ziostation2における自動前処理とマクロパレットの活用 東京大学医学部附属病院 放射線部 イメージラボ 井野 賢司/後藤 政実/長谷川 浩章/中田 健太/本吉 光一/鈴木 雄一/渡邉 雄一/藤井 佳太/日下 雄次/岡田 正樹/矢野 敬一

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ziostation2における自動前処理とマクロパレットの活用

放射線部イメージラボ臨床部門のスタッフ 右から3番目が井野賢司副技師長
放射線部イメージラボ臨床部門のスタッフ
右から3番目が井野賢司副技師長

320列同時収集可能なマルチスライスCTが臨床で使用されるようになり、再構成画像数が数百枚〜数千枚を超えることが日常的となった。大量の画像データの中から、1枚ずつ薄いスライス画像を詳細に参照して診断に必要な情報を読み取ることも可能だが、病変の大きさや構造などの全体像を立体的に把握できない場合もある。一方、三次元画像や冠状断・矢状断などの再構成画像は、病変の形態や全体像を把握するための補助的な役割として重要となっている。東京大学医学部附属病院放射線部におけるziostation2の運用について、自動前処理機能とマクロパレットの活用を中心に述べる。

s 東大病院放射線部における三次元画像処理の取り組み
CT撮影操作室に設置されたziostation2
CT撮影操作室に設置されたziostation2

東京大学医学部附属病院放射線部では、CTやMRI画像を3Dワークステーション(WS)などで三次元画処理を行い提供するために、2003年よりイメージラボの臨床部門を設置している。イメージラボ臨床部門の設置当初は、読影室の一部に3DWSを設置して三次元画像の作成を行っていたが、効率化と利便性を向上させるために、CT撮影操作室の近傍にザイオソフトのziostation2を中心に3DWSの増設を行っている。

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s 体幹部骨除去を使用した自動前処理機能の有用性
図1 東大病院におけるziostation2の体幹部骨除去処理時間
図1 東大病院におけるziostation2の体幹部骨除去処理時間

CT angiography(CTA)などにおいて、目的の血管や臓器を観察しやすくするためには、骨除去が不可欠となっている。当院でのziostation2を使用した3D-CTAの 三次元処理は、体幹部骨除去の自動前処理により半自動化され、三次元画像作成済みのデータ確認と修正作業へと変化している。体幹部骨除去には、大血管の抽出のみで十分な場合には高速に骨除去を行うことができる「高速処理」と、処理時間をかけ高精度に骨除去を行う「高精度処理」がある。当院における「高精度処理」と「高速処理」の体幹部骨除去の処理時間計測を、連続100症例についてスライス枚数ごとに示す(図1)。CTの撮影対象と機器や造影条件により異なるが、胸部から下肢領域を対象とした1800~2000スライスの体幹部骨除去処理において「高速処理」は「高精度処理」に比べて、1/4程度の時間で処理できることが示唆された。

一方、ziostation2の体幹部骨除去の処理精度においては、「高精度処理」は「高速処理」と比べて、より細かいサンプリングと、より多くの近傍のマトリクス計算を行う。そのため「高精度処理」は、物体の値の連続性を判別することが可能であり、精度の高い骨除去が行われる。体幹部骨除去の処理精度について、処理時間計測と同様の症例にて「高精度処理」と「高速処理」を、excellent、good、fair、poorの4段階で評価した結果を示す(図2)。ziostation2では、「高精度処理」を使用した体幹部骨除去の精度が飛躍的に向上しており、従来難しかった骨と血管が近接した部位でも抽出が可能となっている。「高速処理」では下腿部分の骨と動脈の分離が正確に行えず血管が欠ける場合があるが、「高精度処理」では、多くの場合は改善する傾向が見られるため、細かい末梢血管が必要な場合には「高精度処理」を使用し、大血管の抽出のみで十分な場合には「高速処理」使用するなど、目的や症例によって使い分けることが可能である(図3)。体幹部骨除去処理において、「高精度処理」は「高速処理」に比べて処理時間を要するが、精度の高い骨除去処理により手動での修正等にかける時間も短縮できるため、結果的には効率的な処理が可能である。この「高精度処理」の骨除去実行後は、「骨除去記憶ファイル」が自動作成され、その後、連続作業時に「高精度処理」実行すると約1秒程度でスピーディに骨除去の画像処理を得ることができる。

