Vol.11 躯幹部領域のトピックス −3T MRIを中心に MRIの敵・脂肪を制す。3T装置を生かす最新アプリケーションの有用性を検証する。

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第36回日本磁気共鳴医学会大会が9月11日〜13日の3日間、旭川市・市民文化会館において開催された。11日(木)に行われたGEYMS共催のランチョンセミナーでは、東京大学医学部附属病院放射線部の赤羽正章氏が、「躯幹部領域のトピックス - 3T MRIを中心に」と題して、最新アプリケーションである脂肪抑制法“IDEAL”やボリューム撮像法“Cube”などについて講演した。

東京大学医学部附属病院放射線部准教授 赤羽 正章 氏
東京大学医学部附属病院
放射線部准教授
赤羽 正章 氏
座長:防衛医科大学校放射線医学講座准教授 新本 弘 氏
座長:
防衛医科大学校
放射線医学講座准教授
新本 弘 氏
  会場風景
会場風景

  3T MRI が臨床に導入されてから、基本的な撮像技術の重要性がますます高まっている。本講演では、3T MRIにおける躯幹部領域のトピックスである、脂肪抑制、Volume化の流れ、非造影MRAの3点について、GE社MRIの最新アプリケーションと臨床的有用性を中心に紹介する。
 



脂肪はMRIの敵
脂肪抑制を究める“IDEAL”

 MRIにおいて、基本的に脂肪は敵になる。造影後の増強効果が見にくい、T2延長領域もわかりにくいなど、脂肪の影響は大きな問題だが、一方、病変の中の脂肪の有無は質的診断には有効となる。いずれにしても、脂肪を制するものはMRIを制すと言っても過言ではない。

 3T MRIでは静磁場強度が高まることでSNRは向上するが、RF磁場の不均一や磁化率効果の増強などが課題となる。特に脂肪抑制に関しては、RF磁場(B0、B1)の不均一が大きな問題となる。それを解決するための非常に強力な武器になる撮像法が“IDEAL”である。

 IDEALは基本的には3-point-Dixon法で、脂肪と水の分離画像を有効に使えるように工夫されている(図1)。RF磁場(B0)の不均一性を補正するためのフィールドマップ技術などにより、脂肪抑制ありなしの4種類の画像(水画像、脂肪画像、In Phase、Out of Phase)が一度に得られる。

図1
図1 IDEAL(Advanced 3-point-Dixon)
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 図2は、脊椎腫瘍の術後で金属のビスが入っているため、通常の脂肪抑制T2強調像(図2 中)での描出が難しい状況であるが、IDEAL(図2 右)では脂肪抑制の効いた高精細な画像が得られる。非常に均一な脂肪抑制が全スライスにわたってきれいに得られることがIDEALの特長である。

図2
図2 IDEAL
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 図3は、高安病(大動脈炎症候群)を疑う症例のIDEALによる脂肪抑制T2強調像とT1強調像であるが、ともに動脈壁と周囲の異常信号/増強効果が認められ、血管壁に沿った炎症が非常によくわかる。IDEALは、造影後のT1強調像でも均一な脂肪抑制効果を可能にする理想的な撮像法と言える。

図3
図3 IDEAL(高安病を疑う症例)
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 さらにIDEALは、3T MRIで問題となる化学シフトアーチファクトの影響の解消に有効である。3T装置は、1.5Tと同じバンド幅にすると化学シフトアーチファクトが倍ずれてしまい、逆にバンド幅を倍に広げるとSNRが低下してしまうという問題がある。IDEALのFSE法T2強調像では、脂肪抑制像と脂肪画像、さらにIn Phase像が取得できる(図4)。IDEALのIn Phase像は脂肪と水の画像を化学シフト分だけずらして重ねることで、化学シフトアーチファクトの影響が出ない画像を得ることが可能である。また、脂肪の有無は病変の質的診断において重要だが、脂肪抑制前後やIn PhaseとOpposed Phaseのサブトラクションといった従来の方法に加えて、IDEALの脂肪画像で評価することもできるようになった。

 息止めが必要な上腹部や胸部などの領域には、MEDAL(W.I.P.)という2-point Dixon法が有用である。図5のように、SpecIR(LAVA)とMEDALを比較すると、MEDALでは脂肪が抑制され、上縦隔の血管構造が明瞭に描出されている。

図4
図4 IDEAL
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図5
図5 MEDAL(W.I.P.)
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進化したVolume撮像法“Cube”

 マルチスライスCTに始まったVolume化の潮流は、MRIにも及ぶようになった。MR装置のコイルの進歩や高磁場化でSNRの良い薄いスライスの画像が得られるようになり、モニタ診断の普及とともに、Volume化が広がっていくと考えられる。Volume撮像の代表的な手法には、GRE系のLAVAと最新アプリケーションであるFSE系のCubeがある。従来からのLAVAは、新しい肝特異性造影剤「Gd-EOB-DTPA」にも最適な撮像法である。

 Cubeは長いETL、可変フリップ角の3D-FSE法で、ボケ(Blurring)とSARが抑えられることにより、特に3T装置にとって有利な撮像法である(図6)。さらに、新しいパラレルイメージング“ARC”を組み合わせることで、高速かつ折り返しアーチファクトのない優れた撮像法になる。

 Cubeは血管のflow voidが非常に強く出るため、Black Blood法として使うことができる。高安病疑い(図3と同一症例)の造影後のCubeによるT1強調像(図7)では、動脈内・静脈内がBlack Bloodになっていて、血管壁が非常に評価しやすい画像が得られている。矢状断のほかに、横断像や冠状断像、MPR像を作ることも可能である。flow voidがきれいに出るVolum撮像法をT1強調像で使えるCubeは、将来的に期待できる技術である。

図6
図6 Cube
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図7
図7 Cube(図3と同一症例)
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3Tにおける躯幹部
非造影MRA“IFIR”

 3T装置における、躯幹部非造影MRAの検討を開始している。3Tでは、3Dで薄いスライスを撮像するのに十分なSNR、ラベルやタグ付けが長持ちする、背景抑制に有利、などのメリットがある。現在は、FIESTAベースのシーケンスである“IFIR”を用い、描出したい血管にinversion pulseを重ねて設定し、上流から流入してくる高信号の動脈血・静脈血を観察している。図8は、3TのIFIRによる肝動脈の非造影MRAである。当院ではすでに、IFIRによる躯幹部非造影MRAの臨床応用を始めている。

図8
図8 躯幹部非造影MRA(IFIR@3T)
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*第36回日本磁気共鳴医学会大会 GE横河メディカルシステム ランチョンセミナー
(2008年9月11日)より抜粋

●お問い合わせ先
GE横河メディカルシステム株式会社
〒191-8503 東京都日野市旭が丘4-7-127 TEL 0120-202-021(カスタマー・コールセンター)
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