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別冊付録

ユーザー訪問

東邦大学医療センター 大橋病院
ECHELON Vegaによる腹部造影検査への取り組み
高機能アプリケーションTIGRE,RADARを検証

1992年に「MRP-7000」を導入以来,日立メディコ社製の永久磁石型MRIを活用し続けてきた東邦大学医療センター大橋病院は,2008年4月,それまで稼働していた0.3TオープンMRI「AIRIS-U」の更新として,同社の超電導型1.5T MRI「ECHELON Vega」を導入した。同院はこれまで,MRIの使用経験を日立メディコ社にフィードバックすることで装置性能の向上に貢献しており,ECHELON Vegaにおいても,脂肪抑制パルス併用3D高速T1強調RFスポイルドSARGEシーケンス“TIGRE(T1 weighted GRadient Echo nature of the sequence)”を用いたGd-EOB-DTPA造影MRIの研究などに取り組んでいる。ECHELON Vegaによる診療の実際と臨床研究の現状について,放射線科の五味達哉准教授を中心にお話をうかがった。

五味達哉 准教授
五味達哉 准教授
左から富田一彦技師,五味達哉准教授, 中野晃枝副技師長,服部尚史技師,原田理映技師,中井信彰技師
左から富田一彦技師,五味達哉准教授,
中野晃枝副技師長,服部尚史技師,
原田理映技師,中井信彰技師
ECHELON Vega
ECHELON Vega

地域中核病院の役割を担いつつ高度医療と臨床研究に取り組む

コンソール
コンソール

スキャンパラメータリスト
スキャンパラメータリスト
スキャンパラメータが一覧表示されるため,数値の変更などが行いやすいほか,サゼッション機能によって設定可能な数値の範囲が表示され,比較的簡単に操作できるという。

東邦大学医療センター大橋病院は1964年,同大学の2番目の附属病院として開設された。診療,教育,研究という大学病院としての役割を果たしつつも,地域密着型の急性期医療の提供に力を注いでおり,1日約1300人に上る外来患者のうち,約40%が世田谷区から,約15%が目黒区から,約10%が渋谷区からと,近隣からの受診が約65%を占める。また近年,病診連携のさらなる強化をめざし,IT化や,スムーズな紹介,逆紹介が可能なシステム作りを推進。同時に,時代とともに変化する医療ニーズに応えるため,新たに,女性医師による女性専用外来,総合健康相談センター,リウマチ膠原病痛風センター,慢性腎疾患心血管合併症治療センター,肺がんセンター,乳がんセンターなどを次々と開設して診療体制の再構築を行った。こうした取り組みの結果,2009年度の統計では,5年前と比較して外来新患者数が15%,他院からの紹介患者数が18%も増加した。

MRIを更新し,予約待ち削減と高まる検査ニーズへの対応を図る

一方,放射線科においてはCTとMRIがそれぞれ2台ずつ稼働していたが,検査数は増加傾向にあり,特にMRIについては検査待ちが約2か月に及ぶなど,ニーズに十分に応えられない状況が続いていた。2台のMRIのうち1台は,1992年に導入されたMRP-7000で,それを更新したオープンMRI AIRIS-Uともに,日立メディコ社製の永久磁石型0.3T MRIであり,もう1台は,1997年に導入された他社製超電導型1.5T装置だった。このときの状況について,五味准教授は次のように述べている。
「当院では基本的に,スクリーニングはAIRIS-Uで,精密検査は1.5T装置で行っていましたが,大学病院ですので,どうしても精密検査の依頼が多く,1.5T装置に集中してしまいます。そのため,検査をどのように振り分けるかが問題でした」
そこで,ちょうどAIRIS-Uが更新時期を迎えていたこともあり,2007年には,新しいMRIは1.5T装置を導入することが決定された。装置の選定は甲田英一院長(放射線科教授)を中心に,五味准教授や他科の医師,診療放射線技師らで構成された機器選定委員会を組織し,ちょうど同年に発売されたばかりのECHELON Vegaも含め,国内でMRIを販売する5社の装置はすべて検討対象となった。画質や機能,コストパフォーマンス,サービスなど,あらゆる面が考慮されたが,加えて,同院の場合は設置面積も重要な検討課題となった。同院の敷地には新しいMRI室を増築する余裕はなく,また,1.5T装置は旧装置よりも広い設置面積を要し,そのままでは入れ替えも不可能だった。そのため,新しいMRI室は読影室などを改装して作ることとなったが,十分な面積は確保できなかった。
これらの点を踏まえて検討を重ねた結果,2社の装置が候補となった。最終的にECHELON Vegaが選定された理由について,五味准教授は,「ECHELON Vegaは,当時販売されていた装置の中ではガントリ長が160cmと短く,用意したスペースに納まるコンパクト性が評価されました。画質や機能についても,柏工場や実際の稼働施設に見学に行き,申し分ないと判断しました。1.5T装置としては後発ではありますが,15年以上にわたり同社の装置を使い続けた経験からくる信頼がありました」と述べている。