図2 体幹部骨除去の精度評価
図2 体幹部骨除去の精度評価
4 excellent:全部位において修正の必要なし
3 good:修正個所が2部位以下である
2 fair:修正個所が2部位以上である
1 poor:全部位で修正が必要である
図3 体幹部骨除去処理における高速処理(a)と高精度処理(b)の3D- CTA画像
図3 体幹部骨除去処理における高速処理(a)と高精度処理(b)の3D- CTA画像
高速処理は、高精度処理と比べると骨と血管が近接した部位において末梢血管の描出に劣っていることがわかる。

体幹部骨除去を自動前処理に設定すれば、CT撮影後に三次元処理画像を転送し「高精度処理」の自動前処理を実行して骨除去記憶ファイルを確認し、追加作業時には「骨除去1秒でOK」という時短ワークフローを可能としている。

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s 自動前処理機能とマクロパレットの活用

ziostation2では、自動前処理機能とマクロパレットにより、あらかじめ設定した条件に一致するデータを装置より受信した際に、バックグラウンドで自動的にプロトコルを起動し、設定したマクロパレット機能を実行することが可能である。また、その状態でワークスペースを保存する機能も活用できる。自動前処理の機能としては、ベッド除去、自動抽出、マスク処理、ワークスペース保存、作成画像の出力や保存などを、プロトコルごとにカスタマイズ可能なマクロパレットによりコントロールできる。自動前処理の設定としては、モダリティ、検査部位、プロトコル名、画像再構成条件などの条件を任意に設定して自動前処理ごとのプロトコルを設定することが可能である。自動前処理機能とマクロパレットの活用により、体幹部骨除去の「高精度処理」など、決められたマクロパレット処理の三次元画像作成の場合には、ワークフローの改善および人為的に画像処理にかかるトータル時間を短縮することができる。三次元画像作成時に手動による処理を一切行わない自動前処理例として、脊椎側彎症ボルト固定術のマクロパレットとプロトコルを示す(図4)。

図4 脊椎側彎症ボルト固定術用のマクロパレットと自動前処理のプロトコル
図4 脊椎側彎症ボルト固定術用のマクロパレットと自動前処理のプロトコル
a:閾値処理とフィット処理により金属ボルトの抽出を行う。
b:側彎症ボルト用マスク処理と拡大処理にて金属ボルトの三次元画像を作成する。
c:側彎症骨画像用の閾値処理とフィット処理および拡大処理を行う。脊椎を抽出をした後に側彎症骨透過像の三次元画像を作成する。
d:側彎症ボルトと側彎症骨透過像を加算後に左向姿勢制御の後にシネ作成による画像保存を行う。
e:自動作成された三次元画像の修正と確認を行うためにワークスペースを保存する。

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s 三次元画像の作成における今後の課題と方向性

膨大なデータの中から必要な情報を短時間に得られる三次元画像は、「一目瞭然」の効果を発揮することが広く認知され、CT断層像(元画像)と比較して直感的で概観性が高く、万人に受け入れられやすい特長はきわめて重要であると考えられる。

しかし、医療に用いられる三次元画像は、作成過程における修飾と、作成者である診療放射線技師の熟練度と主観に大きな影響を受けやすいという問題点がある。三次元画像処理においてziostation2の自動前処理とマクロパレットの機能は、処理後の画像確認を十分行うことにより、効率的に活用することが可能であると考えられる。

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(インナービジョン2012年4月号掲載)

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