FileMakerカンファレンス in 大阪
J-SUMMITSと共催したメディカルトラックを開催
2014-7-15
関西圏では初めての開催
ファイルメーカー社は,FileMakerの最新ソリューションの紹介や開発者,ユーザーが集う総合イベント「FileMakerカンファレンス in 大阪」を2014年7月4日(金),5日(土)の2日間,大阪市北区中之島の大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)で開催した。FileMakerカンファレンスは,これまで東京で5回開催されてきたが,大阪での開催は初めてとなる。ビル・エプリング社長によるオープニングセッション,FileMakerのテクニックを学ぶトレーニング,iPadやiPhoneの活用事例を紹介するiPad & iPhone トラックなど多くのプログラムが用意されたが,その中でメディカルトラックとして,日本ユーザーメード医療IT研究会(J-SUMMITS)との共催で「J-SUMMITS・FileMaker Medical Seminar」が開催された。「医療現場が求める医療ITシステム」をテーマに,J-SUMMITSのメンバーの発表を中心に10のセッションが行われた。開催にあたって挨拶したJ-SUMMITS代表の吉田茂氏(医療法人葵鐘会副理事長 CMIO)は,「FileMakerカンファレンスが大阪でも開催されるようになり,ましてやその1つのトラックをメディカル分野で構成することは少し前なら考えられなかった。思いがけない出会いや偶然の発見を引き寄せる“serendipity(セレンディピティ)”という言葉があるが,FileMakerはまさにそのセレンディピティを引き起こすツールだと言える。今回の大阪でのカンファレンスが新たな発見や出会いの場になることを期待する」と述べた。
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午前のセッションは,櫃石秀信氏(加古川市民病院機構事務部次長)の「医療現場におけるIT導入による省力化とFileMaker人材育成」と,長谷川哲也氏(加古川動物病院),真木康之氏(マキシステム)による「動物病院の業務を改善した電子カルテシステムの事例」の2題。
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櫃石氏は,最初に神戸製鋼本社のSEとして病院のシステムにかかわったが,進んでいると思っていた病院のシステム化が民間企業よりも遅れていることに驚いたという。2000年当時の神鋼加古川病院は,院内LANもない,システム担当者もいない,医師が独自にシステム開発を行っているという状況だった。櫃石氏は,当時小児科に勤務してFileMakerで診療支援システムを構築していた吉田氏とも相談して院内のIT環境整備を進め,その中で院内スタッフに向けて入門,応用,リレーショナルの3コースのFileMaker講習会を開催した。その後,IT担当スタッフ(SE)の採用などを進めたが,まず院内にFileMakerが使えるスタッフを養成することで,個人の趣味的なシステムではなく,病院の正式なシステムとして構築をめざしたという。櫃石氏は,「“職員の,職員による,職員のためのアプリケーション”をめざしたことが,業務の効率化につながっていった」と述べた。また,FileMakerによる院内の省力化,効率化の例として,ラベルライターで作成していたベッドサイドなどの患者ネームラベル作成機能や看護管理日誌作成機能などを紹介した。なお,神鋼加古川病院と加古川市民病院は2011年に統合され,それぞれ加古川東市民病院と加古川西市民病院となった。同時に2病院共通の電子カルテシステムが運用されているが,2016年には統合した新病院のオープンが予定されている。
ランチョンセミナーとして行われた「医師の考えるカスタマイズITでは、何故FileMakerが適しているのか?」を挟んで,午後のプログラムとして,山本康仁氏(都立広尾病院小児科医長)の「統合DWHの実現にむけて,医療DWH先端活用」,平松晋介氏(製鉄記念広畑病院産婦人科部長)と木下雄一朗氏(キー・プランニング)の「FileMakerと電子カルテの,ユーザーフレンドリーな連携〜EGMAIN-GX eXChartへの新たな連携」,岡垣篤彦氏(国立病院機構大阪医療センター産婦人科・医療情報部長)の「大規模災害時における医療救援チーム配置最適化支援ソフトウエアの開発」,田代庸平氏(泉南新家クリニック透析センター情報管理主任)と高木堅二氏(同透析部長)の「透析業務支援システムにおける災害対策への活用」,吉田氏による「災害時病院情報統合管理システム『MedPower』」の5題が行われた。
