国内MRI装置におけるライフサイクルは通常10年前後であり，長期使用されるモダリティの1つであった。しかし近年だけを見てみると，さらに1，2年使用期間を延長する傾向が強くなってきている。一方，日進月歩で進化している医療の現場において，このような長期使用を導入当時のままの性能や機能だけで，十分に対応することが難しくなってきているのも事実である。
シーメンスはこうした既存稼働装置に対して，最新型装置と同レベルでの検査を可能にし，最先端医療を実施する能力・機能を継続させるため，過去から現在，そして未来につながるソリューションとして，以下3つの取り組みを重視し推進している。

◆コンピュータシステム機種交換プログラム−syngo Evolve Package

コンピュータの進化が目覚しいのは周知の事実であり，コンピュータシステムを一つの根幹として使用している医療装置も，こうした恩恵を十二分に得るべきである。通常コンピュータシステムは，アプリケーションソフトウエアの追加や機能向上などによるソフトウエアのバージョンアップが定期的に実施されるが，このようなソフトウエア系のバージョンアップが行われると，処理能力などからコンピュータハードウエアへの負荷が増大し，支障を来す場合が考えられる。
しかし，最新医療を継続するために行うソフトウエア系のバージョンアップが行えなければ，医療現場としての取り組みに大幅な遅れを生じるだけでなく，情報が発達した社会においては，直接的に経営収益にも影響を及ぼす可能性さえ示唆される。
シーメンスが実施している“syngo Evolve Package”は，装置を新規に導入した後の10年間に計2回，コンピュータシステム（ホストコンピュータ，イメージプロセッサ）を筐体ごと，その交換時期に使用している最新型コンピュータシステムへと交換するプログラムであり，能力を格段に向上させることができる。
すでに国内ではsyngo Evolve Packageを開始して9年の実績を有し，高い評価をいただいているプログラムである（図1）。

◆テクノロジーのランクアッププログラム−Tim UpGrade

IPA（インテグレーテッド・パノラミック・アレイシステム）を搭載した1.5TのMAGNETOM Symphonyシステムや，3TのMAGNETOM Trioシステムについて，Timシステムへのランクアッププログラムを準備している（図2）。
IPAで培った4種類のフェイズドアレイコイル同時使用システムをさらに拡張し，最大10個までシームレスに高感度なTimフェイズドアレイコイルを同時使用し，局所の高分解能撮像やiPAT 4倍速以上の高速撮像，さらに，そのままの感度・速度を維持して行う任意範囲撮像や真の全身撮像へ拡張することができる。このTimシステムへのランクアップでは，同時にグラディエント強度の変更やRFシステムのチャンネル数の選択なども行え，最新サーフェイスコイルの32ch Head Coil（図3 a）や32ch Body Coil（図3 b）のほか，検査テーブルをリアルタイムに移動させながら撮像を行えるTimCT（図4，5）も搭載することが可能になる。

◆トライアルライセンス−Trial License

現在，シーメンスのMRI装置の年間世界販売シェアは40%以上（2009年8月現在）であり，多くの医療現場で使用されている。こうした世界の医療現場からの要望に応えるべく，次々と新規アプリケーションの開発を行い，毎年数種類の最先端アプリケーションを追加発表・販売している。
そこで，これら最先端のアプリケーションが本当に必要なのか，また，臨床上有効に使用できるものなのかを確かめていただくために，90日間フリーソフトウエアとしてトライアル使用し判断するプログラム“Trial License”の利用が可能である（図6）。すでに100種類以上のアプリケーションがトライアル使用できるようになっている。

稼働中のMAGNETOMシリーズに，必要な最先端の技術を逐次取り入れ，長期にわたり高度医療を支えていく，シーメンスが提案するソリューションである。