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次世代の画像解析ソフトウェア

【月刊インナービジョンより転載】

■AZE VirtualPlace 雷神の使用経験とVP Viewerによる院内3D環境の構築

相澤 幹也/古川  望/高柴 裕司/伊藤 卓也
北見赤十字病院放射線科部
津田 宏重
北見赤十字病院脳神経外科
斉藤 高彦
北見赤十字病院循環器内科

●はじめに

2009年7月にMDCT 2台の更新と同時に「AZE VirtualPlace 雷神」(AZE社製:以下,雷神)を導入し,その数か月後には院内の3D環境構築のため同社製の「AZE VirtualPlace VP Viewer21」(以下,VP Viewer)を設置した。本稿では,約半年間の雷神の使用感とVP Viewerによる院内3D環境の構築について報告する。

●雷神の特長

雷神はネットワーク型のワークステーションで,雷神本体とクライアントの合計5台が同時に使用可能であり,クライアントにはネットワーク上の汎用PCをワークステーションとして設定することができる。処理はすべて雷神本体で行っているため,クライアントPCのスペックはそれほど高性能を必要とせず,ひと昔前のPCでも十分使用できている。

●冠動脈CTAの処理

冠動脈CTA処理は,CT細血管解析(セミオート解析)により,上行大動脈,左右冠動脈起支部の3点を指定するだけで,心臓レイヤー作成,左右冠動脈描出,3Dレイヤー作成などを自動で行える。解析の精度は高いと思われる。ルーチンでvolume rendering(VR),ストレッチCPR,AngioGraphic MIP(図1),PWMIP表示を作成し,狭窄などがあれば直交断面像も作成している。また, 4次元解析,CT心機能解析を使用し,EF(左室駆出率)などの心機能解析も行っている(図2)。

図1 Angio Graphic MIP
図1 Angio Graphic MIP
図2 心機能解析
図2 心機能解析

●頭部CTAの処理

新しいCTと本ワークステーションの導入により,脳動脈瘤の術前検査はほぼCTA検査に置き換わった。クモ膜下出血では,手術開始までの限られた時間内に手術支援画像を作成しなければならないため,サブトラクション処理を利用し画像を作成している。臨床医が必要とする3D画像を短時間に作成でき,有用性は高い。ただ,石灰化の描出に関しては,さらなる描出精度の向上を望む。
また,術前検査として頸部CTAも同時に撮影している。これの処理もサブトラクション処理で行っているが,特に意識レベルの低い患者の場合,体動により造影前後での位置のズレが大きく,剛体位置合わせでのサブトラクション処理には限界があり,非剛体位置合わせでサブトラクション処理を行っている(図3)。非剛体位置合わせは,剛体位置合わせに比べ計算時間は長いが,トータルでの画像処理時間が大幅に短縮できとても有用である。

図3 頸部CTAのサブトラクション処理
図3 頸部CTAのサブトラクション処理

●CT Colonographyの処理

CT Colonographyは,患者データを選択し大腸解析のアイコンをクリックするだけで,大腸の抽出までが自動で行われる。その後は,経路検索のボタンを押すことで,各解析ができる状態まで完成する(図4)。手間がかからずして処理が完了し,閲覧が行えるので,検査の合間でも支障はない。万が一,経路の検索がうまくいかなくても,修正はさほど難しくはなく,その後すぐに仮想内視鏡,開き一覧,竹割り一覧を表示することが可能である。ただ,腸管内のairが足りなく大腸が途切れている場合や,CTの撮影中にうまく息止めができなかった場合は,腸管をつなげる作業が必要になるため若干の時間を要してしまう。  また,大腸の3D画像も作成することで,スクリーニングはもとより,手術前のシミュレーションとしても大変活躍している(図5)。欲を言えば,大腸解析のモードと3Dのモードが,相互にデータ共有できればもっと使いやすいものになるはずである。

