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Technical Note

2010年7月号
Workstaion Technology Guide−技術の最前線

Scalability Technologyから見えるプライベートクラウド

赤松祐治
マーケティング部

IT業界の話題の1つでもあるクラウドコンピューティングは,ITにかかるコストを下げる手段として,また,ITシステム構築のスピードを高め,効率化を図る手段として大きく注目されている。しかし,この“パブリッククラウド”は,セキュリティ上のリスクやパフォーマンス劣化について危惧する声も多く,限定したクラウド環境を構築する“プライベートクラウド”を検討および導入している事例もある。医療分野においても,患者情報保護や機密性の強い医療データを取り扱うため,依然として保守的な意見もあるが,今後も地域連携がさらに重要になってくることは間違いないため,ネットワークを利用した患者情報の共有化は進められるだろう。
現在,AZEが提案するネットワーク型ワークステーションは,柔軟なITリソースを提供し,コストの最適化を図る一種のプライベートクラウドである。本稿では,AZE VirtualPlaceのネットワークソリューションと最新技術(W.I.P.)について紹介する。

■AZE VirtualPlace: Network type

ネットワーク型ワークステーションでは,医用画像ファイルをDICOMプロトコールで送信せず,解析処理自体をネットワークで共有する。この技術は,アプリケーションを高いスペックのサーバに集約し,ユーザーの手元にある汎用端末からそのアプリケーションを利用するものである。アプリケーションやデータの集約管理が可能であり,端末PCに高いスペックを要求しないことから,導入,運用コストの削減が期待できる。

1.WebAccess

AZE VirtualPlace WebAccessは,画像処理サーバへのアクセスツールとしてWebブラウザを利用することが可能である。現在では,ほとんどのPCに搭載され,インターネットの閲覧に必須とされているWebブラウザを端末とすることにより,あらゆる場所,時間にワークステーションを利用することができる(図1)。ユーザーは,手元のPCからインターネット閲覧と同様の操作でWebブラウザを起動し,VirtualPlaceのURLにアクセスするだけでワークステーションを利用できる。これにより,緊急を要する場合や混雑時,また手術やカテーテルなどの処置現場でも,要望に応じたタイミングでワークステーションを利用することが可能である。

図1 WebAccess
図1 WebAccess

2.ワンクリック連携(PACS連携)

ユーザーは,PACSなどのシステムを起動するたびに,データの検索や情報の入力作業が必要となる。また,データ管理においても,複数のデータベースの存在は管理上不利益になることが多い。例えば,ある患者の画像をPACSビューワで読影しているときに,3Dワークステーション解析を必要とする場合,ユーザーはPACSビューワ上に表示されている患者IDを覚えておいて,別途そのワークステーションの検索画面で該当患者データを再度検索する必要がある。このような人為的な作業は,情報の入力,選択ミスでデータの誤りを招く可能性があり,また,作業効率も悪くなってしまう。
しかし,ワンクリックでWSとPACSが連携するシステムを構築できれば,運用上の基本的な画像データベースはPACSのデータベースに統合され,データ管理の煩雑さを解消することができる。また,データの再検索のために人為的な情報の再入力を必要としないため,データの選択誤りも避けることができる。この“ワンクリック連携”は,読影作業の効率向上,情報の一元管理を可能にするソリューションである(図2)。

図2 ワンクリック連携
図2 ワンクリック連携

3.Download Viewer

上記以外のアクセスとして,既存のPCそのものにソフトウエアをダウンロードし,解析を可能とする“Download Viewer”がある。ケースとしては,同時稼働台数を気にすることなく,自由に使用したい。解析ではなく,最新のビューワ機能を中心に使用したいという要望に対応したツールである。このDownload Viewerの利点を挙げてみると,1つは,ユーザー自身が指定URLよりソフトウエアのダウンロードができ,また自動アップデート通知により,ワンクリックでアップデート可能なところである。また,画像データベースはサーバ側のものを使用するため,情報管理の煩雑さを解消できる。そして,Download Viewerの最大の利点は,同時稼働台数を施設ニーズに合わせて自由に増設できる点にある。このツールを他のアクセスツールと組み合わせて使用することにより,上記の顧客ニーズにしっかりと対応することが可能となる。

■あらゆる瞬間に最高の画質を提供する超高速レンダリングエンジン“Formulaエンジン”

新開発の超高速レンダリングエンジン“Formulaエンジン”(図3)は,従来のレンダリング速度から約20倍の速度アップを実現した(当社比)。Formulaエンジンを搭載すれば,これまでのプログレッシブレンダリングによる疑似的なリアルタイムレンダリングではなく,本当の意味でのリアルタイムレンダリングを提供することが可能となる。
プログレッシブレンダリングとは,画像全体をまず粗く (低い解像度で)表示した後,徐々に精細に表示していく技術である。これまで,膨大なボリュームデータに対応するため,このような技術を用いることでリアルタイム3Dを提供することを実現してきた。しかし,Formulaエンジンによって数千枚という膨大な量のデータでも,常に最高画質でレンダリングを行うことが可能となる。リアルタイムに最高画質で観察ができることの最大の利点は,ストレスがないということである。何かの処理をする際に待たされるということが最大のストレスとなる。このストレスにより,ビューワやワークステーションを触らないという人も少なくない。AZEが提供するFormulaエンジンは,ストレスのない,スムーズな読影,診断を可能とする,ユーザーフレンドリーなソリューションである。
また,最新CTで撮影された心臓4Dデータなどの4Dリアルタイム処理も,Formulaエンジンにより可能となる。いままで十分に生かすことができなかった4Dデータさえも,最大限に活用することが可能となり,これからの4Dボリュームデータ時代における高解像度なボリュームレンダリング上での読影,診断において,必要不可欠な技術・ツールとなるだろう。

図3 Fomulaエンジンによるレンダリング例 a:従来のレンダリング(プログレッシブ)。回転やオパシティを変えたりすると,このレンダリング(低解像度)になる。 b:Formulaエンジンによるレンダリング。回転やオパシティの変化など,その他の操作を行っても常に最高画質で観察できる。
図3 Fomulaエンジンによるレンダリング例
a:従来のレンダリング(プログレッシブ)。回転やオパシティを変えたりすると,このレンダリング(低解像度)になる。
b:Formulaエンジンによるレンダリング。回転やオパシティの変化など,その他の操作を行っても常に最高画質で観察できる。

クラウド化を迎え,さらなる進化を求められるようになった現在,当社はネットワーク型ソリューションに対するユーザーからのさまざまな要求に応えるとともに,ユーザーニーズに対応した製品開発を進め,より使いやすく,高性能な解析アプリケーションを多数提供し続ける。今後も,これらの先進的なアプリケーション群が,世界中の医療施設の診断,治療に貢献できることを期待する。


【問い合わせ先】 TEL 03-3212-7721

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