ITEM2023 富士フイルム ブースレポート 
多くの新製品を発表し「ONE FUJIFILM」によるシナジーが新たな価値と成果を生み出していることを大きくアピール


2023-5-10

富士フイルム

富士フイルムヘルスケア


富士フイルムブース

富士フイルムブース

富士フイルムグループは,昨年のITEM 2022と同様に,富士フイルム(株),富士フイルムメディカル(株),富士フイルムヘルスケア(株),富士フイルム医療ソリューションズ(株)の4社合同でブースを構成した。ブースのコンセプトとして「ONE FUJIFILMで,医療のいちばん近くから,次代を見つめる。」を掲げて,展示ホールCからDにまたがる1200m2の広大な面積で展示を行った。ITEM2023では,ブース内を会社ごとではなくA(X線撮影システム)からL(医療クラウドソリューション)まで12の製品・ソリューション群でカテゴライズして展示した。2023年4月5日(水)に行われた新製品発表会で富士フイルム(株)執行役員でメディカルシステム事業部長の秋山雅孝氏は2022年度の事業を振り返ってコメントし,「メディカルシステム事業としての総合力を高めるため,グループシナジーの創出を重点課題としてきたが,米国に続きアジアパシフィック地域でも現地法人を統合して販売体制を強化し,ブレストイメージング領域でマンモグラフィから超音波,MRIまでワンストップソリューションの提案をスタートするなど“ONE FUJIFILM”の体制が順調に整いつつある。2022年度は,このクロスセル(富士フイルムグループ間での製品の相互販売)で売上高が倍増しており,今後もさらなる成長が期待できる」とコメントした。今回のITEM 2023の展示でも,富士フイルムグループが一体となって医療・ヘルスケア領域の事業を展開する姿勢が感じられるブース構成となっていた。今年は1.5T WideボアMRIの「ECHELON Synergy」,デジタルマンモグラフィシステム「AMULET SOPHINITY」,透視機能付きX線画像診断システム「CALNEO Beyond」など,ITEM2023に合わせて例年以上に数多くの新製品が発表されたこともあって,ブース内では新しい製品のコンセプトや有用性の説明に耳を傾ける多くの来場者で活気があふれていた。

4月5日の新製品発表会でコメントした秋山雅孝氏(メディカルシステム事業部長)

4月5日の新製品発表会でコメントした秋山雅孝氏(メディカルシステム事業部長)

 

●MRI:AI技術による画質やワークフローの向上を図った1.5Tの新製品「ECHELON Synergy」を展示
●マンモグラフィ:過去検査を元に最適なポジショニングをサポートするPositioning MAP機能を搭載した「AMULET SOPHINITY」
●X線:動画対応FPDの搭載で1台で透視検査と一般X線撮影に対応する「CALNEO Beyond」
●超音波:DeepInsight技術を搭載したハイエンドモデル「ARIETTA 750 DeepInsight」
●PACS:臓器認識/SAIフィルタの対象臓器の拡大など機能が追加された「SYNAPSE SAI viewer」の最新バージョンを紹介
●ワークステーション:「SYNAPSE VINCENT」の「直腸解析」,「QSM解析」など新機能をアピール
●CT:「SCENARIA View Plus」にカメラ映像を解析してポジショニングをサポートする「AutoPositioning」機能を搭載
●RIS:視認性や操作性を一新し,放射線部門のワークフローを支援する「RADISTA Workflow」をアピール
●レポート:「読影トレーニング」や「自動割振」など教育や働き方改革を支援する機能を追加した「ShadeQuest/Report

 

