東芝メディカルシステムズ

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Technical Note

2011年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

Workstation,Network−循環器動画ネットワークシステム「CardioAgent」の最新技術と運用サポート

大江光雄
SI事業部

「CardioAgent」は,心臓カテーテル検査および超音波検査等の動画像を保管し,また,レポートを記録して電子カルテ等に配信するシステムである。本稿では,CardioAgentで実現した最新の機能を紹介する。

■電子カルテとの連携

近年,電子カルテの普及により,病院全体でCardioAgentを運用する傾向にある(図1)。電子カルテと連携することにより,レポートに各種患者情報を取り込む。さらに,電子カルテで患者情報が変更された場合,サーバ内の情報を整合させる(PIR)などのワークフローを,IHE規格に準じて実現することにより部門間の情報連携が取れて病院全体で使えるシステムになる。

図1 CardioAgentの運用例 解析とレポート記録するところは専用レビューステーションを設置し,それ以外は電子カルテでWeb参照する。
図1 CardioAgentの運用例
解析とレポート記録するところは専用レビューステーションを設置し,それ以外は電子カルテでWeb参照する。

■画像保管量の増加

1995年に,循環器部門のDICOM規格が制定されてから長年経過し,デジタル保管されているデータ量が膨大化している。そのため,大容量DISKが必要となる。これに対し,図2に示すようにSAN(Storage Area Network)と組み合わせると,大容量の保管が可能になる。CardioAgentは,米国トップの大規模病院で多く使われている製品で,データ量が増えても数秒で画像表示できる実力を備えている。

図2 SAN大容量保管装置 ラックの高さ4Uで,最大2TB×30個。物理容量60TB,RAID6で実効48TB。高信頼性,省スペース,省電力の保管装置である。
図2 SAN大容量保管装置
ラックの高さ4Uで,最大2TB×30個。物理容量60TB,RAID6で実効48TB。高信頼性,省スペース,省電力の保管装置である。

■放射線科PACSとの連携(図3)

放射線科PACSと動画ネットワークでは要求される仕様・性能が異なるので,運用を最適化するためにCardioAgentではサーバを分離している。お互いにWebで連携することにより,シームレスに画像を参照することができる。

図3 放射線科PACSとCardioAgentの連携 患者IDでリンクするので,現在表示している動画像の放射線科画像をワンタッチで表示する(患者再検索の必要はない)。
図3 放射線科PACSとCardioAgentの連携
患者IDでリンクするので,現在表示している動画像の放射線科画像をワンタッチで表示する(患者再検索の必要はない)。

■超音波システム

近年,検査効率の向上,診断記録のデータベース化を目的として超音波システムの導入が増加している。心電計などの波形中心の生理検査システムと比較して,超音波画像は動画なので,CardioAgentで構築した方が動画レスポンスに優れている。

1.超音波検査のワークフロー(図4
(1) 電子カルテからオーダー情報を取り込むことにより,レポートを起草して予約簿を作成する。また,検査前に前回検査画像,レポートを確認することができる。
(2) 検査する患者さんが来たら,カードやバーコードで患者さんを同定して,超音波装置に患者情報を送る(DICOM MWM)。
(3) 検査終了後,レポートを作成する。
(4) 画像を確認してサーバに送信する(検像)。
(5) 検像された画像,および確定されたレポートは電子カルテで参照できるようになる。

図4 超音波検査とレポートのワークフロー オーダー発行から検査・レポート作成して院内配信するまでを自動化することにより,効率をアップして人為的なミスをなくすことができる。
図4 超音波検査とレポートのワークフロー
オーダー発行から検査・レポート作成して院内配信するまでを自動化することにより,効率をアップして人為的なミスをなくすことができる。

2.超音波装置からの計測値読み込み
計測値は,DICOM SR(Structure Report)で出力される。これは標準規格なので,どのメーカーの超音波装置でも読み込むことができる(図5)。これにより計測表をワンタッチで仕上げ,統計処理も可能になる。

