Cardiac MRI/CT - MRIとCTを駆使し虚血性心疾患の非侵襲的診断と予後予測に挑む。

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Cardiac MRI/CT
虚血性心疾患の診断における
MRIの有用性
(演者:宮田節也氏)
宮田節也 氏
医療法人社団エス・エス・ジェイ
札幌整形循環器病院心臓内科
宮田節也 氏
五十嵐慶一 氏
座長:北海道社会保険病院
心臓血管センター長・心臓内科部長
五十嵐慶一 氏
マルチスライスCTの非石灰化冠動脈プラーク検出および性状診断への活用
(演者:北川知郎氏)
北川知郎 氏
広島大学大学院
医歯薬学総合研究科
分子内科学(循環器内科)
北川知郎 氏
会場風景
会場風景


 CCT2008(Complex Catheter Therapeutics 2008)において、Cardiac MRI/CTをテーマにGEYMS共催のランチョンセミナーが開催された。


Cardiac MRI (演者:宮田節也氏)

 札幌整形循環器病院の宮田節也氏は、「虚血性心疾患の診断におけるMRIの有用性」と題して講演を行った。

 はじめに宮田氏は、MRIは虚血性心疾患の診断において(1) 1回の検査で機能(Wall Motion)、虚血(Perfusion)、心筋障害(Delayed Enhancement)を同時に見ることができる、(2) 医療費が比較的安く外来でも対応できる、(3) 被ばくがない、(4) 空間分解能が高い、という点が優れていると述べた。心臓MRIの検査時間は40分程度を要するが、同院では、現在までの約1年半ですでに800症例を超える実績を挙げている。外来において、例えば無症候性心筋虚血を疑う患者や胸痛患者では、典型例・非典型例のいずれも心臓MRIを行い、ネガティブの場合は経過観察を、ポジティブの場合は冠動脈造影(CAG)を行っている。宮田氏は、こうした取り組みの紹介を踏まえ、実際にいくつかの症例を挙げて、心臓MRIの有用性について述べた。

  運動時の呼吸困難を主訴として来院した30歳代、男性の症例では、心臓MRIでWall Motionについては大きな変化は認められなかったが、Perfusionにおいては乳頭筋レベルで全周性に心内膜下Perfusion delayが認められた。そこで、血管造影を施行したところ、三枝病変であることがわかった(図1)

 60歳代、男性の症例では、7年前に前壁中隔梗塞を発症し、亜急性期造影では#6が90%であるものの、RIでは心筋バイアビリティなしと判断され、PCIは行っていなかった。しかし、胸痛があり、心臓MRIによりDelayed Enhancementを撮像した結果、Delayed Enhancementは心筋全層に至っておらず、base側にはバイアビリティが残っているという判断の下、PCIが施行された(図2、3)

  Delayed Enhancementについては、壁の50%未満であればバイアビリティの回復が期待できるという報告がある。GE社のビューワに搭載された「Report CARD」では、得られたデータの参照や定量的な解析を簡便に行うことができる (図4)。また、Bull's eye表示を用いれば、PCIを行った部位のWall Motionが回復しているかどうかといった微細な観察や、正確な評価が可能であると述べた。

  宮田氏はこのほか、いくつかのデータや症例を示しながら、近年注目されている心臓MRIによる心筋バイアビリティの評価について触れ、Delayed Enhancement像はACSの予後予測因子となりうるとして、冒頭に示した4点のほかにも多くのメリットが得られると述べた。

図1
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図2
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図3
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図4
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Cardiac CT (演者:北川知郎氏)

 広島大学大学院医歯薬学総合研究科の北川知郎氏は、「マルチスライスCTの非石灰化冠動脈プラーク検出および性状診断への活用」と題して講演を行った。

  同院では現在、GE社の64列MDCT「LightSpeed VCT」によって、1か月に40〜50例の心臓CTの撮影を行っている。撮影プロトコールは、管電圧/管電流:120kV/600〜750mA、スライス厚:0.625mm、管球回転速度:0.35秒/回転、ピッチファクタ:0.18〜0.24:1である。安静時心拍数が60を超える患者さんについては、ほぼ全例でβブロッカーを投与している。また、造影検査においてはテスト・インジェクション法を採用し、造影剤量は体重1kgあたり0.6〜0.7mLとし、テストショットを加えても、ほとんどの患者さんで造影剤投与量は50cc程度に抑えられている。

  急性冠症候群(ACS)の予防においては、冠動脈狭窄率よりもむしろ、冠動脈プラークの性状診断が重要である。64列MDCTの登場は短時間に高画質な画像を得ることを可能にし、冠動脈プラークの性状評価に活用することが期待されている。そこで北川氏は、冠動脈疾患の疑いがある138名の患者さんを64列MDCTで撮影し、non-calcified coronary atherosclerotic lesions(NCALs)のCT値やリモデリング・インデックスと、それに付随する石灰化病変の形態についてIVUSとの比較も含めて包括的に評価し、各因子の相関を調べた。

  リモデリング・インデックスについては、血管径をトレースして病変部と正常近位部とを比較して算出し、1.05より大きければポジティブ・リモデリングとした。また、石灰化病変の形態はカルシウムのサイズで分類し、幅が血管径の2/3未満で長さが3/2以下であればSpotty、それを超えたものはDiffuse、その中間はMediumとして評価を行った。138名中97名に計202個のNCALs が検出され、ポジティブ・リモデリングを呈する病変の方がよりCT値が低く、より脂質成分に富んでいるという結果が出た。石灰化病変については、ポジティブ・リモデリングを呈する病変のうち6割がより危険とされるSpottyを伴うほか、CT値はSpottyを伴う病変でより低く、リモデリング・インデックスはSpottyを伴う病変でより大きくなるという結果であった。これらの検討により、CT値、Spotty calcium、ポジティブ・リモデリングは相互に深く関連していることがわかった(図5、6)

  次に、98名の連続症例を対象としたACS症例における検討結果が報告された。内訳はACSが18名、non-ACSが80名であり、それぞれ57個、163個、計220個のNCALsが検出された。1患者あたりのNCALsの数はACS群の方が有意に多いほか、約半数でCT値が有意に低く、ポジティブ・リモデリングを呈し、Spotty calciumを伴っているという、3つのリスクをすべて備えていた(図7)。また、ACSの責任病変でより高度なポジティブ・リモデリングを呈していた(図8)

  北川氏はこれらの結果を踏まえ、MDCTはACSの発症予測に有用である可能性が高いとの考えを示した。

図5
図5
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図6
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図7
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【画像をクリックすると拡大表示します 】


図8
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*CCT2008 GE横河メディカルシステム ランチョンセミナー (2008年2月1日)より抜粋

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