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RSNA2009

■GE Healthcare
ヘルシーマジネーションをテーマに,グローバル戦略にのっとった多数のイノベーションを発表

RSNA2009 [第1日目:11月29日(日)]

世界的な視野で医療問題の解決に取り組むGE Healthcareは,同社が策定したヘルスケアに関する新戦略である「ヘルシーマジネーション(Healthymagination)」をブースのテーマに掲げ,展示を行った。ヘルシーマジネーションは2009年5月に発表された,イノベーションで環境課題の克服を図る「エコマジネーション」に続く中核戦略で,2015年までに60億ドルを投じて100種類のイノベーションを実施し,15%のコスト削減,15%のアクセス拡大,15%の品質向上を実現することを目標としている。今回の展示では,ブース内にヘルシーマジネーションをイメージした大きなオブジェを配したほか,各製品でさまざまなイノベーションが実現されており,今後の発展に強い期待感を抱かせる内容となった。

GE Healthcareブース
GE Healthcareブース

CTは,“See More. Know More. Less Dose.”をキャッチコピーに掲げて開発された,High Definition CT(HDCT)「Discovery CT750 HD」が中心に展示された。まったく新しい検出器であるGemstone Detectorによって,view数を従来の約2.5倍の2460view へと大幅に増加して空間分解能を30〜40%向上し,高精細な情報が得られるようになったほか,逐次近似法を応用した画像再構成法である“Adaptive Statistical Iterative Recon (ASiR)”によって,従来と同じX線量での撮影なら従来の半分以下に被ばくを低減することができる。また,異なる2つのkVを高速にスイッチングして,ヘリカルスキャンによる連続したデータ収集を行うデュアルエナジーの撮像法である“Gemstone Spectral Imaging(GSI)”の技術を応用し,イメージデータベースではなくraw-dataベースで画像処理を行うことで,Iodine image,Water imageなどに加えて,“Monochromatic image”の再構成が可能となった。Monochromatic imageでは,例えば70keVなどの均一なエネルギーによる画像再構成が可能なため,ビームハードニングアーチファクトが大幅に抑制された画像が得られるようになる。さらに,新たな技術として,“Model-Based Iterative Reconstruction(MBIR)”(W.I.P.,日本国内薬事未承認)が紹介された。MBIRではASiRよりもさらにノイズが低減され,空間分解能が向上する。これが実現すれば,GSIと併用することで心臓撮影時の課題であるノイズや被ばく線量を最大限に抑えつつ高画質が得られる,まったく新しい心臓CTが可能になると期待されている。

このほか,CTブースでは,HDCTの技術であるASiRが新たに搭載されたBrightSpeed Elite SDのコンソールや,Advantage Workstation(AW)が紹介された。

Discovery CT750 HD
Discovery CT750 HD

BrightSpeed Elite SDのコンソール
BrightSpeed Elite SDのコンソール

Healthcare ITでは,近年,PACSが放射線科にとどまらず,診療科でも活用されるようになってきた現状を受けて,Webベースのパックスビューワである「Centricity PACS IW」(日本での製品名は「Dynamic Web DW」)を中心に展示された。Centricity PACS IWでは,診療科でも放射線科と同じ操作性で使用できるほか,新たに拡張した機能として,核医学と整形外科領域のワークフローを向上する新機能が紹介された。核医学領域では,PET/CTの読影時に,PETのローテーションMIP像,PET画像とCT画像のフュージョン,PET画像とCT画像のMPR再構成とそれぞれのサジタル像,コロナル像の表示,およびそれぞれのフュージョン画像をすべて自動的に高速表示することが可能となった。ハンギングプロトコールのカスタマイズの自由度が高く,より読影・診断のしやすい環境構築ができるほか,レイアウトは事前にいくつかのパターンを登録しておくこともできる。また,1つの画像の集積部分をクリックするだけで,SUVの値がすべての画像上に反映されて表示される機能も搭載された。モニタ構成も,ソフトウエアが自動で検出するため,各医療機関の構成に応じた対応が可能になっている。

