シーメンス・ジャパン株式会社

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Technical Note

2009年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

DA(FD)−Artisシリーズにおける循環器領域 2D/3Dアプリケーション

林 昭人
マーケティング本部AX事業部

血管撮影装置「Artis」シリーズでは,卓越した画質・運動性能・操作性を有する装置本体に,先進的な2D/3Dイメージング技術を統合させることで,高度化する冠動脈狭窄のPCI治療や不整脈のEP治療に対する多彩な画像支援環境を提供している。本稿では,循環器領域に関連するArtisシリーズの最新2D/3Dアプリケーションを紹介する。


syngo DynaCT Cardiac(図1)

syngo DynaCT Cardiac”は,CTライクイメージング機能の代名詞ともなっている“syngo DynaCT”を,拍動する心臓の撮影に応用した3Dアプリケーションである。ECG同期信号に基づいたプロスペクティブ撮影とレトロスペクティブ再構成とを組み合わせることで,拍動によるアーチファクトを抑制した特定時相の心臓3D画像を構築することができる。術中に,DynaCTデータをEP装置用マッピング画像として利用でき,撮影後は即EP治療へと移行できるため,被検者のコンディションやポジショニングを治療時と一致させやすく,ワークフロー面の改善で従来のマルチスライスCTに代わる活用が期待される。


図1 syngo DynaCT Cardiac
図1 syngo DynaCT Cardiac

syngo InSpace EP(図2)

syngo InSpace EP”は,EP治療におけるワークフローを最適化し,術前CT/MR心臓画像データや術中syngo DynaCT Cardiac画像データを統合する,アブレーション治療計画用3Dアプリケーションである。ワンクリックで左心房だけを自動抽出する機能を持っており,迅速なセグメンテーション作業を可能にする。抽出された3DデータはCアーム装置と相互に角度連動しており,食道部を避けながらの手技など,迅速で安全なEP治療を支援する。また,仮想内視鏡モードを用いることで,視点を移動・回転させながら左心房内から肺静脈開口部の解剖学的位置等を可視化することもでき,より直感的に内径や距離の計測作業を行うことができる。


図2 syngo InSpace EP
図2 syngo InSpace EP

syngo iPilot(図3)

syngo iPilot”は,作成した3次元画像と透視中のライブ画像を,リアルタイムで重ね合わせ表示する3Dロードマップ機能である。あらかじめ手技に必要な領域を3D画像化しておき,必要に応じて透視画像とオーバーレイ表示することで,デバイスを迅速かつ安全に誘導することができる。従来は,頭部血管などに使用されているが,上記のsyngo InSpace EPによる左心房3D画像を透視画像上に投影させることで,アブレーションカテーテルの正確な留置を支援する。透視画像と3D画像は相互に連動しており,Cアーム角度,画像サイズ,寝台位置などの変更にリアルタイムで追従するため,心房細動のAF治療のワークフローを改善させることもできる。


図3 syngo iPilot
図3 syngo iPilot

syngo IC3D(図4)

syngo IC3D”は,冠動脈をとらえた2方向の撮影画像から立体的な冠動脈像を構築する3Dアプリケーションである。同じ病変部を含み,投影角度差が30°以上の2方向の静止画像があれば,冠動脈の立体的な画像を構築でき,一般的な3D画像のような回転撮影を必要としない。そのため,すでに検査・治療で撮影された画像を用いることもでき,少ない被ばく量で,簡易的に3D画像表示や,Cアーム投影角度との連動表示,そして画像解析処理を行うことができる。解析に当たっては,フォアショートニング効果を回避しながら,血管径や狭窄率・分岐角度・病変長などを正確に測定でき,PCI術中の治療計画に用いることができる。


図4 syngo IC3D
図4 syngo IC3D

■ syngo IC Stent(図5)

syngo IC Stent”は,バルーンによるステント拡張時の撮影動画像において,バルーンマーカーの位置を基準にフレーム像を自動的にシフト・回転・加算させることで,ステントの視認性を高める2Dアプリケーションである。各フレーム上のバルーンマーカーの位置は自動的に認識され,短時間で処理が進行するため,余分な作業を発生させることなく,迅速にステントの留置位置や拡張状態を確認できる。操作には,テーブルサイドコントローラを直接使用できる。


図5 syngo IC Stent
図5 syngo IC Stent

syngo iFlow(図6)

syngo iFlow”は,造影剤が注入されている最中に連続撮影された一連の血管動画像から,画像上の各ピクセルがピーク値を迎えるまでの経過時間を算出し,その値をカラーマッピングさせる2Dアプリケーションである。原理的には,CT断面画像で得られるTime to Peak画像と同じものであるが,CTでは断面内の実質臓器や腫瘍の描出が中心で,血管の全体像の描出は困難であったのに対し,本アプリケーションでは血管の全体像を表示でき,かつ,その血行動態を把握することもできる。特に,画像中に血流時相情報が含まれるため,インフローとアウトフローの判別がつけやすくなり,動静脈や腫瘍支配血管の同定などが容易になる。また,治療前後や,病変側・正常側の画像を比較することで,相対的な血流の違いを把握することもできる。立体的な情報は含まれず,正確な数値解析には適さないが,インターベンション中に術者が血流状態を簡易的に把握するのに適している。


図6 syngo iFlow
図6 syngo iFlow

血管撮影装置Artisシリーズに搭載できる2D/3Dアプリケーションのうち,循環器領域に関連するものを紹介した。今後もPCIやEPに代表されるインターベンション治療を支援できる統合環境をめざし,最適なアプリケーション開発を進めていく。



【問い合わせ先】 マーケティング本部 AXグループ  TEL 03-5423-8422