シーメンス・ジャパン株式会社

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別冊付録

1.5T MAGNETOM ESSENZA
頭頸部領域における質の高い診断と検査効率の向上を図り地域医療のニーズに応える

医療法人社団水火会 もてき脳神経外科

医療法人社団水火会 もてき脳神経外科は2008年12月から,シーメンス社の1.5T MRI「MAGNETOM ESSENZA」を稼働させた。従来のMRIの更新として導入された同装置は,省スペースかつ優れた経済性を持ちながら,“アイソセンターマトリクスコイル”などの技術により,それまでの検査環境を大きく改善させている。さらに,MRIの静磁場強度が0.4Tから1.5Tに上がったことで,脳梗塞症例での拡散強調画像や認知症症例における海馬傍回の評価などの診断能が大きく向上した。介護福祉センターを併設し,地域医療を支えている同院において,MAGNETOM ESSENZAはどのようなメリットを生んでいるのか。その使用経験を報告する。

茂木元喜 院長
茂木元喜 院長
丸山智司 技師長
丸山智司 技師長
星野 学 統括マネージャー
星野 学 統括マネージャー

脳神経外科診療を中心に介護事業などで地域医療を支える

MAGNETOM ESSENZA (左から)監物琢実 総括アシスタントマネージャー  丸山智司 技師長  茂木元喜 院長  星野 学 統括マネージャー
MAGNETOM ESSENZA
(左から)
監物琢実 総括アシスタントマネージャー
丸山智司 技師長
茂木元喜 院長
星野 学 統括マネージャー

もてき脳神経外科は1995年,無床診療所として群馬県高崎市の現在地に開院した。脳神経外科をはじめ,内科,神経内科,リハビリテーション科を標榜し,茂木元喜院長が脳神経外科を担当するほか,循環器科と消化器科の専門医が非常勤で内科診療を行っている。その一方で,介護事業にも取り組み,診療所の隣に介護福祉センターを設立して通所介護やリハビリテーション,短期入所,訪問看護などのサービスを提供している。
また,同院では,脳ドックのほか,各種ドックを実施しており,疾患が見つかった方や受診した急性期の患者さんは,地域医療連携登録医となっている国立病院機構高崎病院や医療法人社団日高会日高病院,前橋赤十字病院といった病院に紹介している。さらにリハビリテーション期や慢性期の患者さんを介護福祉センターで受け入れ,看取りまでのケアを行い,地域住民からも厚い信頼が寄せられている。
このように,地域医療を支える同院では,クリニックではあるがモダリティの充実に力を注いでいる。茂木院長は開業にあたり,「脳神経外科を受診する患者さんは,画像診断に対するニーズが高い」と判断し,MRIのほか,CTや内視鏡なども配備した。また,医療はサービス業であるという考えから,予約制ではなく,即日検査・診断を行うようにしている。

MAGNETOM ESSENZA採用の決め手は省スペースと経済性

同院が最初に導入したMRIは,永久磁石型の0.2TのオープンMRIで,その後0.4TのオープンMRIへと更新された。設置スペースが限られていたため,これまでMRI導入時には装置を搬入してから周囲をシールドで取り囲む方法で,できるだけスペースを抑えるよう工夫されてきた。しかし,徐々にMRI室の老朽化が進み,シールドに不具合いが出始め,撮像した画像にノイズが生じるようになった。また,茂木院長は,「装置の進化に合わせて,その時々のレベルを維持していないと,自信を持って診療することはできない」との考えから,最新のMRIに更新し,併せてMRI室のシールドも施工し直すことに決めた。
更新に向けて,具体的な検討を開始したのは2008年の初夏である。茂木院長は,新機種の選定条件として,「MRAの画質,例えば,脳血管の狭窄や閉塞部位の未破裂脳動脈瘤をどの程度描出できるかを重視しました。また,脊椎の病変部の描出能も重要な選定ポイントでした」と説明する。また,新たに導入するMRIは,高画質であることはもちろん,導入時のイニシャルコスト,稼働後のメンテナンスや冷媒用のヘリウムなど,ランニングコストが低く抑えられることに加えて,従来の設置スペースに納まることも必須条件となった。
そのような時に,医学雑誌などで情報収集を行っていた茂木院長の目に留まったのが,シーメンスの「MAGNETOM ESSENZA」であった。MAGNETOM ESSENZAはTimシステムを搭載し,ハイクオリティとコストダウンの両立をコンセプトに開発されたMRIである。キャビネットのコンパクト化を図ったことで,機械室の面積を25%減小させたほか,効率性を追究した新たな冷却機を採用したゼロ・ボイルオフ・マグネットにより,従来の1.5T装置よりも大幅にランニングコストを削減することができる。実際にシーメンスとの交渉にあたった星野 学統括マネージャーは,「1日5件の検査を行えば,コスト面はクリアできるということでした。それを受けて私たちも,保守点検などのランニングコストなどを試算して導入可能と判断し,MAGNETOM ESSENZAを採用しました」と説明している。