整形外科領域においては,例えば一般撮影を用いて股関節の人工関節を計測する際に,ワンクリックで簡単に正確に行えるシミュレーションツールが搭載された。

また,Healthcare ITブースでは,施設間連携を大きなテーマとして掲げており,そのための新しい機能として,病病・病診連携時に患者情報を自施設の患者情報と統合するIHEのXDS(レポートの施設間共有),XDS-I(画像情報の施設間共有),PIX(患者情報の相互参照)統合プロファイルに準拠した“Image Exchange”が紹介された。

Centricity IW(PET/CT)
Centricity IW(PET/CT)

Centricity IW(整形領域)
Centricity IW(整形領域)

Image Exchange
Image Exchange

Interventionalブースでは,40cm×40cmの大きな検出器を搭載し,新たにチルトテーブルが採用された「Innova4100IQ」を中心に展示が行われた。今回は3Dのイメージガイダンスにフォーカスしており,新たな機能として,“Innova Vision”と“Innova TrackVision”(ともにW.I.P.,国内薬事未承認)が紹介された。Innova Visionは,血管撮影装置で術前に撮影した三次元の脳血管や肝臓,椎体などの画像と透視画像を重ね合わせて表示することで,動脈瘤のコイル塞栓術や肝臓のカテーテル治療などのガイドとして使用することができる。従来は,寝台を上下・左右に移動させたり,Cアームの角度を変えるとガイダンス機能がクリアされてしまっていたが,Innova4100IQでは,それらの状態でも画像が常に追随するため,再設定を行うことなく,スムーズな治療が可能となる。また,Innova TrackVisionでは,腰椎穿刺や骨セメント術などの際に,穿刺針の刺入角や奥行きの正確な位置決めとガイドラインの表示が可能となった。

このほか,ベッドサイドに設置された多目的タッチスクリーン・オペレータコンソール“InnovaCentral(イノーバ・セントラル)”の機能が拡張し,処置室内でのAdvantage Workstationの操作が可能となった。

Innova4100IQ
Innova4100IQ

InnovaCentral
InnovaCentral

MRIブースは,“Changing a face of MR. The right way.”をテーマに,3つの1.5T MRIの新製品が紹介された。

「Optima MR450w」(日本国内薬事未承認)は,ガントリ開口径70cmのワイドボアの装置である。ガントリ長は145cmと短く設計されており,体格の大きな患者さんや閉所恐怖症の患者さんにも優しい装置となっている。通常,開口径を大きくすると静磁場の均一性を保つことが困難となるが,Optima MR450wは,ハードウエアに同社の最上位機種である「Discovery MR750 3.0T」や「Discovery MR450 1.5T」と同じプラットフォームを採用。さらには,ガントリ内でAnalog/Digital変換を行うことで従来よりもノイズを減少し,信号強度を上げてSNRを向上する“オプティクス”と,グラジエントコイル内に冷却用水を直接流して冷却効率を高め傾斜磁場を向上する“エクストリームグラジエント”という2つの新技術を搭載し,ガントリ全体に改良を加えたことで,開口径を広げながらも画像の磁場均一性が維持されている。

Optima MR450w 1.5T
Optima MR450w 1.5T

「Optima MR360」(W.I.P.,日本国内薬事未承認)は,日本の技術者が日本のユーザーの声を取り入れて開発し,機械室がコンパクトでインスタレーションを1週間で行うことが可能な「Signa HDe 1.5T」の後継機種。Signa HDeのコンセプトを保ちながらも,従来よりもスリューレートを向上し,ピークパワーを落としてより高性能な装置となった。さらに,新たに搭載された“Ready Brain”では,頭部の検査を行う際に,ボタン1つでポジショニングからスキャンまで,すべて自動で行うことができる。MR検査の経験の浅い技師でも簡単に操作が行えるユーザーインターフェイスとなっている。

