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別冊付録

技術解説−シーメンスMRIの最新技術紹介 1
3T MAGNETOM Verio TrueForm技術と開発の背景
3T MAGNETOM Verio

TrueFormテクノロジーは,直径70cmのオープンボアと,円筒形の磁場均一保証範囲を実現した“TrueForm Magnet”,2チャンネル送信制御の“TrueForm RF”を基本とした,快適な3T MRIのために開発された技術です。3T MRIにおいては,強い磁場によって高画質が引き出される反面,特に体幹部における信号の不均一が問題とされてきましたが,TrueFrom RFはこの問題を解決しています。本稿では,TrueFormテクノロジーそのものではなく,開発に至った経緯についてご紹介します。


TrueForm開発の背景

2004年に1.5T MRIにおいて初の70cmオープンボアを実現した「MAGNETOM Espree」を市場に投入し,高磁場における快適性と有用性のノウハウを蓄積してきたシーメンスは,3T MRIにおいても同様の需要があることを認識していました。
TrueForm Magnetの開発は,3T MRIにおいて導入が加速度的に進む世界の二大市場である,アメリカにおける肥満人口の多さと日本における高齢人口増加に,将来にわたって対応していくために開発されました(図1)。TrueForm Magnetは,静磁場を発生させる超電導コイルを複数に分け,それぞれの磁場コイルの巻き密度,直径,幅などを調整することで,円筒形の磁場均一範囲を実現しています(図2)。3T MRIの高画質を広い撮像範囲で保証する円筒形の撮像ボリュームは,ボア径70cmという快適性とともに実現するためには,欠くことのできない要素でした。

図1 a OECD諸国の肥満人口比率
図1 a OECD諸国の肥満人口比率 
各国の全人口に占める,BMI値が30を超える人口の割合

Data from http://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Image:Bmi30chart.png&oldid=107854217
Drawn by http://www.WellingtonGrey.net

図1 b 各国の高齢人口の割合と今後の傾向
図1 b 各国の高齢人口の割合と今後の傾向
(資料)国立社会保障・人口問題研究所「人口資料2009」,国連推計2008

図2 TrueForm Magnet デザイン
図2 TrueForm Magnet デザイン
3Tを発生させる超電導コイルを複数に分割して,それぞれのコイル巻き密度,直径,幅を調整し,円筒型の磁場均一範囲を作り出している。

画像不均一の原因

3T MRIにおいては,磁場の均一度だけでなく,被写体内における送信電波の分布ムラも大きな課題でした。
送信電波の波長が短くなり,定常波(Standing Wave)が発生することが原因の1つで,その対策として,送信RFの制御を2チャンネルで独立して行うことが有効な技術です。しかし,不均一の原因はほかにもあり,2チャンネル送信だけでは不十分です。
画像の不均一は,送信電波(RFもしくはB1)が被写体の中心部に集中する効果(B1-Focusing)と,被写体の表面でシールドされて中心部まで届かない現象(B1-Shielding)とが重なっています。また,これらの現象は,脂肪と水や組織によって影響が異なります。しかも,シーケンスの種類によっても画像への影響は一定でなく,例えばB1-Focusingによる影響は,スピンエコーでは中心部の信号低下,グラジエントエコーではTRの選択によって中心部の信号上昇を招きます(図3)。

図3 a スピンエコーのRF分布( TR=300ms, α=90)
図3 a スピンエコーのRF分布( TR=300ms, α=90)
90°〜180°で送信したRFが,中心部ではそれよりも大きくなるため,スピンエコー信号は中心部で低下する。

図3 b グラジエントエコーのRF分布(TR=300ms, α=50)
図3 b グラジエントエコーのRF分布(TR=300ms, α=50)
50°で送信したRFが,中心部ではそれよりも大きくなるため,グラジエントエコー信号は中心部で低下する。ただし,選択するTRと組織のT1値によって挙動は異なる。

画像不均一の克服

これらの問題を克服する第一の技術は,TrueForm RFです。TrueForm RFは,2チャンネル送信制御をすることにより,被写体におけるRF強度分布のムラを最小にするよう,2つの送信電圧の強度と位相を部位ごとに最適な組み合わせにしています。また,この最適化によって,SAR(Specific Absorption Ratio)も従来のCP型送信よりも低くすることができます(図4)。
TrueForm RFによる2チャンネル送信制御に加えて,3T用の送信電圧調整(Adjust Transmitter)と均一化フィルタ(B1 Filter)が必要になります。3T用の送信電圧調整では,被写体中心部に必要な強度の電波が届いているかを,被検者ごとにチェックしてから撮像に入ります。B1 Filterでは,独自のアルゴリズムによって,画像のコントラストを失うことなく,B1分布のムラを補正します(図5)。

図4 a TrueForm RF によるRF均一化
図4 a TrueForm RF によるRF均一化
白線の交点(●)が従来のCP型送信。
TrueForm RFによる最適化ポイントは←のポイント。
2チャンネルRFの最適な組み合わせにより,
信号ムラをおよそ半分に抑えることができる。
図4 b TrueForm RF によるSAR低減
図4 b TrueForm RF によるSAR低減
白線の交点(●)が従来のCP型送信。
TrueForm RFによる最適化ポイントは←のポイント。
2チャンネルRFの最適な組み合わせにより,
腹部におけるSARを約10%低下することができる。

図5 B1 Filter の効果
図5 B1 Filter の効果
B1 Filter の適用により,画像のコントラストを低下させることなく,B1の不均一を補正することができる。

まとめ

TrueFormテクノロジーを搭載したMAGNETOM Verioは,複雑に絡み合っている画像不均一の要因1つ1つに対処することで,高い画質を確保しています。それだけでなく,今後想定される被検者からの要望を先取りした,将来を見据えたプレミアム3T装置と言うことができます。

●参考文献
1) Homogeneity Improvement Using A 2 Port Birdcage Coil ; ISMRM'07 abst. 1063; J. Nistler

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