FileMaker カンファレンス 2015
“ブームから文化へ”拡大する医療ITのユーザーメードのさまざまな取り組みを紹介

2015-12-15

クラリス(FIleMaker)

ヘルスケアIT


J-SUMMITSとの共催で行われたメディカルトラック

J-SUMMITSとの共催で行われたメディカルトラック

FileMaker カンファレンス2015が,2015年11月25日(水)〜27日(金)の3日間,東京都千代田区のJPタワーホール&カンファレンス(KITTE内)で開催された。初日には,ビル・エプリング社長らによるオープニングセッションが行われたほか,ジェネラルトラック,iPad&iPhoneトラック,スキルアップ・ワークショップなど多彩なプログラムが設けられた。27日には,日本ユーザーメード医療IT研究会(J-SUMMITS)との共催によるメディカルトラックが開催された。FileMakerカンファレンスでは,J-SUMMITSと共催したメディカルトラックを毎回設け,医療者自らが作る,あるいは現場の課題をパートナーと解決する多くの事例が発表されてきた。開催に当たって挨拶したJ-SUMMITS代表の吉田茂氏(医療法人葵鐘会副理事長兼CMIO)は,「FileMakerカンファレンスでのメディカルトラックの開催は定着してきたと感じている。J-SUMMITSは,医療ITシステムをユーザー自らが構築するユーザーメードの取り組みを支援,発展させることを目的に活動してきたが,ユーザーメードが日本において一時的なブームで終わるのか,はたまた“文化”として根付くのかを自問自答している。今回のセッションを通じて,医療ITのユーザーメードが文化となりうるかどうかもう一度考えてほしい」と述べた。

挨拶する吉田茂J-SUMMITS代表

挨拶する吉田茂
J-SUMMITS代表

ロビーでは展示(ショウケース)も行われた。

ロビーでは展示(ショウケース)も行われた。

 

メディカルトラックのセッションは次の通り。

M-1
「FileMakerを活用したNational Clinical Databaseへの自動転記システムの運用」
田上創一(湘南東部総合病院)

M-2
「FileMakerでここまでできる;化学療法管理システム」
宮島孝直,山下さやか(津山中央病院)

M-3
「医師事務作業補助者業務におけるFileMakerの活用」
本間真由(社会医療法人医翔会 札幌白石記念病院)

M-4
「iPadとFileMakerを最大限に活用したフットケア管理ソリューションのご紹介」
田代庸平(泉南新家クリニック)

M-5
「次のステージへ〜クリニック移転に伴うIT化のあらまし」
近藤佑紀(医療法人きらめき),卯目俊太郎(株式会社ジュッポーワークス)

M-6
「FileMakerを用いた感染管理システムの開発〜医療情報リソースの再構築」
小西央郎(中国労災病院)

M-7
「ポータル機能を利用したリハビリテーション業務〜評価・計画書」
松重好男(医療法人三九会 三九朗病院),深澤真吾(株式会社寿商会)

M-8
「運用設計を柔軟に変更できる多言語対応問診表と屋内ナビの実現」
山本康仁(東京都立広尾病院),高岡幸生(株式会社ジェネコム)

M-1では,消化器外科医である田上氏が,前勤務先である長野市民病院で構築したFileMakerとCacheを接続したシステム,外科の症例データベースであるNational Clinical Database(NCD)への自動転記システムの開発について説明した。田上氏は,手術台帳からスタートし,手術の予定管理や関連する患者情報を一元管理する手術予定管理システムを構築。病院の電子カルテシステムとして東芝メディカルシステムズの「HAPPY ACTIS」が導入されたことから,電子カルテのデータベースであるCacheとODBC接続を行い患者情報をインポートして利用可能な仕組みを開発した。このシステムはFileMaker Goで動き,iPad miniで12名のスタッフが利用した。また,NCDの自動登録システムについては,手術予定管理システムに入力された項目を基にして,JavaScriptでWeb上のフォームに個別で挿入する方法で開発された。この開発と運用については,日本外科学会雑誌にペーパーとして投稿されている。田上氏は,エンドユーザーの立場から,現場の課題を解決するシステム構築から学会への論文投稿まで,FileMakerだからこそ可能になったアプローチを紹介した。

M-3「医師事務作業補助者業務におけるFileMakerの活用」では,本間氏が医師事務作業補助者の立場で,業務の効率化と医療データの有効活用の観点からFileMakerを活用して構築したシステムを紹介した。医師事務作業補助者は,医師の診療をサポートする専門職として誕生し,2008年からは診療報酬上の加算が認められ,現在は全国で約8000名が登録されている。業務としては,文書作成補助,電子カルテ代行入力などを担当し,院内での業務への理解が広がるにつれ業務範囲や作業負担も増えてきている。そこでFileMakerを利用して,医師事務作業補助者の業務の効率化と医療データ管理に取り組んだ。具体的には,作成件数の多い退院時サマリーや生命保険会社診断書の作成を省力化するため,データを退院時サマリーに集約して収集し,必要な項目を最初に入力することで再入力や検索の手間を省いた。また,脳ドックのデータベースへの入力を電子カルテと連携して患者基本情報の自動取り込み,検査データの自動入力を可能にし,誤入力の防止と業務時間の短縮を実現した。本間氏は,FileMakerが電子カルテのサブシステムの位置づけとして活用できるようになったことで,医師事務作業補助者だけでなく,医師や患者を含めた診療の質の向上に役立つシステム構築が可能になったとまとめた。

そのほか,ショウケース(展示)では,FileMakerソリューションによるコンサルタントや受託開発を行う企業のアライアンスであるFBAのメンバーを中心に,24社が出展した。iPadを使ったFileMakerおよびFileMaker Goのアプリの紹介コーナーや,FileMakerに関する相談を受け付けるFileMaker Barなども設けられた。

 

●問い合わせ先
FileMaker カンファレンス 2015 事務局 (株式会社コンベンションリンケージ内)
TEL 03-3263-8695

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