ECHELON Vegaにより検査時間が短縮し,検査数も増加

2008年4月にECHELON Vegaを導入後,同院では2台のMRIで1日に約45件の撮像を行い,その約半数をECHELON Vegaが担っている。ECHELON Vega導入前の2007年度には,2台のMRIで年間約8700件の撮像を行っていたが,検査待ちは2か月に及び,他院に検査を委託することも多かったという。しかし,ECHELON Vegaでは撮像時間の短縮化により,2009年度には撮像件数が約1万600件にまで増加。検査待ちも2〜4週間へと大幅に短縮された。
また,検査数を増やすためには操作性の良さも重要となる。ECHELON VegaではコンソールがWindowsベースとなりAIRIS-Uとは操作性が異なるものの,同院のMRI担当の5名の技師全員が短期間でスムーズに検査できるようになったという。服部尚史技師は,「ECHELON Vegaでは,スキャンパラメータがコンソール上に一覧表示されるので,数値の変更が行いやすいです。例えば撮像枚数を変更すると,TRやTEなどの数値の候補が自動的に表示されるため,操作は比較的簡単です」と評価している。このほか,スキャン中に患者さんがブザーを鳴らした場合,通常はスキャンを中止しなければならないが,ECHELON Vegaでは“ポーズ機能”によって一時停止が可能であり,問題がなければそのまま撮像が続けられる点も無駄な撮り直しの防止につながっている。
一方,装置の更新によってガントリがオープン型からトンネル型に変わることで,閉所恐怖症の患者さんに対応できなくなることが懸念される。しかし,中野晃枝副技師長は,「ECHELON Vegaはガントリ長が短いので,ガントリの後ろ側から患者さんに直接声をかけることができますし,コイルを通常と反対向きに設置できるので,撮像部位によっては足側から検査することも可能です。そのため,閉所恐怖症の患者さんにも,予想以上に対応できています」と説明しており,患者さんにやさしい検査が実現できている様子がうかがえる。

腹部造影検査におけるTIGREのプラッシュアップに貢献

同院では現在,2台のMRIはどちらも全身の撮像に使用しているが,Gd-EOB-DTPA造影剤を用いた腹部造影検査については,全例をECHELON Vegaで撮像している。Gd-EOB-DTPA造影MRIの撮像は,同院では主に転移性肝がんの検索を目的に,造影CT検査後の精査として月に10件程度行っている。MRIでは,初めにT1強調像のin-phaseとout-of-phaseを撮像してから,Gd-EOB-DTPAを用いたdynamic MRIをTIGREで撮像し,その後,T2強調像,Heavy T2強調像,FLAIR,IR-SSFSE,脂肪抑制T2強調像,拡散強調像を撮像後に,肝細胞相(造影後15分)をTIGREで撮像する。
Gd-EOB-DTPA造影MRIをECHELON Vegaで行うのは,TIGREの研究が目的である。同院では長年,日立メディコ社製MRIのブラッシュアップに貢献してきており,ECHELON Vegaについても,同社と3か月に1回程度の意見交換の場を設け,さまざまな検討が行われてきた。TIGREの研究は,その一貫として行われているもので,研究成果について五味准教授は,「当初はコントラストがややつきにくく,アーチファクトが抑制しにくいこともありましたが,これらを改善した結果,より短時間での撮像でも,脂肪抑制効果の高い診断に十分な画像が得られるようになっています」と述べている。また現在は,Gd-EOB-DTPA造影MRI撮像時に息止めのできない患者さんに対して,RADAR(詳細は以下の技術解説を参照)を用いて自由呼吸下で造影MRI肝細胞相を撮像し,診断に有用な画像が得られるかどうかの研究が進められている。
さらに,RADARについては,通常はT2強調像のラディアルスキャンで撮像を行う骨盤領域を,RADARを用いたT1強調像にて撮像した場合の検討や,頭部の造影MRI撮像時にRADARを用いることで,小脳橋核部などの血流のアーチファクトを抑制できるかどうかの検討なども行われている。spin echo(SE)シーケンスでラディアルスキャンが行えるのは,現状では日立メディコ社のMRIだけであるため,その研究成果が待たれる。