図5 超音波装置からの計測値読み込み DICOM SRで出力される計測値をレポートで読み込み,表に数値データを埋め込む。
図5 超音波装置からの計測値読み込み
DICOM SRで出力される計測値をレポートで読み込み,表に数値データを埋め込む。

3.局所心壁運動評価(図6
心エコーの壁運動の評価には,Wall Motion Scoringを使用する。これは,米国ACS学会に準拠した評価方法である。

図6 Wall Motion Scoring(WMS) 各壁の運動評価をする。結果は色分けしたチャートになるので 直感的に理解できる。
図6 Wall Motion Scoring(WMS)
各壁の運動評価をする。結果は色分けしたチャートになるので 直感的に理解できる。

4.シェーマ
紙ベースのレポートでは,シェーマの作成に時間がかかっていたが,液晶ペンタブレットにより紙にスケッチする感覚で,さまざまなペン種と描画機能を使って多彩な描画ができる(図7)。各部位の基本シェーマを多く備えているので,短時間で美しいシェーマを作成することができる。また,画像をレポートに取り込んでアノテーションを記入したり,画像を模写してシェーマを作成することもできる。

図7 液晶ペンタブレットによるシェーマの描画 基本シェーマを選択して,色鉛筆で線を引き,クレヨンで塗りつぶす。また,折れ線や囲みなどの機能により,簡単にきれいなシェーマが描ける。
図7 液晶ペンタブレットによるシェーマの描画
基本シェーマを選択して,色鉛筆で線を引き,クレヨンで塗りつぶす。また,折れ線や囲みなどの機能により,簡単にきれいなシェーマが描ける。

5.集計・統計
入力されたレポートから簡単に検査内容を集計することができる(図8)。さらに,学会発表用にはカテレポートと組み合わせて,患者単位,および病変単位に統計してエクセルデータとして出力できる。

図8 集計機能 レポート上で検査数などを集計して,グラフ表示することができる。さらに,エクセルデータでの出力もできる。
図8 集計機能
レポート上で検査数などを集計して,グラフ表示することができる。さらに,エクセルデータでの出力もできる。

■運用を止めないために

これだけの機能を持つネットワークが止まると,検査も患者説明もできなくなるので,安定稼働が非常に重要な課題になる。そのため,ハードウエアの故障を想定してシステム設計されている。画像保管は,RAID構造のDISKを二重保管することにより,部分的に故障しても運用が止まらない(図9)。また,故障までに至らないエラーでも,自動的にサービスセンタへ連絡が行くアラートシステムを搭載している。そのような場合,近くのサービスセンタが即時に対応する。さらに専門性を要する問題に対しては,上部組織にエスカレーションさせ,迅速に解決させる重厚な体制を整備している(図10)。

図9 画像の二重保管 メイン画像とバックアップ画像は同時に画像記録して,データベースも二重化している。切り替えはワンタッチでできる。
図9 画像の二重保管
メイン画像とバックアップ画像は同時に画像記録して,データベースも二重化している。切り替えはワンタッチでできる。

図10 サービス体制 現地サービスがすぐに駆け付けることができる。さらに専門性を要する問題は,エスカレーション方式により解決する。
図10 サービス体制
現地サービスがすぐに駆け付けることができる。さらに専門性を要する問題は,エスカレーション方式により解決する。

CardioAgentはここ数年で大きく進化した。循環器レポートは,多くの先生方のご指導を受けて洗練され,検査予約簿,検査中の看護記録を追加した。また,循環器のCT検査が増加したので,3D WSと連携したCTレポートを作成した。さらに,アンギオ室ユーザの要望に応えて,心外,脳外,小児,消化器レポートを開発した。他方,超音波システムに拡張してシェーマ作成,DICOM SRの取り込み,WMSなどを備えた。これにより,すべての検査・治療の結果をレポートに集結させた。また,学会発表用にデータ処理ができるようにした。
CardioAgentは,現在国内270以上の施設で稼働し,その中でレポートは170以上の施設で使っていただいている。今後もこれらの豊富な経験をもとに,多様化するニーズを先取りし,安心して使っていただけるシステムに発展させる所存である。

【問い合わせ先】 SI事業部 TEL 03-5783-1611