●MRI:AI技術を活用して画質やワークフロー向上を図った1.5T WideボアMRIの新製品「ECHELON Synergy」を展示

多くの新製品が並んだブースの中で,MRIコーナーではITEM直前の3月27日に発売された1.5T超電導型MRI「ECHELON Synergy」が大きな注目を集めた。ワールドワイドでは,昨年,米国・シカゴで開催されたRSNA 2022において一足先にお披露目されていたが,国内では初展示となった。ECHELON Synergyは,コイルや映像投影システムなどオープンMRIでの患者ファーストの検査環境や検査効率を追求してきた富士フイルムヘルスケアのコンセプトと,富士フイルムのメディカルAIブランド「REiLI」のもとで開発された「Synergy DLR」などが融合した製品であり,富士フイルムグループとしてのシナジーが生んだMRIと言えるだろう。
ECHELON Synergyでは,ガントリの両サイドに設置された「ガントリーモニター」が目を引く。このガントリーモニターはタッチパネルになっており,表示された患者情報や検査内容などを確認してワンタップで検査がスタートできる。AI技術を用いて開発されたワークフロー向上技術「SynergyDrive」によって,寝台の中央移動,撮像中心決定が自動で行われ,操作者が検査室を出ると自動的にMRI検査がスタートする。さらにスキャン後の頭部MRAのクリッピングまでを自動で実行できMRI検査のワークフローを効率化できることを紹介した。また,ECHELON Synergyでは,ユニークな受信コイルも話題となった。頭頸部用受信コイル(FlexFit Neuro Coil)は,これまで複数に分かれていたコイルのパーツを一体化し,頭頂部のレバーをスライドさせると頭部側と首側のコイルが連動して動き,頭頸部全体をカバーしてセッティングできる。補助スポンジなどを用いずにベルトによって調整でき簡単に最適なフィッティングが可能だ。また,腹部用受信コイル(FlexFit Wide Coil)は54.5cmx72cmの大きさで,身体に密着できる柔らかい素材が採用されており,巻き付けてセッティングすることで感度の向上が期待できるほか,縦置き,横置きどちらでの使用も可能で広範囲をカバーできるのも特徴だ。また,画質の向上ではアンダーサンプリングと繰り返し演算処理を行う高速撮像法「IP-RAPID」と,新たに開発されたノイズ除去技術であるSynergy DLRによって,より短い撮像時間で高画質画像を取得することが可能になった。IP-RAPID,Synergy DLRとも撮影部位やコントラストを問わずに適用が可能でMRI検査の可能性を大きく広げるものだ。
そして,ECHELON Synergyの展示で来場者の目を引いていたのが,富士フイルムヘルスケアが力を注いできたMRIボア内映像投影システム「Smart Theatre」の新機能だ。Smart Theatreは,ボア内に映像を投影することで被検者の圧迫感や検査への不安を軽減するソリューションだが,あらかじめ用意されたコンテンツだけでなく,任意の映像が投影できるようにバージョンアップされた。これによって,例えば小児の検査などで操作室の母親の映像を投影することも可能で,検査を受ける子どもが安心できるような使い方が可能になるなど,さまざまな可能性が広がることをアピールした。

両サイドの「ガントリーモニター」が特徴的な「ECHELON Synergy」

両サイドの「ガントリーモニター」が特徴的な「ECHELON Synergy」

 

片手でセッティングが可能な頭頸部用コイル「FlexFit Neuro Coil」。左の状態からレバーをスライドさせるだけでセッティング完了(右)

片手でセッティングが可能な頭頸部用コイル「FlexFit Neuro Coil」。左の状態からレバーをスライドさせるだけでセッティング完了(右)

 

IP-RAPID×Synergy DLRで高速撮像かつ高画質を実現

IP-RAPID×Synergy DLRで高速撮像かつ高画質を実現

 

操作室の映像を投影することもできるMRIボア内映像投影システム「Smart Theatre」の新機能

操作室の映像を投影することもできるMRIボア内映像投影システム「Smart Theatre」の新機能

 