図4 大腸解析 a:大腸抽出 b:経路検索 c:直行カット断面 d:竹割り一覧
図4 大腸解析
a:大腸抽出 b:経路検索 c:直行カット断面 d:竹割り一覧

図5 大腸3D画像 a:仮想注腸バリウム b:椎体とのマルチ c:仮想注腸部分表示 d:腸管外観表示
図5 大腸3D画像
a:仮想注腸バリウム b:椎体とのマルチ c:仮想注腸部分表示 d:腸管外観表示

●VP Viewerの特長

VP Viewerは,いわゆるシンクライアントと呼ばれているもので,ワークステーションサーバのボリュームデータを使用して簡易的なワークステーションとして使用できる端末である(図6)。主な機能は2D画像の表示,MPR,3D処理などで,3D処理は雷神とほぼ同じ操作で可能である。また,雷神で行っていた3D処理を途中保存したものを,VP Viewerで引き続き処理することもできる。VP Viewerの処理はビューワ本体(AZE VirtualPlace VP Viewer21)で行っているため,ワークステーション側(雷神側)に処理負荷をかけることがなく,40〜50台まで接続可能である。

図6 AZE VirtualPlace VP Viewer21
図6 AZE VirtualPlace VP Viewer21

●院内3D環境の構築

VP Viewerを使った院内3Dシステムは,必要な場所に必要な台数だけ設置できる点で有利である。院内で部分的に3D環境を整える場合に有効で,費用対効果は非常に高い。ただし,PACSに組み込むような形のシンクライアントとは異なり,専用端末を使用するため,PACSや電子カルテ端末などと併設する場合には,スペース効率が悪いという欠点はある。現在,VP Viewerは,医師用のシンクライアントとして,脳神経外科と循環器内科で活用している。
脳神経外科では手術室で使用している。3D-CTAを映し出したVP Viewerを術中に用いることにより,いままではあらかじめPACSに用意しておいたり,フィルムにプリントしたものでしか画像を見ることができなかったものが,その場でどの角度からもリアルタイムに画像を見ることができるようになった。そのことで,余計な画像をPACSやフィルムで用意する必要もなくなり,少し角度を変えた画像を見たい場合でもすぐに見られるという有用性がある(図7)。
循環器内科では,心臓カテーテル室に設置することにより,冠動脈病変の狭窄度だけではなく,病変長や血管径の計測がある程度可能となった。前もって対象病変の情報を得ることにより,これまで以上にスムーズにカテーテル治療を行うことができ,特に,若手の先生にとって力になりそうである。術者の正面のモニタにCT画像を表示できるようになり,心臓CTの威力をいっそう発揮できるようになった(図8)。慢性完全閉塞病変に対するカテーテル治療において,閉塞部の血管の走行を,CT画像にて確認しながらガイドワイヤ操作ができることは非常に有利である。

図7 手術室へ設置したVP Viewer
図7 手術室へ設置したVP Viewer

図8 心臓カテーテル室での使用 右上の画面にCTAを表示。
図8 心臓カテーテル室での使用
右上の画面にCTAを表示。

●おわりに

当院では初めての本格的なワークステーションの導入であったが,半年経った今でも,まだ一部の機能しか利用できておらず,今後さらに多くの機能を使いこなせるよう努力していきたいと考えている。
最新のCTでは膨大なボリュームデータが発生するが,その有効活用のためにはシンクライアントシステムは不可欠であり,VP Viewerは院内の3D環境を整える手段としては非常に有効であった。院内すべてに3D環境を実現することが理想的ではあるが,コストや使用頻度を考えると部分的な導入でも十分に効果がある。シンクライアントシステムは,まだ一般的に広く普及しているとは言い難いが,ワークステーションの付加機能として今後,非常に重要になると思われる。

【使用CT装置】
SOMATOM Definition AS+(シーメンス社製) SOMATOM Emotion(シーメンス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 雷神(AZE社製) AZE VirtualPlace VP Viewer21(AZE社製) AZE VirtualPlace LEXUS Lite(AZE社製)

(2010年5月号)

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