメータ

●結果

CT心機能解析ソフトを用いて,AutoとManualにて算出された心機能指標の比較において,EDV,ESV,EFは,いずれも高い相関を認めた(R=0.97,0.99,0.98)(図7)。CT(Auto)とQGS(99mTc)から自動算出された心機能指標の比較においても,EDV,ESV,EFはともに高い相関を認めた(R=0.90,0.91,0.77)(図8 a,9 a,10 a)。CT(Auto)とQGS(99mTc)から得られたEDV,ESV,EFの実数比較では,EDVで平均+23mL,ESVで平均+20mLとCTで若干増大する傾向を認め,EFは平均で−9.1%とCTでやや低下する傾向が認められたが,いずれもバラツキは少なかった(図8 b,9 b,10 b)。

図7 CT(Manual) vs. CT(Auto) 縦軸CT(Auto),横軸CT(Manual)
図7 CT(Manual) vs. CT(Auto) 縦軸CT(Auto),横軸CT(Manual)

図8 EDV:CT(Auto) vs. QGS(99mTc) 縦軸CT(Auto),横軸QGS(99mTc)
図8 EDV:CT(Auto) vs. QGS(99mTc) 縦軸CT(Auto),横軸QGS(99mTc)

図9 ESV:CT(Auto) vs. QGS(99mTc) 縦軸CT(Auto),横軸QGS(99mTc)
図9 ESV:CT(Auto) vs. QGS(99mTc) 縦軸CT(Auto),横軸QGS(99mTc)

図10 EF:CT(Auto) vs. QGS(99mTc) 縦軸CT(Auto),横軸QGS(99mTc)
図10 EF:CT(Auto) vs. QGS(99mTc) 縦軸CT(Auto),横軸QGS(99mTc)

●考察

今回,まずCT心機能解析ソフトを用いて心機能指標の自動算出能の検討を行ったが,AutoとManualで算出したEDV,ESV,EFの比較においては,いずれも高い相関が認められ,自動的評価の有用性が示された。次いで,心機能指標の自動算出では高い再現性を有 し,ゴールデンスタンダードである左室造影との相関も高いQGSとの対比を検討した。CT心機能解析ソフトから自動算出されたEDV,ESV,EFはQGSとの比較において,EDVとESVはCTでやや増大し,EFはCTでやや低下する傾向があったが,それぞれの相関は良好であった。実数におけるQGSとの差異は,QGSが16分割であるのに対し,CTは解析が10フェーズであった影響が考えられる。CTで心機能解析する上での至適なフェーズについては今後の検討課題である。また,CT心機能解析の際には冠動脈解析単独撮影時と比較して, 1心拍分の撮影が必要なため,放射線被ばく量の増大が問題となる。ちなみに,今回心機能解析を行わなかった非対象患者150例の放射線被ばく量は平均9.34mSv(2.851〜34.06mSv)で あったのに対して,心機能解析を行った対象患者55例では平均19.78mSv(5.93〜48.06mSv)と約2倍に増大していた。また,高心拍患者には,CT撮影前に高容量のβ遮断薬を投与するため,撮影中のEFが見かけ上低下し,過小評価してしまう可能性が考えられる。心不全や陳旧性心筋梗塞症例などのEF20%台の低心機能患者においては,QGSと比較してCTではさらにEDV,ESVが増大しEFが低下する傾向が認められ,低心機能患者は自動的左室機能解析には不向きと考えられた。

●結語

ザイオソフト社製の心機能解析ソフトウェアを用いて320列CTから自動的に得られた左室機能指標は,16分割心電図同期心筋血流SPECTと比較しても臨床上,使用可能であり,冠動脈CT検査を行う際の左室機能評価法として有用であると考えられた。

●参考文献
1) Germano, G., Kiat, H., Kavanagh, P.B., et al. : Automatic quantification of ejection fraction from gated myocardial perfusion SPECT. J. Nucl. Med., 36, 2128〜2147, 1995.
2) Hacker, M., et al. : Combined functional and morphological imaging consisting of gated myocardial perfusion SPECT and 16-detector multislice spiral CT angiography in the noninvasive evaluation of coronary artery disease ; First experiences. Clinical Imaging, 31, 313〜320, 2007.
3) Shigeru, S., Shigeru, F., et al. : Accuracy and Efficiency of Left Ventricular Ejection Fraction Analysis, Using Multidetector Row Computed Tomography. Circ. J., 70, 289〜296, 2006.
4) Juergens, K.U., Grude, M., Fallenberg, E.M., et al. : Using ECG-gated multidetector CT to evaluate global left ventricular myocardial function in patients with coronary artery disease. Am. J. Roentgenol., 179, 1545〜1550, 2002.
5) Hosoi, S., Mochizuki, T., et al. : Assessment of left ventricular volumes using multi-detector row computed tomography(MDCT); Phantom and human studies. Radiation Medicine, 21, 62〜67, 2003.
6) Schepis, T., et al. : Compalison of 64-slice CT with gated SPECT for evaluation of left ventricular function. J. Nucl. Med., 47・8, 1288〜1294, 2006.
7) Ambrosio, G., Betocchi, S., Pace, L., et al. : Prolonged impairment of regional contractile function after resolution of exercise-induced angina ; Evidence of myocardial stunning in patients with coronary artery disease. Circulation, 94, 2455〜2464, 1996.

(2010年4月号)

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