Optima MR360 1.5T
Optima MR360 1.5T

「ONI MSK extreme」(日本国内薬事未承認)は四肢撮影の専用装置。非常にコンパクトでありながら,静磁場強度は1Tおよび1.5Tを実現している。

ONI MSK extreme 1T/1.5T
ONI MSK extreme 1T/1.5T

このほか,新しいアプリケーションとして,“MR-Elastography”(日本国内薬事未承認)が紹介された。肝臓をターゲットにしており,専用の機器を腹部に押し当てた状態でコイルをつけ,肝臓に振動を与えてMRIで撮像し,画像処理することで硬さの情報が得られ,肝硬変になる前の線維化の情報を得ることができる。肝臓疾患の早期治療が非襲侵的に行えるほか,乳がんや筋肉の検査にも有用性を発揮すると期待されている。米国ではすでに販売を開始しており,臨床的有用性の報告が待たれる。

MR-Elastography
MR-Elastography

X-rayブースでは,今回初めて,一般撮影,マンモグラフィや血管撮影装置のフラットパネル(FPD)が展示された。同社では,X線発生器,ジェネレーター,ポジショナー,フラットパネルまですべて自社で開発を行っているが,その中でも最も重要なカギとなるフラットパネルを展示することで,同社の技術力の高さをアピールした。

フラットパネルディテクタ
フラットパネルディテクタ

一般撮影装置は,2009年9月に発売したばかりの「Discovery XR650」が展示された。アプリケーションが非常に充実しており,2種類の異なる管電圧で撮影した2枚の撮影データから,エネルギー差による情報を差し引きすることで,最適な画像を再構築する“デュアルエナジーサブトラクション”や,撮影から画像合成までの長尺撮影をフルオートで行える“オートイメージペースト”,1回の撮影時に検査部位に異なる角度でX線を連続パルス照射して撮影後,コンピューターで画像を再構成することで任意の複数断層画像を一度に得ることができる“ボリュームラド”(トモシンセシス)など,高性能なアプリケーションを豊富に搭載している。また,従来の装置はフラットパネルが組み込まれており取り外すことができなかったが,Discovery XR650では取り外しが可能となった。そのため,従来はCRを併用しないと全身の撮影領域をカバーできなかったが,フラットパネルを取り外してスタンドに差し込むことで,全身の撮影が可能となった。

Discovery XR650
Discovery XR650

マンモグラフィは,「Senograph Essential Interventional」(W.I.P. 日本国内薬事未承認)を発表した。同社ではこの装置を,将来的なAdvanced Applicationのプラットフォームと位置づけている。マンモグラフィのアプリケーションは現在,さまざまなアプリケーションの開発が進んでいるが,それが製品化される際には,Senograph Essential Interventionalで実現されることが見込まれており,将来の新しい展開を見据えた展示となった。

Senograph Essential Interventionalは,次世代の新しいアプリケーションにも十分に対応できるよう,国内で現在稼働しているSenograph DS Laveriteよりも一回り大きなサイズのフラットパネルを搭載したほか,フラットパネルの変換効率(DQE)を数%向上した。また,コンソールモニタは現在,1Mピクセル1面構成となっているが,3Mピクセルのモニタをオプションで2面構成にすることが可能となった(W.I.P.,日本国内薬事未承認)。これにより,過去画像を参照しながらの撮影や,通常の画像を表示しながらステレオバイオプシーのポジショニングを行うことも可能となる。

このほか,現在臨床研究が進められている新機能として,“トモシンセシス”が紹介された。


Senograph Essential Interventional
Senograph Essential Interventional
コンソールの2画面構成
コンソールの2画面構成
臨床研究中のトモシンセシス画像
臨床研究中のトモシンセシス画像