●マンモグラフィ:過去検査を元に最適なポジショニングをサポートするPositioning MAP機能を搭載した「AMULET SOPHINITY」

マンモグラフィソリューションのコーナーでは,こちらもITEM直前に発表された新製品としてデジタルマンモグラフィシステムの最上位機種「AMULET SOPHINITY」を展示した(発売は2023年6月1日の予定)。AMULET SOPHINITYは,10年間にわたって国内トップシェアを誇る「AMULET」シリーズの最新機種として,長年培ってきた画像処理技術やAI技術,高画質・低線量を可能にするデバイス設計技術,そして医療現場のワークフローを熟知した知見を生かし,さまざまな新機能を搭載して登場した。高画質・低線量の提供では,HCP(Hexagonal Close Pattern)構造TFTパネルを採用した直接変換型FPD,画像処理技術の「Dynamic Visualization Ⅱ」や「FSC」といったAMULET Innovalityからの技術を継承して搭載した。トモシンセシス撮影については,従来機種から撮影枚数を増やし再構成時のアーチファクトを低減させ,より鮮明な画像を提供できる。AMULETシリーズのトモシンセシス撮影には2つのモードがあるが,STモードは19ショット(振り幅:±7.5°,撮影時間:5秒)に,HRモードは35ショット(振り幅:±20°,撮影時間:12秒)となった。
そしてAMULET SOPHINITYの大きな特徴が,AI技術を活用して開発したプロジェクション機能「Positioning MAP」,「ポジショニング解析機能」を搭載したことだ。Positioning MAPは,過去画像および反対側画像をポジショニングの目安として撮影するために,同一患者の過去画像および反対側画像からスキンラインと乳頭位置(AI技術を活用)を抽出し,撮影台面上に投影(プロジェクション)する。プロジェクションでは,圧迫力,圧迫厚さ,装置角度も過去の検査時の数値と現在の値が台上に投影され,被検者から目を離さずに最適なポジショニングが行える。ポジショニング解析機能は,撮影した画像からポジショニングの状態を解析して,数値として定量的に表示することで検査技術の向上に役立てる機能だ。また,AMULET Innovalityで好評だった圧迫自動減圧制御機能の“なごむね”が標準搭載となったことも紹介した。
さらに,AMULET SOPHINITYは,高さをはじめとして装置をコンパクト化し,制御ユニットやジェネレータを本体に一体化することで設置面積を20%削減している(いずれも同社従来機種との比較)。撮影台も最大45%薄型化・小型化しカーブ形状を採用して,ストレスを軽減している。

デジタルマンモグラフィシステムの最上位機種となる「AMULET SOPHINITY」を展示

デジタルマンモグラフィシステムの最上位機種となる「AMULET SOPHINITY」を展示

 

スキンラインと乳頭位置を撮影台面上にプロジェクションする「Positioning MAP」

スキンラインと乳頭位置を撮影台面上にプロジェクションする「Positioning MAP」

 

ポジショニングの状態を解析して数値として定量的に表示するポジショニング解析機能

ポジショニングの状態を解析して数値として定量的に表示するポジショニング解析機能

 

圧力を微調整できる圧迫レバーなど操作性にも配慮

圧力を微調整できる圧迫レバーなど操作性にも配慮

 

※ ※

また,富士フイルムでは,Women’s Healthソリューションの新ブランド「INNOMUSE(イノミューズ)」を立ち上げた。「Innovation」と「MUSE」を由来として名付けられたINNOMUSEでは,乳腺領域だけでなく産科,婦人科,骨代謝領域を含めて富士フイルムグループが持つマンモグラフィ,MRI,超音波,骨密度測定装置などの製品や技術を結集して,女性の健康やライフステージを支援する取り組みだ。ブースでは,INNOMUSEのコンセプトを紹介するパネルを設置し,各モダリティの展示場所を表示して来場者にアピールした。

新しいWomen’s Healthソリューションブランド「INNOMUSE(イノミューズ)」をアピール

新しいWomen’s Healthソリューションブランド「INNOMUSE(イノミューズ)」をアピール

 