診察室でのモニタ読影の様子
診察室でのモニタ読影の様子
MAGNETOM ESSENZAのコンソール
MAGNETOM ESSENZAのコンソール
鏡を装着したヘッドコイル
鏡を装着したヘッドコイル

容易なポジショニングなどにより検査の効率と質を向上

2008年12月から稼働を開始したMAGNETOM ESSENZAでは現在,症状や検査状況により頭部,頸部,頭頸部全体を撮り分けている。40〜50歳代の症例の場合,ルーチン検査としてT1強調像,T2強調像,MRAを撮像し,高齢者の場合,FLAIRを追加する。さらに,脳梗塞が疑われる場合は,拡散強調画像(DWI)を加えるほか,MRIが1.5Tになったことで,認知症が疑われる症例については,早期アルツハイマー型認知症診断支援システム「VSRAD」(エーザイ提供)による画像解析を行うことが可能となった。
また,MAGNETOM ESSENZAでは,ルーチン検査の場合,MRAも含めて15分以内に撮像を終えることが可能である。前機種では,MRAはルーチンでの撮像を行っておらず,追加した場合,30分弱の時間がかかっていた。このようなスループットの向上は,検査効率の向上につながり,患者さんの負担軽減にも貢献する。
患者さんのポジショニングが容易になったことも,大きなメリットであるが,それを実現したのが,MAGNETOM ESSENZAに採用されたアイソセンターマトリクスコイルである。これは,Timの技術をもとに開発されたもので,通常のMRIと異なり,ガントリの中心部に9つのエレメントから構成されるマトリクスを配している。そのため,常に磁場中心での撮像が可能となった。さらに,部位別のプロトコルが用意されているため,コンソール上で設定さえすれば,寝台が移動して,自動的にFoVの中心に位置合わせをする。丸山智司技師長は,「撮りたいところにどんどん自動的に位置を合わせてくれ,まるでCTのようです。ワンタッチで自動的にできるようになったことで,検査効率は大きく向上しました」とその効果を説明する。
このほか,同院は,認知症の高齢者や小児の患者さんなど,撮像中に体動が生じやすい検査も多い。そのような症例に有効なのが,体動補正用のアプリケーションである“syngo BLADE”である。丸山技師長は,「前機種のときには,体動によるアーチファクトが出ていたものが,MAGNETOM ESSENZAになって,BLADEを使用することできれいに撮像できるようになりました。現在では,ほぼすべての症例で使用しています」と述べている。画像再構成時間が若干延長するものの,撮り直しが減少し,安定した画質が得られるようになった。検査を担当する技師に安心感を与えるとともに,効率的な検査にも寄与している。
一方,MAGNETOM ESSENZAは,ガントリ長145cmのショートマグネットを採用しており,患者さんの精神的な負担は大分軽減しているものの,オープンMRIほどの開放感は得られない。そこで,ヘッドコイルに鏡を装着し,撮像中に足下が見えるようにすることで,患者さんの不安を取り除くようにしている。これにより,検査が受けられないというケースはほとんどないという。