核医学ブースでは,PET/CTとSPECT/CTに,それぞれ診断用CTを搭載した新しいシステムが登場した。従来,CTは核医学検査のための吸収補正用として用いられてきたが,近年では,1台の装置で形態診断と機能診断の両方を行いたいという要望が多くなっており,それに応える形で新製品が開発された。

PET/CTコーナーでは,「Discovery PET/CT600」と「Discovery PET/CT690」(690は薬事未承認)が展示された。いずれの装置も呼吸同期の機能が搭載されていることが大きな特長であり,同じ位相で吸収補正を行うことで,PET/CT撮影時の集積位置の誤認や,SUV値の過小評価といった臨床上の課題克服に貢献している。また,呼吸同期を行う場合,データ量が増加することによって,以前は画像再構成にかなりの時間がかかっていたが,ハードウエアのパワーを上げることによって,Discovery PET/CT 600の場合で1視野分の画像再構成時間が,最速で従来の1/4にあたる約40秒で行うことが可能になった。

Discovery PET/CT600とDiscovery PET/CT690は,基本的には同じプラットフォームを採用しているが,検出器感度と画像再構成法の違いで,Discovery PET/CT600はFDGの低投与量での撮像,Discovery PET/CT690はTOFにより比較的身体の大きな患者さんでSNR改善の効果を発揮する。さらに,次世代のPET/CTでは,CTに,逐次近似法を応用して画質向上や被ばく低減を可能にする“ASiR”を搭載することが予定されている。これにより,吸収補正のために低線量で撮影したCT画像でも,形態診断が行えるようになると期待されている。同時に,PETについても新たに“SharpIR”という機能が搭載される。PET撮影時には,身体の周辺から出てくるガンマ線は検出器に斜めに入るため画像にボケが生じるが,そこに逆関数をかけることで,身体の中心から離れた辺縁部の小さな集積などにおいてもSUV値が改善されると期待されている。 また,AWにも,呼吸同期に対応する新アプリケーション“Motion VUE”が搭載された。CT,PET,あるいはフュージョン画像の動画を同時に表示し,またその場でSUV値の計測やROIの測定などが可能となる。

Discovery PET/CT600/690
Discovery PET/CT600/690

SPECT/CTでも,新製品として診断用の16列CTであるBrightSpeed Eliteを搭載した「Discovery NM/CT 670」(W.I.P., 日本国内薬事未承認)が登場した。SPECTの検出器周りのデザインを一新し,以前よりもコンパクトな検出器を搭載し,ガントリや撮影テーブル動作のスムーズな装置となった。特に,全身の骨シンチグラフィを短時間で行う新アプリケーション“Evolution for Bone Planar”が搭載され,従来の約半分の時間での全身の骨シンチグラフィ検査が可能となる。

Discovery NM/CT 670
Discovery NM/CT 670

SPECTには,半導体検出器を用いた心臓専用装置「Discovery NM 530c」(日本国内薬事未承認)が登場した。検出器に半導体を用いることで,検査時間が従来の1/5にまで大幅に短縮したほか,エネルギー分解能が非常に高いため,2つもしくは3つの放射性薬剤の同時投与による検査が可能になると期待されている。また,通常,SPECTカメラは回転しながら撮影を行うが,Discovery NM 530cはガントリが固定された状態で心臓の断層像が得られるため,従来は回転によって生じていた時間のズレが発生せず,時間分解能の高い画像を得ることができる。そのため,いままでとはまったく新しい技術で心臓検査が行われるようになると期待されており,すでに全世界で約20台が稼働している。 さらに,Discovery NM 530cに64列CTを搭載した,「Discovery NM/CT 570c」(日本国内薬事未承認)の販売も予定されている。

Discovery NM 530c
Discovery NM 530c
右が従来の検出器,左が半導体検出器
右が従来の検出器,左が半導体検出器

このほか同社超音波ブースには,腹部汎用装置の「LOGIQ E9」と麻酔科および整形外科専用装置の「Venue40」が展示された。

LOGIQ E9
LOGIQ E9
Venue40
Venue40

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