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healthymagination series 2012
Advanced Report No.3

第71回日本医学放射線学会総会 ランチョンセミナー3
「次世代テクノロジーによる心臓CTのインパクト」知らなきゃ損!─進化する心臓CT

町田 治彦
町田 治彦
東京女子医科大学 東医療センター放射線科
1997年 三重大学医学部卒業。同年4月 東京女子医科大学放射線科入局。2004年 東京女子医科大学大学院卒業。2006年 東京女子医科大学東医療センター放射線科配転, 2009年10月より同科講師。

JRC2012が2012年4月12日(木)〜15日(日)の4日間,パシフィコ横浜会議センターにおいて開催され,13日には,第71回日本医学放射線学会総会ランチョンセミナー3(GEヘルスケア・ジャパン共催)が企画された。「次世代テクノロジーによる心臓CTのインパクト」をテーマに,GEヘルスケア・ジャパンの平本卓也氏が「Discovery CT750HD心臓CTへの新しいアプローチ」,東京女子医科大学東医療センターの町田治彦氏が「知らなきゃ損!─進化する心臓CT」と題して講演した。ここでは,町田治彦氏の講演内容を抜粋して掲載する。


冠動脈病変の非侵襲的診断法において,冠動脈CTはいまや,負荷SPECTと同等の評価を得るまでになった。ただし,冠動脈CTで判定困難なものとして,(1) モーションアーチファクト,(2) 末梢の細い枝の狭窄と径3mm未満のステント,(3) 高度石灰化とプラークの性状評価の3つが挙げられる。すでに(2)については,High Definition CT(HDCT)による空間分解能の改善が図られている。さらにこの度,(1)の対策として,時間分解能の改善を実現する「SnapShot Freeze」が,(3)の対策として,ビームハードニング効果の低減や物質密度(弁別)画像を実現する「GSI Cardiac」が薬事承認され,「Discovery CT750 HD」で使用可能になった。その初期使用経験を報告する。

■SnapShot Freeze

冠動脈における至適心位相は,心拍数が60bpm以下の場合は三枝とも拡張中期のみに収まるため,被ばくを合理的に減らすことが可能になる。しかし,61bpm以上(特に,81bpm以上)になると,拡張期または収縮期のみではモーションアーチファクトが生じて評価が困難になるため,両方のデータが必要になり,被ばくも増加せざるを得ない。
SnapShot Freezeは,冠動脈の軌跡・速度を検出して動きを補正するため,モーションアーチファクトを低減することが可能であり,冠動脈CTの判定困難例の減少や診断能の向上が期待できる。心拍数が61bpm以上の場合でも,拡張期または収縮期のみのデータで十分となり,例えば,拡張期のみにX線を照射するプロスペクティブ心電図同期アキシャル撮影の適用が増加し,被ばくを低減することも可能となる。
冠動脈は三次元もしくは四次元的に複雑な動きをするため,低心拍数症例でもモーションアーチファクトが発生する危険性はあり,SnapShot Freezeは冠動脈CTにとって大きな福音になることが期待される。

●高心拍症例におけるモーションアーチファクトの除去(症例1)
図1は,心拍数が72〜76bpmと比較的高心拍の症例で,レトロスペクティブ心電図同期ヘリカル撮影を行ったボリュームレンダリング画像である。SnapShot Freezeの有無で比較すると,SnapShot Freezeを使用することによって,特に右冠動脈(RCA)の動きが良好に抑制されているのがわかる(図1b)。
図2は,症例1のアキシャル像だが, SnapShot Freeze(b)により,モーションアーチファクトが大幅に低減されている。
症例1の冠動脈造影(図3左)では,RCAにわずかな狭窄が認められる。SnapShot Freezeを用いてモーションアーチファクトを低減することにより,冠動脈CTの短軸像(図3右)でプラークが描出され,わずかな狭窄も診断可能となる。

図1 症例1:ボリュームレンダリング画像
図1 症例1:ボリュームレンダリング画像
SnapShot Freeze(b)により,右冠動脈(RCA)の 動きを良好に抑制している。
図2 症例1:アキシャル画像
図2 症例1:アキシャル画像
SnapShot Freeze(b)により,モーションアーチ ファクトが低減されている。
図3 症例1:冠動脈造影画像
図3 症例1:冠動脈造影画像
SnapShot Freezeにより,短軸像(右)でプラークが認められる。
 

