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Technical Note

2011年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

インテグラル・ワークフローが心臓解析を変える

阪本 剛
マーケティング部

近年目覚ましく進歩しているCTによる心臓撮影技術に付随し,冠動脈の解析技術も急速に向上している。しかし,限られた業務時間の中で,撮影以外に解析処理する時間はさらに限定され,業務時間を圧迫する。われわれは,その問題点とニーズをいち早く読み取り,素早く解析ソフトウェアへ反映させることを常に心がけている。本稿では,AZEの新しい心臓解析ソフトウェアの一部と,それを応用した使用法について述べる。

■ワークフロー単純化による心臓解析の高速化

心臓CTの冠動脈を解析する目的は,冠動脈の状態を詳細に把握することである。そこで,冠動脈CPR(Curved MPR)を利用し,画面上に走行を表示する技術が使用される。そのワークフローを分解すると,(1) データの読み込み,(2) 血管の抽出,(3) 結果を保存する,の3つのステップに分けることができる。しかし,ステップごとに処理が止まるシステムでは,結果出力までに時間を要してしまう。実は,解析処理に最も時間がかかっていたのは,(4) のデータの読み込み,およびAの血管の抽出であった。全体的な作業時間の短縮は,血管の中心線修正作業や追加抽出作業などに力を注ぐことを可能とし,解析クオリティは劇的に改良される。このステップを区切ることなく融合させ,スムーズに解析処理を行うシステムがそのメリットを可能にする。
今回開発したFORMULAシステムは,データローディング後に,ユーザーはボタンを触ることなく結果を得ることができるシステムである。これにより,従来のクリック数を大幅に減少させることができる。また,従来のシステムでは,解析処理実行中にユーザーがデータを操作することができず(図1),解析処理が終了するまでマシン自体が使用できなかった。今回のシステムでは,独自の負荷分散技術を開発したことによって,この問題点が解消され,ユーザーは,解析中にもMPRの作成などを行うことが可能になった。そのため,解析結果が表示される前に,あらかじめ冠動脈や周辺部位(大動脈,肺,胸壁など)の読影を行える(図2)。
フルオートワークフロー機能の“AAA(AZE Auto Analyzer)”は,今回開発した上記の負荷分散技術によって,よりスムーズにバックグラウンド処理を実行できる。このシステムは,CTからデータを受け取った際に自動で心臓の解析処理を行い,データの処理結果を保存する技術である。AAAにより,ユーザーはデータをローディングする必要も,解析処理を行う必要もなくなった。必要なのは,そのデータを欲している人がどのように読影するかに合わせて,データを保存するかということである。その点に関しても,クライアント間のコミュニケーションや,保存項目のマクロ化(回転や方向の規定)を行うことで,よりスムーズに処理を終了させることができる。

図1 開発中の新・CT細血管解析ソフトウェア シンプルなインターフェースを実装し,初めて操作する人にもわかりやすい操作性を開発している。
図1 開発中の新・CT細血管解析ソフトウェア
シンプルなインターフェースを実装し,初めて操作する人にもわかりやすい操作性を開発している。

図2 血管自動抽出画面 ソフトウェアの解析処理中も,画像の閲覧および読影が可能になる。
図2 血管自動抽出画面
ソフトウェアの解析処理中も,画像の閲覧および読影が可能になる。

■FORMULAシステムが実現した新しい4D技術

前述した心臓CTの進歩に伴い,1心拍のデータから心臓の拍動を再現できる“4Dイメージ”の作成が可能になった。これは投影画像とは違い,機械弁の開口の状況や僧帽弁,乳頭筋のモーションを三次元的にも自由に回転させてとらえることができるため,心臓の動き・機能の把握に役立つ(図3)。しかし,心臓のデータをクリアに再現させるためには,ばく大なデータ量とレンダリング計算を要することになる。従来の手法では,マシンが持つ資源としての計算量などを考えると,心臓の拍動を再現することはできても,クリアなイメージングで「再現できる」と言えない状況であった。AZEが開発したFORMULAシステムは,前述の負荷分散技術やレンダリング方法の最適化により,データを間引くことも補間することもなく,超高速レンダリングを実現している。撮影された4D心臓データはその場で構築され,無駄な処理を加えない正確な4Dイメージとして,臨床医は確認することができる(図4)。
この高速レンダリング技術と心臓4Dの臨床的メリットの関係性は,非常に興味深い。心臓拍動化冠動脈バイパス手術(OP-CAB)および局所麻酔によるアウェイク手術,内視鏡下による僧帽弁手術,カテーテルによる大動脈弁手術(TAVI)など,近年目覚ましく発展している“低侵襲心臓手術(MICS)”では,心臓が拍動中に手術を行うものも登場している。人工心肺を使わずに手術を行うメリットは,脳梗塞の発生や腎臓機能への影響などのリスクが少なく,心臓への負荷も少ない。術式によっては小切開で行うものもあり,より侵襲度が下がる。しかし,これらはまた非常に高度な技術が要求される手術である。これに対して,臨床医が事前に4D-CTを用いたイメージングを確保できていれば,心臓の個体差に合わせた術前計画,およびスタッフとのコミュニケーションや術中のストレスを低減させることも可能になるのではないかと考える。このメリットを実現するにあたり,臨床医がその場でばく大な4D-CTデータを一瞬で構築し表現できるシステム,かつ,データをその場で自由に保存ができるシステムが必要である。FORMULAシステムは,現在の心臓手術に求められる機能や,マシンパワーを十分に発揮できるものと考える。

図3 FORMULAによる高画質心臓拍動画像 特許取得技術PRISMAによって,高画質,高分解能を損なうことなく,4Dイメージを提供できる。
図3 FORMULAによる高画質心臓拍動画像
特許取得技術PRISMAによって,高画質,高分解能を損なうことなく,4Dイメージを提供できる。

図4 僧帽弁と乳頭筋,および腱索の表示 高速レンダリングが滑らかな画像処理を提供する。
図4 僧帽弁と乳頭筋,および腱索の表示
高速レンダリングが滑らかな画像処理を提供する。

近年目覚ましい解析技術の進歩が見られるが,その目的は,検査を受けられた患者へのメリットの提供である。ちょっとしたワークフローの改善であっても,厳しい時間的制約の中で余裕を生み,その余裕を確認時間などに有効に使うことで,検査に対する精度の向上につながるものと考える。われわれは,最新技術を開発し実装することで,さらなるワークフローの改善を期待し,ストレスフリーなシステムをめざしている。


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