GEヘルスケア・ジャパン
Technical Note

2008年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

PET-CT−GE最新PET-CT技術

川野 晶彦
MIセールス&マーケティング部

すでに腫瘍を中心に検査数が急増しているFDG-PETは,2002年から保険適用が開始された。さらには,2003年12月に当社が日本国内で初めてPET-CTを市場に投入したのを皮切りに,PET-CT装置の導入も急速に拡大し,2006年度の診療報酬改定では新たな適用が追加され,またPET専用機とは別にPET-CTというカテゴリーも新設されて保険適用も定められた。
FDG-PETにおいては,ホットスポットを見つけてそれがリンパ節なのか?それとも胃や腸管,尿管への生理的な集積なのか?その判別が難しいとされてきた。PET-CTが登場した当初のCT部の使い道は,どちらかと言うと吸収補正としての機能が重要視されていたが,次第に位置決め機能も注目されるようになってきた。
その結果,多列CTとの組み合わせが主流になり,PET-CTにおける画像融合技術も目覚しく進歩した。例えば,造影CTとPETによる3Dボリュームレンダリングでのフュージョンのような試みもされるようになってきている。また,GEではPET-CTで問題となってきた体動による影響を克服する方法として,「Motion Free PET-CT」に取り組んでいる。以下に,それらについて解説する。

■ FDG-PET(PET-CT)の保険適用状況

ここではまず現状の保険適用状況を簡単にまとめた。
【PET】
(1) てんかん,(2) 虚血性心疾患,(3) 肺がん,(4) 乳がん,(5) 大腸がん,(6) 頭頸部がん,(7) 脳腫瘍,(8) 膵がん,(9) 悪性リンパ腫,(10) 転移性肝がん,(11) 原発不明がん,(12) 悪性黒色腫,(13) 食道がん,(14) 子宮がん,(15) 卵巣がん
【PET-CT】
(1) てんかん,(2) 肺がん,(3) 乳がん,(4) 大腸がん,(5) 頭頸部がん,(6) 膵がん,(7) 悪性リンパ腫,(8) 転移性肝がん,(9) 原発不明がん,(10) 悪性黒色腫,(11) 食道がん,(12) 子宮がん,(13) 卵巣がん
実施上の留意事項については〈保発医0306001号〉を参照いただきたい。またPETで適用されているが,PET-CTで適用されていないものは,PET-CT検査を施行した場合PET検査として算定される。


■ PET-CTの画像融合技術

PET-CTのCT部の多列化に伴う画像融合技術の進歩についてはすでに述べたが,例えば,最近では大腸がん術前診断におけるFDGを用いたPET-CT検査の施行で,原発巣のステージング,リンパ節への転移,遠隔転移の有無などを診断することにより治療方針を決定するとともに,同時に腹部CT angiographyを施行し,3Dフュージョンすることによって局在するFDG集積部周囲の栄養血管を抽出・確認し,手術の安全性を高めるといったことにも利用されている。さらには,Virtual Colonoscopy検査を施行することにより,大腸の走行とその位置関係を確認する検査も行われている。
GEでは,画像診断領域における医療用ワークステーションおよびそのアプリケーションソフトを自社開発しているが,こうした3DボリュームレンダリングでのCTとPETのフュージョンおよび各種処理は「AdvantageWorkstation VolumeShare2」によって簡易に行うことができる。
また,2007年12月に循環器領域での使用を主ターゲットとした最新の64列PET-CT装置「Discovery VCT Elite」をリリースしたが,CT部の検出器幅が従来の16列CT(20mm)の2倍(40mm)になっていることから,撮影スピードが著しく向上したため腹部領域においてもより広範囲に短時間での撮影ができ,また,スライス厚も最薄0.35mmとなっているため抹消血管に対してもより細かい検査が可能となる。FDG-PETとの相乗効果により,PET-CTの腹部領域における新たな活用法が期待されるところである。


図1 AdvantageWorkstation VolumeShare2による3Dボリュームレンダリングでのフュージョン処理
図1 AdvantageWorkstation VolumeShare2による3Dボリュームレンダリングでのフュージョン処理

■ Motion Free PET-CT

PET-CTの開発にはハードそのもの,または最近であれば3D-OSEM(当社であればVUE Point Plus)に代表される画像再構成の開発が思い当たるが,GEではこうした開発に取り組むと同時に,臨床の現場で真に有用なPET-CT画像を提供するという目的から,“体動の影響によるPETとCTの位相のミスマッチ”に起因する位置ずれ,および吸収補正の精度の問題解決をめざし,Motion Free PET-CTに取り組んでいる。
以下では,主に呼吸による影響をテーマとしているが,呼吸の動きは腹部領域の臓器にも影響を与えており,無視できないものと考える。

1.Average CT吸収補正
PET-CTにおいては,吸収補正用CTの撮影が自然呼吸下で行われていることが多いため,特に呼吸による臓器の動きによってPETと吸収補正用CTの間で位相にミスマッチが生じやすく,過補正や補正不良などの画質の劣化につながってしまう場合が見受けられる。例えば,肝臓におけるFDGの集積が肺野下部にあるように誤って見える場合などがそうである。
GEでは,Average CT吸収補正という手法を使うことにより,より精度の高い吸収補正を可能にし,アーチファクトの低減,定量精度の向上を実現している。


図2 Average CT吸収補正
図2 Average CT吸収補正

2.4D PET-CT
加えて臓器の動きは,その部位または周辺にあるFDGの集積にボケを生じさせるため的確にとらえることを困難にし,PET-CTのイメージクオリティや定量性を劣化させる。GEのPET-CTでは,Varian社製のRPMシステムとの連携を可能にしており,Gate(4D呼吸同期)収集技術を駆使して動きのある微小な集積の描出ができる。また,CT吸収補正にも4Dのデータを用い,PETとCTを同じ位相下にて吸収補正を行うPhase Matched CT吸収補正により,イメージクオリティならびに定量性の向上を実現している。
さらには,こうした4Dデータを利用した放射線治療計画における高精度な輪郭の抽出,または4D治療計画を可能とし,4D放射線治療との連携に取り組んでいる。


図3 4D-PET
図3 4D-PET
図4 Advantage Workstationにおける4分割画面例
図4 4D PET-CT Phase Matched吸収補正

以上,GEのPET-CTの腹部領域における最新技術の利用について紹介してきたが,特にMotion Free PET-CTについてはDiscovery ST Eliteシリーズ以降において使用可能となっている。
今後は収集時間の短縮化などが求められるが,このような課題がクリアになれば全症例でのGate収集というようなルーチンにおける臨床使用も現実味を帯びてくるものと思われる。こうした臨床的有用性を視野に置いたGEの画像処理技術,アプリケーション技術の開発は,PET-CT本来の潜在能力を引き出し,さらなる発展につながるものと信じている。


【問い合わせ先】 MIセールス&マーケティング部 TEL 0120-202-021