●X線:動画対応FPDの搭載で1台で透視検査と一般X線撮影に対応する「CALNEO Beyond」

X線撮影システムのコーナーでは,ITEM 2023直前の4月3日に発表された富士フイルムヘルスケアの透視機能付きX線画像診断システム「CALNEO Beyond」が初展示された。静止画と動画の両方に対応する富士フイルムのデジタルラジオグラフィ「FUJIFILM DR CALNEO Flow」のCシリーズを搭載して,1台でX線透視と一般X線撮影に対応して効率的な検査室運用を可能にする製品だ。また,富士フイルムのDRと富士フイルムヘルスケアのX線撮影ユニットを組み合わせたグループシナジー創出から生まれた製品でもある。
CALNEO Beyondに搭載されたCALNEO Flowは,センサーパネルにTFT基板を採用し富士フイルム独自の画像読み取り技術であるISS方式と組み合わせることで高画質・低線量を実現しており,蛍光体にCsI(ヨウ化セシウム)を採用したCシリーズでは高いエネルギー変換効率で動画像にも対応する。これによって静止画だけでなく動画(透視)にも対応し,柔軟な検査室運用を可能にする。また,撮影ユニットの構成によって臥位だけでなく立位での透視にも対応でき,嚥下造影検査などにも対応できる。
さらに,CALNEO Beyondでは,AI技術を活用した「ポジショニングナビ機能」と「エクスポージャーナビ機能」を搭載する(いずれもオプション)。ポジショニングナビ機能は,コリメータ(X線管支持装置側)に設置したカメラの映像から被検者のポジショニングが設定された撮影メニューと異なる場合にアラート表示を出して注意を促す。また,エクスポージャーナビ機能は,コリメータに取り付けられた距離センサーを活用して,立位胸部撮影時の被検者の体格を大中小の3段階から推定した結果を表示することで撮影業務をサポートする。エクスポージャーナビは一般X線撮影の立位胸部正面で使用が可能。

1台で透視と一般撮影に対応する「CALNEO Beyond」

1台で透視と一般撮影に対応する「CALNEO Beyond」

 

透視は臥位だけでなく立位でも可能で,臥位テーブルと立位撮影台を組み合わせた構成で展示

透視は臥位だけでなく立位でも可能で,臥位テーブルと立位撮影台を組み合わせた構成で展示

 

富士フイルムの動画対応DRであるCALNEO Flow Cシリーズと組み合わせる

富士フイルムの動画対応DRであるCALNEO Flow Cシリーズと組み合わせる

 

●超音波:DeepInsight技術を搭載したハイエンドモデル「ARIETTA 750 DeepInsight」

携帯型装置から据置型のプレミアムクラスまで豊富なラインアップをそろえる超音波コーナーでは,AI技術を活用したノイズ除去技術“DeepInsight”を搭載した超音波診断装置「ARIETTA DeepInsight」シリーズに,新たにハイエンドモデルの「ARIETTA 750 DeepInsight」が加わったことをアピールした。2022年に発表されたDeepInsightは,信号とノイズを高精度に区別してノイズだけを効果的に抑制して高画質化することで,体内深部でも鮮明な画像が得られる。昨年のITEM 2022ではプレミアムモデルの「ARIETTA 850 DeepInsight」とミッドクラスの「ARIETTA 650 DeepInsight」を発表した。今回,発売されたARIETTA 750 DeepInsightはハイエンドモデルと位置づけられ,ARIETTA 850 DeepInsightに搭載されている浅部から深部までのフルフォーカスを実現するeFocusing PLUSや組織構造の視認性を高めるCarving Imagingなどの高画質化技術,Protocol Assistant機能やGuide View機能などのワークフロー改善機能,腹部をはじめ各領域で高度な診断・治療に対応するアプリケーション群を継承しつつ,臨床領域のさまざまなニーズに対応する装置となっている。ブースでは,3機種を並べて展示しDeepInsight技術を核としてさまざまな臨床ニーズに対応できることをアピールした。
腹部領域のアプリケーションとしては,脂肪肝由来の肝疾患が増加する中で肝疾患の早期発見や治療に貢献するReal-time Tissue Elastography(RTE)やShear Wave Measurement(SWM),超音波の減衰係数を計測するAttenuation Measurement(iATT),CTやMR画像を使って超音波ガイド下の治療支援を行うReal-time Virtual Sonography(RVS)などを紹介し、表在領域のアプリケーションとしては,ARIETTA 850 DeepInsightに搭載しているAI技術を用いた画像認識技術で乳腺スクリーニング検査における負担軽減の支援を行うeScreening機能を紹介した。

