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別冊付録

TOPICS

スポーツ医療施設“JFAメディカルセンター”に「OASIS」の国内第1号機が導入
財団法人 日本サッカー協会がJヴィレッジ内に医療施設を開設

JFAメディカルセンター

広大な敷地に10面の天然芝フィールドと5000人収容のスタジアムが広がるJヴィレッジ
広大な敷地に10面の天然芝フィールドと
5000人収容のスタジアムが広がるJヴィレッジ
Jヴィレッジセンターハウス 取材当日には日本クラブユースサッカー選手権大会が開催されていた。
Jヴィレッジセンターハウス
取材当日には日本クラブユースサッカー選手権大会が開催されていた。

(財)日本サッカー協会(JFA)らが運営する福島県の“Jヴィレッジ”内に8月1日,スポーツ専用医療施設「JFAメディカルセンター」が開設された。トッププロの診療,スポーツ傷害の研究など高度な医療の提供と研究のほか,地域住民を対象とした通常の整形外科診療などを目的としており,画像診断装置は日立メディコの一般撮影装置,超音波診断装置に加え,超電導型1.2TオープンMRI「OASIS」の国内第1号機が導入された。同センター開設のねらいと,OASISに求められる役割について報告する。

●スポーツ医学の研究拠点JFAメディカルセンターが開設

JFAメディカルセンター
JFAメディカルセンター

福島県双葉郡楢葉町にあるJヴィレッジ。ここはJFA,福島県,東京電力らの出資によって1997年に設立された,日本サッカー界初のナショナルトレーニングセンターである。10面の天然芝フィールドと屋根付き練習場,5000人収容のスタジアム,フットサルコート,フィットネスクラブ,テニスコートを有し,サッカー日本代表チームのトレーニングはもちろん,中高一貫のサッカーアカデミーによる人材育成なども行っている。ラグビー,アメリカンフットボール,バスケットボール,バレーボール,陸上などにも対応し,一般の人もスポーツを楽しむことが可能で,年間約50万人が利用する。
このJヴィレッジ内に8月1日(土),JFAが運営するスポーツ専用医療施設「JFAメディカルセンター」が開設された。

●日立メディコをパートナーに迎え最先端のスポーツ医学研究を推進

同センターは,国際サッカー連盟(FIFA)のFIFA Goal Projectの助成金を受けて開設されたもので,(1) スポーツによる外傷・障害等に対する診療機能,(2) リハビリテーション機能,(3) スポーツ医科学の研究ならびにスポーツ傷害に関するデータセンター機能,(4) スポーツ医科学の教育機関機能,(5) アンチ・ドーピングの啓発拠点,(6) トップアスリートのスポーツ・メディシンの研究,(7) 子どもの発育・発達期におけるスポーツ傷害予防の研究を目標として掲げている。整形外科とリハビリテーション科を標榜し,午前中は一般の診察,午後はアスリートの予約診療を行う。日立メディコがオフィシャルメディカルパートナーを務め,同社の一般撮影装置,超音波診断装置のほか,整形外科領域の診断には欠かすことのできない高度な画像診断装置として,世界初の高磁場超電導型1.2TオープンMRI「OASIS」の国内第1号機が導入された。

OASIS搬入の様子
OASIS搬入の様子
建物裏口の搬入口よりマグネットが搬入された。
MRI室に搬入されたOASISのマグネット
MRI室に搬入されたOASISのマグネット
サッカーをテーマにしたラッピングが施されたOASIS
サッカーをテーマにしたラッピングが施されたOASIS
メディカルセンターのオープンを控え,7月25日(土)には,日立メディコのアプリケーション担当者によるコイルなどの取り扱い説明が行われた。

