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別冊付録

技術解説

利便性と精度の向上を遂げたAZE VirtualPlaceのアプリケーション

CTの多列化,MRIの分解能の向上と並行するように,MPR像の作成,3D表示など医用ワークステーションも常に進化を遂げてきた。近年では,医用画像診断において3D画像は必要不可欠なものとなり,医療機関の日常ルーチンで利用されている。さらに,医用ワークステーションにはこれらの基本3D機能だけでなく,さまざまな部位のさまざまな解析機能も実装されている。心臓冠状動脈の解析機能,肺気管支の解析機能,各部位のパフュージョン機能,体脂肪の測定など,ワークステーションが医用画像データを用いて行える解析は多岐にわたる。当社では,これらの各種解析機能に着目し,ユーザー操作性の効率化と機能精度の向上に努めてきた。本稿では,それらの機能向上の成果について述べる。

●自動ルーチン機能

医療機器の発展に伴い,発生する検査画像の数は年々増加傾向にある。それに従い,画像を処理する医師や診療放射線技師の作業時間も同じように増えてくる。そこで当社は,作業時間を短縮するために,AZE VirtualPlaceに解析処理の自動実行機能“自動ルーチン機能”を実装した。
ユーザーは,自動ルーチン機能の条件設定画面で,対象データ(どのデータか?)と対象機能(どの機能を実行するか?)を設定する。例えば,検査記述に“Coronary”とあるCTデータに対して,自動的に冠状動脈解析を実行する(対象データ:Series Description = “Coronary”,対象機能:CT冠状動脈解析機能)。
すると,CTから画像データを受信したAZE VirtualPlaceでは,自動的に上記条件に対して確認が行われ,その条件が満たされる場合は,条件に設定されている対象機能が自動的にバックグラウンドで実行される。ユーザーは患者リスト画面で処理の完了を確認して,解析結果を参照するだけで,手動操作を行うことなく対象データの解析を自動的に完了することができる(図1)。

図 1 自動ルーチン機能
図 1 自動ルーチン機能

●CT冠状動脈解析

周知のとおり,多列高速CTの充実により,心臓領域におけるCT画像診断は日本国内でも多くの医療機関で行われており,中でも冠状動脈の形状,狭窄解析において,医用ワークステーションは重要な役割を担っている。その主な機能としては,心臓,冠状動脈の自動抽出,冠状動脈の径やCT値などの解析が挙げられ,それらの機能のうち最も注目されるのが,心臓および冠状動脈の自動抽出機能である。この自動抽出機能の精度が高ければ高いほど,ユーザーの作業工数を減らすことができ,より多くの検査をこなすことができる。
このたび,AZE VirtualPlaceの“CT冠状動脈解析機能”は,新たな抽出アルゴリズムを取り入れ,心臓抽出,冠状動脈抽出機能の精度を飛躍的に向上させることに成功した(図2)。これにより,従来では造影効果が低く血管の抽出が不十分だったデータでも,正常に血管の抽出が行えるようになった。精度のチューニング工程では,各医療機関,モダリティメーカーの協力を受け,各モダリティ画像を利用したチューニングを行った結果,あらゆる医療機関のプロトコールを受け入れやすくなっている。

図2 冠状動脈自動抽出 従来のアルゴリズムでは,造影効果の低いデータの場合,血管抽出が不十分であったが,新しく開発したアルゴリズムでは,造影効果が低い場合でも血管が正常に抽出されるように精度向上が行われた。
図2 冠状動脈自動抽出
従来のアルゴリズムでは,造影効果の低いデータの場合,血管抽出が不十分であったが,新しく開発したアルゴリズムでは,造影効果が低い場合でも血管が正常に抽出されるように精度向上が行われた。

●CTコロナリー画像と心筋シンチグラフィ画像の3Dフュージョン

循環器領域では,前述のCTを利用した冠状動脈の形状診断と合わせて,RI心筋シンチグラフィ画像を用いた心筋虚血評価も行われる。AZE VirtualPlaceでは,先進的な画像位置合わせアルゴリズム(アトラス法)を用いて,CT画像とRI画像の自動位置合わせを行うことができる(図3)。従来の位置合わせアルゴリズムでは,CTの高い解像度の画像とRI画像の間の共通点を見つけることが難しく,その結果,好ましい位置合わせ結果を得ることができなかった。これを解決するために,新しいアルゴリズム(アトラス法)では,CT画像とRI画像の双方の間に平均的な情報(アトラスデータ)を用い,CT,RIのデータをそれぞれアトラスデータに近づけることにより,位置合わせの精度を格段に向上させることに成功した。このアルゴリズムを使用して位置合わせを行った画像を,CT冠状動脈解析のコロナリー画像と重ね合わせることで,虚血の広がりとその責任血管の位置関係を容易かつ正確に認識することが可能となった。

