東芝メディカルシステムズ

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Technical Note

2008年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

US−腹部領域における4D Imagingの応用

鷲見 篤司
超音波開発部プローブ・画質開発担当

超音波診断装置において,検査のスループットを向上させるアイテムの1つとして,三次元の画像情報をリアルタイムに表示し多角的な診断情報を提供する4D Imagingが注目されている。
腹部領域において,より高性能かつ多角的な診断情報を効率良く提供するソリューションとして,最高級超音波診断装置「Aplio XG」に搭載する4D Imagingの技術開発を4Dプローブから4Dアプリケーションに至るまで包括的に行ったので解説する。

■ 4D Imaging

当社のFusion 3Dは,プローブを手で動かしながら収集したデータより三次元画像を構築して表示する機能である。ルーチンで使用するプローブを用いて簡便に三次元画像を表示できるという利点がある一方で,非リアルタイムであることと,手動でプローブを操作することに起因する収集データの空間的な位置精度や密度,および均一性に課題があり,高精細な診断情報を提供する上で支障となることがあった。
それらの課題を克服するソリューションとして,振動子が機械的に揺動制御可能な4Dプローブを用いた4D Imagingを新たに開発した。4Dプローブの導入により,連続的な揺動制御をシステム的に行うことで,収集したボリュームデータから三次元画像をリアルタイム処理で生成して表示することが可能となった(図1)。
4D Imagingでは,データ収集時の正確な位置情報を三次元画像の構築に反映できるため,Fusion 3Dで発生していた位置ずれに起因する空間的な歪みが低減された。また,手動では困難であった低速揺動も可能であるため,Single Sweep(1回のみ低速揺動して収集した高密度で均一性の高いデータから構築した三次元画像を表示する)モードで高精細な三次元画像を表示することも可能になった。


図1 機械制御によるボリュームデータ収集(a)と胎児の4D像(b)
図1 機械制御によるボリュームデータ収集(a)と胎児の4D像(b)

■ 4Dプローブ

当社は,これまでにXBT(eXpanded Broadband Technology)技術を適用した広帯域かつ高感度なプローブを開発し,そのプローブ性能を最大限に生かしたDifferential THIなどの技術と組み合わせることで,高分解能かつ高感度な2D像を提供してきた。PVT-382BTは,これらの技術を適用して腹部用途に開発したプローブで,特に,肋間走査と穿刺の操作性の良さを特徴とした小曲率コンベックスプローブである。
このプローブの特徴を継承し,肋間からの4Dスキャンを可能にした小型・軽量のプローブが,PVT-382MVである。4D Imagingにおいても,ベースとなる2D像が重要であるため,PVT-382MVの音響特性はPVT-382BTがベースとなっている。4Dプローブの場合,データ収集のために振動子を機械的に揺動する都合上,振動子と生体が直に接触することを回避するため振動子を含む揺動部分全体がシェルで覆われているが,シェルが音響特性に与える影響を最小限に抑えるとともに,PVT-382MVでは振動子自体の音響特性の向上も図ることで,高分解能な画質を提供することに成功した。
このように開発されたPVT-382MVの性能を最大限に引き出すために,Differential THI をSingle Sweepモードに対応させて,さらに高精細な3D-Differential THI画像が表示できるようになっている。また,ヘッドの形状や視野角もPVT-382BTの特徴を反映した設計を行っており,将来的には4D Imagingを生かした穿刺アプリの開発を視野に入れている。
腹部への用途のほかにも,現在,「産科用」,「体腔内用」,「表在用」の4Dプローブを製品化している(図2)。

  図2 4Dプローブの概観
図2 4Dプローブの概観
右からPVT-382MV,PVT-575MV,PVT-681MV,PLT-1204MV

■ 4Dアプリケーション

1.Multi View
4D Imagingは,ボリュームデータから立体構造を2Dに投影したレンダリング像を構築し,生体構造を立体的に表現することで客観性を高めるという利点があるだけでなく,ボリュームデータから複数の2D像を生成して,診断情報を多面的に表現することで情報量を増やせるという利点もある。
一般的には,MPR(multi planer reconstruction)は収集したボリュームデータから直交3断面を同時に表示する手法であるが,腹部領域において,例えば,肝腫瘍のような充実組織内の病変部を多面的に観察する場合には本手法が有用である。Multi Viewはこの手法をさらに発展させた機能で,CTスキャンで定着している一定間隔でスライスして得られた複数の断面を同時に表示することができる。
例えば,病変部を含む関心領域のボリュームデータを収集し,Multi Viewを使って病変部の複数のスライス像を同時に表示すると,病変部の広がりだけでなく,形態の空間的な変化を連続的に観察することが可能になる。また,小児頭部のようにスキャンのウインドウが限られるようなケースであっても,Multi Viewで任意のスライス断面を連続的に表示することができるため,これまでは観察が困難であったビューからも詳細な情報を得ることが可能となる(図3)。
さらに,Single Sweepモードを併用することで,高密度なボリュームデータ収集が簡便になるとともに,スライス方向を任意に変更しても常に高精細な断層像を表示することができる。MPRやMulti Viewで表示される断層像は,ダイナミックレンジやガンマカーブといった階調処理を2Dから継承しており,通常の2D像と同様な画質で表示することで検査者にシームレスな検査環境を提供している。


図3 Multi Viewによる小児頭部の水平断面像
図3 Multi Viewによる小児頭部の水平断面像

2.4D-CHI
4D-CHI(Contrast Harmonic Imaging)は,腹部領域において広く行われている造影エコーを4D Imagingと組み合わせた機能である。
従来の2D像での造影エコーでは,1回の造影剤投与で染影の時間的変化が観察できる領域は限られていたが,4D-CHIでは染影画像をボリュームデータとして収集するので,例えば,肝腫瘍に対するRFA後の染影画像をMulti Viewで観察すると,腫瘍の隅々にわたって治療効果確認を行うことができる。もちろん,染影画像を4D像としてリアルタイム表示することができるので,血流の走行状態や血管の形態的な異常といった診断情報をより客観的に伝えることが可能となる(図4)。
また,2D-CHIで好評のMFIモードにも対応しており,造影剤によって得られた染影の高輝度情報を重畳表示することで,より細かな管腔構造を滑らかに描出することもできる。


図4 4D-CHIによる肝腫瘍の染影像
図4 4D-CHIによる肝腫瘍の染影像
(画像ご提供:東京医科大学・森安史典先生)

腹部領域におけるアプリケーションを中心とした4D Imaging技術について紹介したが,将来的には,階調反転してレンダリング処理をすることで管腔の表面構造を立体的に表示する手法により,胆?のような血管とは異なる管腔構造を描出することも可能となる。また,一定の厚みを持った領域を重畳表示することで,穿刺針の視認性の改善も期待できる。
2Dに比べ,4D Imagingは発展途上であり,膨大な情報の活用に関して研究・開発を継続することで,今後もアプリケーションの拡充を図っていきたい。



【問い合わせ先】 超音波事業部