ボランティアの協力による撮像トレーニングと画質の調整
ボランティアの協力による撮像トレーニングと画質の調整

●優れた開放性と高画質を実現したオープンMRIの頂点「OASIS」

撮像時のポジショニングの自由度の高い日立メディコのオープン型MRIは,永久磁石型中低磁場装置がスポーツ医学の分野で活用され,実績が高く評価されている。それだけに,オープン型で,かつ高磁場での撮像が可能なOASISにも強い期待が寄せられている。
OASISは,開放角度270°,開口部の高さは44cmと高い開放性を誇り,負荷をかけたり,肘や膝を曲げた状態での撮像,痛みを感じる体勢での撮像など,スポーツ医学に有用と思われるさまざまな体位での撮像が可能である。閉所恐怖症や体格の大きな患者さんへのやさしさはもちろん,治療を伴う検査などでのアクセスも容易である。
超電導コイルは垂直磁場方式を採用し,正中から離れる手首や肩,膝などの四肢や関節でもきわめて高画質が得られるほか,中低磁場装置では難しかったガントリ内蔵コイルによるコイルレス撮像も可能となった。また,受信コイルについては,両足同時の撮像が可能なフットコイルや,スポーツ選手などのように体格の大きな患者さんにも対応可能なボディコイル,首や肩などの撮像が容易に行える高感度なソレノイドコイルなど,バリエーションも豊富だ。
アプリケーションは,動きのアーチファクト補正技術“RADAR”,パラレルイメージング“RAPID”など,超電導型1.5T MRI「ECHELON Vega」と同じものをすべてカバーしている。米国ではすでに約40台が出荷されており,高い評価が得られている。

OASISと,試験稼働に立ち合った関係者
OASISと,試験稼働に立ち合った関係者
右から,JFAスポーツ医学委員会の加藤晴康医師,茨城県立医療科学大学の島雄大介氏,同センター常勤医の三澤辰也医師,日立メディコアプリケーション部の加藤和之氏。
(島雄氏は,国立スポーツ科学センターの土肥美智子医師とともに,OASISを用いた研究を行う予定)

●スポーツ医学のさらなる発展に向け研究成果をアジアへ,そして世界へ

メディカルセンターの開設は,現在進行中の約300のFIFA Goal Projectの中でも初めての試みであり,FIFAも高い関心を示している。同センターで得られた研究成果は,国内だけでなく,アジアへ,そして世界中へと,広く発信されていくことだろう。

オープン初日を迎えたJFAメディカルセンター受付の様子
オープン初日を迎えたJFAメディカルセンター受付の様子
開設時には,壁にも装置と同様にサッカーをモチーフとしたイラストが飾られたMRI室
開設時には,壁にも装置と同様にサッカーをモチーフとしたイラストが飾られたMRI室
装置下の床はサッカーのフィールドをイメージして緑色にカラーリングされた。

(2009年7月25日取材)

JFAメディカルセンター
〒979-0513
福島県双葉郡楢葉町大字山田岡字美シ森8番
TEL 0240-25-1557 FAX 0240-25-1575

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三澤辰也 医師

成長期のスポーツ傷害の予防や早期発見にMRIを生かしたい。

JFAメディカルセンター
三澤辰也 医師

●JFAメディカルセンターにかかわるきっかけ

日本サッカー協会では,スポーツ医学委員会がサッカードクターセミナーを開催しています。これは,サッカーによる傷害や帯同ドクターに必要な医学知識,ドーピングなどについて学ぶものですが,私は地元がJヴィレッジのある福島県ということもあり,2005年のセミナーに参加しました。その後,育成年代の日本代表の帯同ドクターなどを務め,JFAアカデミーの選手たちの診察もさせていただきましたが,傷害のために長期休養を余儀なくされる選手もいました。そのような傷害を何とか予防できないかと考え,当センターの医師を希望しました。今後は,私が常勤医を務め,ほかにも数名の医師が非常勤として勤務し,診療や研究を行っていきます。

●JFAメディカルセンターに求められる役割

当センターの事業の目的には,スポーツ医療事業,研究・普及事業,地域医療事業の3つがあります。スポーツ医療事業には,アスリート向けのスポーツ外来,Jヴィレッジを含め,施設を活用したリハビリプログラムの実施,身体機能測定などがあります。研究・普及事業では,成長期のスポーツ傷害の予防や早期発見にMRIを生かしていきたいと考えています。また,地域事業では,一般外来だけでなく,巡回指導などを通して運動療法を取り入れた予防,治療等の普及活動を行っていく予定です。近隣の医療施設からのMRI撮像および読影依頼も受け入れ,地域医療に貢献できればと考えています。