ハイエンドモデルの「ARIETTA 750 DeepInsight」

ハイエンドモデルの「ARIETTA 750 DeepInsight」

 

AI技術を用いた画像認識技術で乳腺スクリーニング検査における負担軽減の支援を行う「eScreening」機能

AI技術を用いた画像認識技術で乳腺スクリーニング検査における負担軽減の支援を行う「eScreening」機能

 

●PACS:臓器認識/SAIフィルタの対象臓器の拡大など機能が追加された「SYNAPSE SAI viewer」の最新バージョンを紹介

読影ソリューションコーナーでは,富士フイルムメディカルのAIプラットフォーム「SYNAPSE SAI viewer」の最新バージョン(Ver.2.2)の機能を中心に紹介した。SYNAPSE SAI viewer(以下,SAI viewer)は,富士フイルムのメディカルAIブランドであるREiLIから生まれた最初の成果の一つとして2019年に発売された。AI技術を用いて読影業務の効率化を図ることを目的に,「肺結節検出」や「肋骨骨折検出」などのプログラムを搭載して読影を支援する機能が統合された読影ビューワである。
最新バージョンでは,臓器認識/SAIフィルタの対象臓器の拡大と非造影画像への対応が図られた。胸部CT画像のリンパ節抽出機能の非造影画像への対応,腎臓領域ではSAIフィルタが非造影画像にも対応,また脾臓についてもSAIフィルタに対応した。さらに,頭部の神経放射線領域では,頭部CT画像での脳の低吸収域,高吸収域にSAIフィルタが適用可能になり可視化しやすくなった。救急などで専門医が不在の場合に非専門医の診断をサポートできる。さらに,脳室拡大の指標の一つであるEvans Indexや脳梁角の計測も自動あるいは手動での計測をサポートする。また,新たに腹部大動脈の最大短径自動計測も新たに可能になった。腹部CT画像から,大動脈の短径が最大になるスライスを自動で求めて短径を計測し,腹部大動脈瘤の診断指標となる最大短径がワンクリックで求められるようになり,計測者によるバラツキのない定量的な診断をサポートする。
さらに,臓器認識やセグメンテーション,計測結果などの結果を元にレポート記載のための所見候補文を自動で作成するスマート定型文や関心領域の経時的なフォローアップなど所見作成支援機能も対象領域を拡大している。頭部では血腫の体積推移,腹部ではHCCなど区域や計測結果などから所見候補文を提示して読影医のレポート作成を支援する。
「人工知能関連技術が活用された画像診断補助ソフトウェア(AIソフトウエア)」については,日本医学放射線学会が画像診断管理認証制度においてAIソフトウエアの認証が行われ,17のシステムが「適切な安全管理を必要とする人工知能関連技術が活用された画像診断補助ソフトウェア」として認められ,富士フイルムのAIソフトエアでは肺結節検出CAD,肋骨骨折検出CAD,CXR-AIDが認証されている。展示では,2022年度の診療報酬改定で画像診断管理加算3の施設基準に新たに追加された「(AIソフトウエアの)適切な安全管理を行っていること」の要件を満たすべく,動画などのコンテンツを用意して「適切な安全管理」をサポートしていることもPRした。

神経放射線領域における頭部SAIフィルタ適応例

神経放射線領域における頭部SAIフィルタ適応例

 

腹部大動脈の最大短径自動計測

腹部大動脈の最大短径自動計測

 

スマート定型文などで読影医の所見作成を支援

スマート定型文などで読影医の所見作成を支援

 