●ステント内再狭窄症例におけるモーションアーチファクトの低減(症例2)
図4は,ステント内再狭窄症例で,CT撮影時に46〜70bpmまでと,心拍数がかなり変動した例である。SnapShot Freezeなし(a)の場合,あたかもステントは変形しているように見えるが,SnapShot Freezeあり(b)では,冠動脈もステントもきれいに描出されており,説得力のある画像として評価できる。

図4 症例2:ステント内再狭窄症例
図4 症例2:ステント内再狭窄症例
SnapShot Freeze(b)では,aの
部分のモーションアーチファクトが低減されている。

●高心拍症例(症例3)
図5は,心拍数が82〜92bpmの高心拍症例で,レトロスペクティブ心電図同期ヘリカル撮影を行った。上段が左回旋枝(LCX),下段が右冠動脈(RCA)だが, SnapShot Freezeあり(b)ではLCXの部分に良好な造影効果が認められ,特に有意狭窄がないこともわかる。RCAも特に問題はなく,良好に評価できる。

図5 症例3:高心拍数症例
図5 症例3:高心拍数症例
SnapShot Freeze(b)では,回旋枝の
部分に造影能が認められ,右冠動脈も良好に評価できる。

■GSI Cardiac

デュアルエナジーイメージングは,80kVpと140kVpの2つの異なるX線エネルギーで撮影し,例えばヨード造影剤や骨,軟部組織などを分離した物質密度(弁別)画像を得ることができる。また,任意の比率で合成することで,40〜140keVの単色X線等価画像を作成することも可能である。
Discovery CT750 HDではGSI(Gemstone Spectral Imaging)という名称で,80kVpと140kVpを高速に切り替える1管球でのデュアルエナジーイメージングを実現している。これまでGSIは,心電図同期に対応していなかったが,今回新たに,心電図同期対応の「GSI Cardiac」が薬事承認されたことで,心臓CTでもデュアルエナジーイメージングを行うことが可能となった。これにより,ビームハードニング補正や,単色X線等価画像(monochromatic imaging),さらに,物質密度(弁別)画像〔material density (decomposition) imaging〕を心臓CTで実施することができる。
例えば,石灰化やステント留置症例では,ビームハードニングアーチファクトの低減により診断可能となる症例が増えると予想される。また,物質密度(弁別)画像により,高度石灰化症例でも石灰化を除去することで,狭窄率の正確な評価が可能となる。さらに,鋭敏かつ正確な脂質の検出ができれば,急性冠症候群における不安定プラークの評価も期待できる。

●ビームハードニングアーチファクトの低減
GSI Cardiacによって,ビームハードニングアーチファクトがどれだけ低減されるか,ファントムで実証した。図6左上の画像の青い丸がバックグラウンド,白い楕円が心臓の右心室と左心室,右下の白丸が下行大動脈を模擬しており,造影剤が充填されている。グリーンとオレンジの部分は左心室と下行大動脈に挟まれた部分で,オレンジ部分は心筋虚血が生じて低吸収になっている。下の画像の左側が通常のシングルエナジーCT画像,右側がGSI Cardiacの画像である。で示しているところを見ると,明らかにシングルエナジーCT画像が黒く低吸収になっていて,ビームハードニングアーチファクトが強いことが認められるが,右のGSI Cardiacの画像では,大幅に低減されている。棒グラフでもビームハードニングアーチファクトが低減されていることが,定量的に立証されている。

図6 ファントムにおけるGSI Cardiacによる心筋灌流画像の評価
図6 ファントムにおけるGSI Cardiacによる心筋灌流画像の評価

■まとめ

SnapShot Freezeは,冠動脈CTにおけるモーションアーチファクトの低減に有用と考えられる。
GSI Cardiacは,高度石灰化やステント留置症例などで,ビームハードニング効果の低減や冠動脈内腔の描出改善に有用と思われる。
また,プラークの性状解析や心筋灌流評価にも大きな期待が寄せられる。


(インナービジョン誌 2012年6月号掲載)

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