脳梗塞の早期診断や認知症の鑑別に高い有用性

MRI検査の効率を向上し,質を改善したMAGNETOM ESSENZAであるが,その画質についても高い評価を得ている。茂木院長は,「T1強調像,T2強調像は申し分のない画像です。MRAは,前機種では解像度が低く,高齢者には適用できないため若年層の症例だけ行っていましたが,MAGNETOM ESSENZAでは脳血管の描出能が向上し,ルーチンで撮像を行っています」と述べている。また,脳梗塞が疑われる症例には,拡散強調画像を撮像しているが,これもMAGNETOM ESSENZAに更新してからである。現在では,ほとんどの脳梗塞症例で拡散強調画像を撮像しており,茂木院長もきわめて有用性が高いと評価している。
これについては,丸山技師長も,「前機種ではパラメータの設定などが難しく時間がかかっていましたが,それが1回,1分程度の時間ですむようになり,早期診断につながった症例もあります」と付け加えている。脳血管疾患の早期診断・治療の重要性が高まる中,拡散強調画像がルーチンで撮像できることで診断能が上がり,患者さんを速やかに連携先医療機関に送れることは,地域医療を支えるという使命を果たす上で,大きな意義を持つと言える。
このほか茂木院長は,アルツハイマーなどの認知症疾患における有用性も評価している。同院は,介護福祉センターが併設されていることもあり,認知症の検査が多い。茂木院長は,「アルツハイマー病の症例では,VSRADを用いた海馬傍回の灰白質容積の計測を行っています。また,レビー小体病の症例も多いのですが,この診断にもMRIが有用です」と説明している。
一方,丸山技師長は,“Spine Composing”機能を高く評価している。このアプリケーションは,解剖学的に連続する画像を自動的につなぎ合わせるもので,より広範囲の領域の全体像を把握するために有用である。同院では,例えば,頸椎,胸椎,腰椎を3回に分けて撮像し,それをつなぎ合わせて1画像として見られるようにしている。これにより,診断時にPACSから1画像ずつ呼び出さなくても一覧でき,患者さんにもわかりやすく説明できるという。この点も,地域医療を担う同院にとっては,大きなメリットである。

地域のニーズに応えるべくMRIのさらなる活用を

すでに,同院の診療に大きく貢献しているMAGNETOM ESSENZAであるが,茂木院長は,さらなる期待を込めて次のように語る。
「拡散強調画像やMRAのさらなる画質向上を望みます。特にMRAは,もっと血管撮影の画質に近づくことをめざしてほしいです。また,認知症の患者さんの検査を行いやすくするために,さらなる撮像時間の短縮にも期待します」
茂木院長がこのように望むのには理由がある。同院では,近隣の診療所からの紹介検査も多く,例えば耳鼻科からの突発性難聴やメニエール症候群症例における聴神経鞘腫,眼科から乳頭浮腫などの頭蓋内占拠性病変の否定目的の検査依頼による撮像を多く行っている。また,患者さん自らが婦人科領域のMRI検査をしてほしいと来院することもあるという。このような医療機関,地域住民からのニーズにこれまで以上に応えるためにも,さらにMAGNETOM ESSENZAを活用していくことが期待される。

(2009年8月7日取材)

動静脈奇形
27歳,男性。AVM(動静脈奇形),無症候性。
a:T2WI,TR/TE:4500/90,スライス厚:6mm
b:T1WI,TR/TE:430/8.4,スライス厚:6mm
c:3D-MRA,TR/TE:28/7.15,SLAB:7
d:3D-MRA,TR/TE:28/7.15,SLAB:7

早期脳梗塞
82歳,男性。急性期脳梗塞発症48時間。左麻痺,構語障害にて当院を受診。
a:T2WI(BLADE),TR/TE:4500/90,スライス厚:6mm
b:FLAIR(BLADE),TR/TE:8000/120,スライス厚:6mm
c:DWI,TR/TE:4000/99,スライス厚:6mm
d:ADC-Map

全脊椎
47歳,男性。ボランテアスキャン。
a:T2WI,TR/TE:4000/87,スライス厚:5mm
b:T1WI,TR/TE:450/12,スライス厚:5mm

医療法人社団水火会 もてき脳神経外科
医療法人社団水火会 もてき脳神経外科
〒370-0077 群馬県高崎市上小塙町567
TEL 027-343-7788
http://www.suika.or.jp/

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