●スポーツ医学におけるオープンMRIの意義

整形外科に多い疾患として,脊椎疾患や,膝や足関節の靭帯損傷,軟骨損傷,骨軟部腫瘍,半月板損傷などがありますが,いずれもMRIは必須です。また,スポーツ整形という観点で見ると,OASISはコイルの種類が豊富なので,部位別の高精細な画像が得られるという点で,期待できると思います。スポーツ選手は大柄な人が多いので,トンネル型では窮屈なこともありますが,オープン型ならストレスなく撮像できますし,閉所恐怖症の患者さんにも有用です。また,特殊な肢位での撮像やストレス撮像,キネマティックスタディなど,かなり臨床での応用が利きそうな印象があります。

●MRIを活用した今後の展望

スポーツ医学において最も重要なことは予防です。サッカー選手に多い傷害として,発育期の場合は足関節の外傷,膝のオスグッド病,腰痛などがあります。また成人では,肉離れや靭帯損傷などが増えてきます。こうした傷害が起こる前に予兆を発見し,ケアをして,できるだけスムーズな復帰につなげていくことはとても大事です。そのために,MRIをどのように生かしていくかということを,これから考えていきたいと思います。


加藤晴康 医師

早期に診断し適切な治療を行うには,高性能なMRIが必要です

(財)日本サッカー協会スポーツ医学委員会 立教大学コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科准教授
加藤晴康 医師

●JFAメディカルセンター開設のねらい

当センターは,JFAの田嶋幸三専務理事らの構想のもと,FIFA Goal Project,福島県,楢葉町の協力を得て実現しました。トップアスリートやスポーツ愛好家にとって医学的サポートは非常に重要であり,JFAにおいても,10年以上前からこのような施設の必要性が認識されていました。現時点では,特定の競技団体が運営する医療施設はほかになく,はじめての試みだと思います。
開設の目的は,例えば,サッカーによるけがの種類と頻度の調査,予防のための要因の情報収集や研究を行い,医学的な面からサポートし,同時にそれらの情報を全国に発信していくことです。特に,これからのサッカー界を担う若い選手が,けがで選手生命を絶たれるということのないようにしていくことは,とても重要です。同時に,トップアスリートについては,厳しいトレーニングで受けた負荷や疲労をどうやって早く取り除くかということなども,ひとつの大きなテーマです。その上で,最終的には,これらの研究成果を一般の方にもフィードバックしていきたいと考えています。

●OASIS導入の経緯

整形外科の診療やスポーツ医学の研究において,MRIは非常に強力な武器となります。そのため,当センターの設立にあたっては,できるかぎり高性能な装置を導入したいという考えがありました。最終的には,放射線科の専門医などに相談し,JFAがOASISの導入を決めたわけですが,実際の装置を目の前にして,私自身も非常にモチベーションが上がっています。

●同センターでの研究テーマとMRIを活用した将来展望

私は今後,非常勤で診療と研究を行います。研究テーマは,1つは,若い世代のスポーツ傷害に焦点を当て,MRIを活用してその原因を解明することです。多大な負荷がかかった場合,どのような要因により傷害につながるのか,そのメカニズムの解明や,身体にトレーニングの負荷がかかっても傷害につながらない身体づくりへの研究を行うことが予防として重要です。また同時に,実際に傷害を起こしてしまったときは,できるだけ早期に診断し,早期に適切な治療を行うことが重要ですので,そのためにも高性能なMRIが必要です。
これまで使用してきたトンネル型MRIでは,決まった体位でしか撮像できませんでしたが,OASISではさまざまな体位が可能なことは,非常に大きなメリットです。そうしたオープンMRIの特性を生かし,有益な情報を全国に発信していくことをめざしていきます。

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