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山本氏は,都立広尾病院で構築している,基幹の電子カルテシステム「HOPE EGMAIN-GX」(富士通)と,FileMakerベースで開発されている診療支援システム(CDS)の「HiPER 2.0」を連携した運用について紹介した。山本氏は,データウエアハウスの提唱者であるビル・インモンの“医療は状況が多彩でパターン化しにくく,情報は複雑・冗長,長期間であり,DWH化は困難である”という言葉を引用し,困難を克服し実現するのがHiPER 2.0の取り組みだと述べた。通常の電子カルテでは部門システムのデータやレポートはURLのリンクで保持しているため,そのままではデータの解析はできない。HiPER 2.0では,電子カルテシステムから双方向のソケット通信で指示や患者プロファイルなどのデータを取り込み再構築している。書き込むときにキーを設定しデータを整形して格納することで利用時(呼び出し)の処理を高速化している。これらの処理には,100GBメモリ,12コアの4台のブレードサーバを使って仮想化された13基のFileMaker ProとFileMaker Serverが利用され,先読みやパイプライン処理などあたかもCPUと同じような仕組みを作り上げることでリアルタイム処理を可能にした。山本氏は,これによって部門システムから取り込んだレポートの記述内容を文脈解析し,診療支援に役立てるところまで実現している。「文脈の解析には大変な手間がかかるが,医療の専門用語,特に略語は記載のぶれが少なく宝の山だということがわかった。これを発展させることで,事前に設定しなくてもシステムが文脈を読んで,業務や診療の提案を行う“提案許可型”のCDSも実現可能だと考えている」と今後の野望を語った。
岡垣氏は,2013年度の厚生労働科学特別研究経費の「南海トラフ巨大地震の被害想定に対するDMATによる急性期医療対応に関する研究」の1つとして,FileMakerで構築した“医療救援チーム配置最適化支援ソフトウエア”を紹介した。阪神大震災の教訓から生まれたDMATだが,東日本大震災では被災地の状況を把握できる方法が限られたことから,適切なタイミングで必要とされる場所に配置することができない事態が生じた。そこで,近い将来必ず発生すると言われている南海トラフ地震を想定して,地震や津波の被害予測データと医療機関の情報を地図上にプロットして被災の状況やどのくらいの医療機能が提供できるかの情報を見える化するアプリケーションを作成した。具体的には,被害予測は内閣府の“南海トラフ巨大地震の被害想定
”を使用し,これに災害拠点病院などの病院データ,標高データなどを統合的に取り込み地図上にマッシュアップ。震源の想定ケースごとに医療機関の被害状況がシミュレーションできることで,災害時のDMATの適正配置に活用が期待される。岡垣氏は,そのほか災害拠点病院である大阪医療センターでFileMakerで構築されている“電子災害掲示板”,“災害用電子カルテ”,“ER用電子カルテ”などについても紹介した(大阪医療センターの事例はこちら
)。
また,前日の4日にもメディカルトラックの1つとして,秋山幸久氏(エムシス取締役)による「クリニックにおける電子カルテソリューションの位置付けと役割」が行われた(ANNYYS_Dの導入事例はこちら )。
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FileMakerプラットフォームによるソリューション開発を行うパートナー(FileMaker Business Alliance:FBA)を中心としたシステム展示が行われたショウケース会場では,イエスウィキャン,ジェネコム,ジュッポーワークス,バルーンヘルプ,エムシス,トップオフィスシステム,日本電気,ワコムなど15社が出展した。
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会場内には,FileMaker Goのソリューションを紹介するWebサイト“fmgo.jp”の,FileMaker iOSサンプルソリューションの中から人気の16アプリケーションがiPad miniで展示され,実際に操作できるようになっていた。その中から医療向けのアプリケーションを紹介する。
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※薬速2014 はiTunesのApp Store でiPhone/iPadユニバーサルアプリとして販売中。
なお,2014年の東京での開催は,11月26日(水)〜28日(金)の3日間,JPタワーホール&カンファレンス(千代田区丸の内,KITTE内)の予定となっている。事前登録は,同社カンファレンス情報ページ www.filemaker.co.jp/conference で2014年9月中旬より開始予定。
Filemakerカンファレンスin大阪のセッション会場の360。#fmconfjp #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
●問い合わせ先
FileMaker カスタマサポート
TEL 0120-983-850
FAX 03-5977-7213
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