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Technical Note

2011年8月号
超音波エラストグラフィの技術と特徴

US−Real-time Tissue Elastographyの最新技術

香西和久
マーケティング本部プロダクト企画部

“Real-time Tissue Elastography”は,組織の硬さを画像化する技術で,2003年に日立が世界で初めて製品化した。現在では,乳がん検診をはじめとした,日常検査でも使用されるようになってきている。
本稿では,Real-time Tissue Elastographyの最新技術について解説する。

■Real-time Tissue Elastography

Real-time Tissue Elastographyとは,超音波診断装置で観察中の関心領域(ROI)内の組織の相対的な硬さを,リアルタイムに画像化する技術である。軽い圧迫を繰り返し行うことで,生体内の組織の歪みを高速演算し,リアルタイムにカラー表示をする。
力を加えたときに軟らかいものであれば,大きな変形を生じるが,硬いものであればほとんど変形しないという特性を応用し,その変形の程度を色で表わすことができる。周囲よりも硬い部分は,青く表示される。

■Strain Graph

“Strain Graph”は,組織の歪みの時間変化を表示したものである(図1)。リアルタイムに圧迫の状態をグラフ表示することにより,圧迫速度,圧迫周期をリアルタイムに確認できる。グラフが安定するように圧迫を調整することで,より安定したElastographyの描出をサポートする。また,フリーズ後にはグラフを見ながら画像を選択することも可能である。
Strain Graphの波形解析により,安定圧迫中のElastographyを自動的に選択できる機能を新たに搭載した。これにより,画像選択時のワークフローの向上が期待できる。

図1 Strain Graph
図1 Strain Graph

■Strain Ratio

“Strain Ratio”では,Elastographyにおいて,任意の2か所の歪みの比を数値化する(図2)。乳腺領域では,脂肪領域(Fat)と関心領域 (Lesion)の歪みの比率(FLR:Fat Lesion Ratio)を求めることができる。脂肪組織を基準とした歪みの比率を数値化することで,より客観的なデータを診断現場に供与することが可能であり,組織性状の研究などへの応用が可能である。
最近の研究によれば,良性組織ではFLRは低値を示し,悪性組織ではFLRは高値を示すことより,良悪性鑑別がより簡便に行える可能性が報告されている。今後,カットオフ値の設定により,腫瘍の良悪性鑑別診断の基準の一助になるものと考えられている。

図2 Strain Ratio
図2 Strain Ratio

■Strain Histogram計測

Strain Histogram計測は,ROI内の任意に指定された領域の相対歪み値のヒストグラム(頻度分布のグラフ)を表示する(図3)。また,テクスチャー解析を行うことで,Elastography画像の特徴量を算出する。
これにより,より客観的な評価が可能となることが示唆されており,肝臓領域などでの有用性が期待されている。

図3 Strain Histogram計測
図3 Strain Histogram計測

■Real-time Virtual Sonography(RVS)との併用

“Real-time Virtual Sonography(RVS)”は,超音波画像と同一断面のCT/MR/USのスライス断面をリアルタイムに並列表示する機能である(図4)。プローブに取り付けた位置センサの情報を用い,あらかじめ取得したボリュームデータから,超音波画像と同一断面のmulti-planar reconstruction(MPR)画像をリアルタイムに再構成する。
RVSと併用することで,Elastographyの可能性がさらに広がるものと期待されている。

図4 乳腺MR-RVS+Real-time Tissue Elastography
図4 乳腺MR-RVS+Real-time Tissue Elastography

■4D Elasto

日立では,世界に先駆けて,リアルタイムにElastographyを3D表示する機能“4D Elasto”を超音波診断装置に搭載した(図5)。これは,より進化した“Ultra BEU(Ultrasound Broadband Engine 2nd Generation)”の高い演算能力により実現した。
プローブを機械的に揺動させることで,歪みのボリュームデータをリアルタイムに取得し,組織の硬さ情報を画像化する。ボリュームデータから,硬い領域と,軟らかい領域を個別にレンダリング処理することで,立体感を創出している。

図5 4D Elasto
図5 4D Elasto

*Real-time Tissue Elastography,Real-time Virtual Sonography,Ultra BE,Ultra BE/Ultrasound Broadband Engineは株式会社日立メディコの登録商標です。

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