図3 CTコロナリーと心筋シンチグラフィのフュージョン
図3 CTコロナリーと心筋シンチグラフィのフュージョン

●肺結節解析

心臓領域と同様に,呼吸器領域におけるCT検査もさまざまな医療機関で頻繁に行われており,その画像の診断補助ツールとしてワークステーションが多く用いられている。以下に,AZE VirtualPlaceの“肺結節解析機能”(図4)の主な機能を紹介する。
(1) 結節抽出機能:ユーザーが任意に結節と思われる場所をクリックするだけで,結節部分を抽出することができる。新たに開発された抽出アルゴリズムにより,複雑な形をした結節でも抽出可能であり,容易にそのボリュームを計測できる。
(2) パーセンタイル表示:肺の結節組織の性質を診断するためには,CT値の分布解析が必要となる。AZE VirtualPlaceの肺結節解析では,設定されたROIにおけるCT値のヒストグラムとそのパーセンタイル値をカラー表示することができ,見やすく簡単な操作で結節の評価をサポートする。
(3) 経過観察機能:肺結節の画像診断において,経時的観察は必要不可欠とされている。よって,ワークステーションにおける結節解析機能の解析結果は,過去と今回の検査で比較できることが重要である。AZE VirtualPlaceの過去検査比較画面は,臨床現場での要望を取り入れた画面レイアウトや操作性を持ち,効率良く検査画像の経過観察をサポートする。

図4 肺結節解析画面
図4 肺結節解析画面

●MR遅延造影解析

現在,米国をはじめ,心臓領域におけるMRI検査の有用性が多くの医療機関で着目されている。当社も,AZE VirtualPlaceの開発当初からMRI心臓検査に注目し,これまでにMRIでの冠状動脈撮像画像(Whole Heart MRA)の3D表示やMRI心筋パフュージョンなど,多くのMRI心臓検査の解析機能を提供してきた。それらは2009年に行われた北米放射線学会(RSNA2009)の展示会場でも,多くの医療従事者から高い評価を得ている。中でも“MR遅延造影解析”(図5)は,新たな機能革新を遂げた。
ユーザーは,従来のように心筋のROIを手動で囲むことなく,自動ボタンをクリックするだけで,自動的に心筋ROIを設定することができる。また,梗塞部位を診断するために最も重要となる閾値設定は,画像の梗塞部位を囲むだけで,その信号値分布から自動的に閾値が設定される機能が実装された。もちろん,各施設で定められた固定値での閾値設定にも柔軟に対応できる。さらに,結果表示も梗塞領域をコア部分,グレー部分で分割表示することができ,その梗塞病変の緊急性などの性質診断をサポートする。

図5 MR遅延造影解析画面
図5 MR遅延造影解析画面

●頭部ボリュームパフュージョン

CTの多列化によって一度に撮影できる領域は大幅に広がり,頭部,呼吸器,循環器などのさまざまな領域でその性能が発揮され,進歩を続けている。特に頭部領域では,脳全体を一度に撮影することが可能となり,脳全体の四次元画像が容易に得られるようになった。そして,従来は1枚,あるいは特定の領域だけで行われていた頭部パフュージョン解析を全脳で行うことが可能になり,AZE VirtualPlaceの頭部パフュージョンも,従来のシングルスライスの解析に加えて,脳全体の領域の解析が行えるように機能向上が図られた(図6)。ユーザーは,対象画像を読み込んで解析実行ボタンをクリックするだけで,脳全体のパフュージョン解析を行うことができる。古くから急性期の脳梗塞などの評価に役立てられている頭部パフュージョンであるが,今後はより広い領域を解析することにより,的確な病変観察に役立つと思われる。

図6 頭部ボリュームパフュージョン画面
図6 頭部ボリュームパフュージョン画面

●エンハンスドDICOM

次に,解析機能ではないが,AZE VirtualPlaceの“エンハンスドDICOM”対応についても紹介する。エンハンスドDICOMは,マルチフレームデータを応用させた新しいDICOMデータ通信プロトコールであり,大量なファイルの送受信で通信に時間がかかる従来のDICOM通信と比較して,より高速な大量データ通信を実現することができる。この新しいDICOMデータ通信プロトコールを用いて,今後展開されてくるあらゆるメーカーの新機種と高速データ通信を行えば,超多列CTのボリュームデータや四次元データもストレスなく受信することが可能となる。

●おわりに

以上のように,日々進化を続けている画像診断システムの中で,AZE VirtualPlaceもユーザーの要望に応えながら,より使いやすく,高性能な解析アプリケーションを多数提供し続けている。今後もこれらの先進的なアプリケーション群が,世界中の医療機関の診断,治療に貢献できることを願っている。

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