■症例1:直腸がん術後
■症例1:直腸がん術後
肝S5にT2強調像で高信号域を認める(a ↓)。Gd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相(d ↓)では周囲より低信号である。これだけでは転移と嚢胞の鑑別は難しいが,Heavy T2強調像で強い高信号(b ↓),FLAIRで低信号となり(c ↓),転移ではなく嚢胞であることがわかる。同様の嚢胞が肝左葉外側区にも見られている(b ▼)。
a:T2 WI,FOV:370mm,TR/TE:3000/100,FA:90°,スライス厚:7mm
b:Heavy T2 WI,FOV:370mm,TR/TE:13000/100,FA:90°,スライス厚:7mm
c:FLAIR,FOV:370mm,TR/TE/TI:13000/100/2200,FA:90°,スライス厚:7mm
d:Gd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相,FOV:370mm,TR/TE:4.3/1.8,FA:12°,スライス厚:3mm


■症例2:上行結腸がん術後
■症例2:上行結腸がん術後
肝左葉外側区にT2強調像でリング状の高信号域が見られる(a ↓)。この病変は,Gd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相で周囲より低信号である(d ↓)。しかし,FLAIRで淡い高信号(b ↓),拡散強調像でも高信号(c ↓)となり,転移が疑われる。本症例は手術が施行され,病理検査で転移と診断された。
a:T2 WI,FOV:370mm,TR/TE:3000/100,FA:90°,スライス厚:7mm
b:FLAIR,FOV:370mm,TR/TE/TI:13000/100/2200,FA:90°,スライス厚:7mm
c:DWI,FOV:370mm,TR/TE:3000/52,FA:90°,b値:500,スライス厚:7mm
d:Gd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相,FOV:370mm,TR/TE:4.3/1.8,FA:12°,スライス厚:3mm


■症例3:子宮頸部嚢胞
■症例3:子宮頸部嚢胞
FSEで見られるアーチファクト(a →)がRADAR-FSE(b,c)で抑制されている。
a:T1WI,FSE,FOV:260mm,TR/TE:500/10,FA:90°,スライス厚:6mm,撮像時間:2:08
b:T2WI,RADAR-FSE,FOV:260mm,TR/TE:5000/117,FA:90°,スライス厚:6mm,撮像時間:2:45
c:T1WI,RADAR-FSE,FOV:260mm,TR/TE:500/10,FA:90°,スライス厚:6mm,撮像時間:1:58

ひとつでも多くの研究成果の臨床応用をめざす

ECHELON Vegaには,TIGRE,RADAR以外にもさまざまな高機能アプリケーションが搭載されているが,五味准教授は,それらについても順次検討を重ねていきたいと考えている。
今後の展開について,五味准教授は,「ワンボタンで撮像可能なMRSや乳腺MRIなどは,当然,今後の研究課題になってくると思います。RADARをはじめ,日常臨床に応用可能なこともまだまだあると思われますので,今後も研究成果をできる限りフィードバックしていくつもりです」と語り,新たな研究への意欲を見せた。

(2010年7月23日取材)

 

東邦大学医療センター大橋病院
東邦大学医療センター大橋病院
〒153-8515
東京都目黒区大橋2-17-6
TEL 03-3468-1251
http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/ohashi/radiology/index.html

Gd-EOB-DTPA造影MRIに活用されている技術

■TIGRE
TIGRE(T1 weighted GRadient Echo nature of the sequence)は,脂肪抑制パルスを併用した3D高速T1強調RFスポイルドSARGEシーケンスである。脂肪抑制効果を保ちつつ,ダイナミック評価に十分な時間分解能を得るために,脂肪抑制パルスを部分的に印加する。この脂肪抑制パルスに,RF照射不均一に強いプリパルスであるH-Sincを使用することで,広いFOVにおいても均一な脂肪抑制効果が得られる。肝臓や乳房の造影ダイナミック検査では,高い時間分解能と空間分解能が求められるが,TIGREはこれらの検査に適している。
■ RADAR
ラディアルスキャン技術は,位相エンコードの方向を回転軸状に走査することで,動きなどによる不要な信号結像を分散してこの影響を低減する技術であり,体動のアーチファクト抑制技術であるRADAR(RADial Acqisition Regime)は,ラディアルスキャンと通常のスキャンを組み合わせたハイブリッドタイプである。spin echo(SE)法,fast spin echo(FSE)法,steady state coherent GRE(BASG)法などに使用可能で,撮像断面やシーケンスの自由度が高い点が特長である。ハイブリッドラディアルスキャンでは,アーチファクトの抑制効果と,欠点である撮像時間延長のバランスをとることができ,メリットを最大限に活用することができる。RADARでは,体動アーチファクトの低減だけでなく,拍動や呼吸などの不随意な動きに起因するアーチファクトの低減にも有用である。

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