●ワークステーション:「SYNAPSE VINCENT」の「直腸解析」,「QSM解析」など新機能をアピール

3D画像解析システム「SYNAPSE  VINCENT」については,2023年2月から提供が開始された最新バージョンとなるVer6.8に搭載された新機能を中心に紹介した。SYNAPSE  VINCENTでは,画像認識技術を生かし臓器のセグメンテーションに基づく高精度な解析によって,画像診断や手術シミュレーションに役立つ3D画像を提供してきた。ITEM 2023では新たに搭載された数多くの機能の中から,「直腸解析」,「QSM(Quantitative Susceptibility Mapping:定量的磁化率マッピング)解析」のアプリケーションが紹介された。
直腸解析は,術前シミュレーションではこれまでCT画像データが用いられることが多かったが,非造影MR画像からAI技術を用いて開発した認識アルゴリズムによって,直腸やその周辺臓器,血管,神経,尿管などを抽出して3D表示する。関心領域(腫瘍など)と周辺臓器の位置関係を3Dで表示して手術を支援する。非造影MRI検査のデータから3D画像が得られるため,患者負担が少なくてすむほか,精度の高い臓器認識技術によって神経や血管をセグメンテーションして,関心領域と切除面の距離をカラーマップで表示するなど,より詳細な手術シミュレーション画像で実際の手術の際の術者を支援できる。
また,QSM解析は,富士フイルムヘルスケアが長年開発してきた画像解析処理技術であるQSMをSYNAPSE VINCENTに搭載したものだ。QSM(定量的磁化率マッピング)は,MRIの位相画像から脳の局所の磁化率を定量的に算出する手法で,磁化率が大きい常磁性体は白く,磁化率が小さい反磁性体は黒く描出される。この解析によってアルツハイマー型認知症や多発性硬化症など神経性疾患の診断の補助が期待される。QSM解析はMRIのマルチエコーで撮像した画像を用いて磁化率の評価を行うが,SYNAPSE VINCENTでは脳の各区域をセグメンテーションする脳区域解析と組み合わせて使うことで脳の区域ごとのQSM値の平均を表示することも可能となっている。QSM解析と臓器セグメンテーションの組み合わせによって新たな知見が得られることも期待でき,これも富士フイルムグループのシナジーの一つの成果とも言えるだろう。

非造影MRI画像から作成できる「直腸解析」

非造影MRI画像から作成できる「直腸解析」

 

QSM(定量的磁化率マッピング)と脳区域解析を組み合わせて区域ごとのQSM値の平均が表示可能

QSM(定量的磁化率マッピング)と脳区域解析を組み合わせて区域ごとのQSM値の平均が表示可能

 

●CT:「SCENARIA View Plus」にカメラ映像を解析してポジショニングをサポートする「AutoPositioning」機能を搭載

CTコーナーでは,64列128スライスCT「SCENARIA View Plus」と同じく64列/128スライスCTの「Supria Optica」(富士フイルムヘルスケア)を実機展示した。両装置とも富士フイルムのメディカルAI技術ブランド「REiLI」の下で開発された画像処理機能「IPV」,検査効率向上技術「SynergyDrive」を搭載して画質の向上や検査環境の改善を図っているのが特長だ。SCENARIA View Plusは,2022年4月に発売され昨年のITEM 2022で初めてお披露目された。GPUの搭載で処理性能が向上されており,そのパワーを生かした心臓の拍動によるブレを低減する「Cardio StillShot」(オプション)では,IPVの適用によって低被ばくで高画質の心臓CT検査を可能にする。今回のブースでは,ワークフローの改善を図るSynergyDriveに,寝台上に設けられたカメラの映像を元に患者のポジショニングをサポートする「AutoPositioning」機能が追加されたことを紹介した。AutoPositioningでは,カメラで撮影された映像を元にAI技術を活用して人体の特徴点を検出して,ワンボタンで寝台を最適な撮影位置にセッティングする。寝台の上下方向,頭足方向だけでなく左右(横)方向のズレも自動で修正する。カメラの映像はコンソール(操作卓)で確認が可能で,CT室だけでなく操作室でも映像で患者の状態を確認しながらセッティングできるのが特長だ。さらに,SynergyDriveのAutoPose機能によって撮影したスキャノグラムから撮影範囲を自動で決定できることも紹介した。
また,富士フイルムとのシナジーとして2022年に搭載された画像処理ワークステーション「SYNAPSE VINCENT Core」との連携では,撮影して画像再構成をすると同時に画像データが転送され,平行して処理が行えるようになった。SYNAPSE VINCENT Coreでは,頭部の低吸収域・高吸収域の自動認識,胸部の肺結節や気腫性病変が疑われる低吸収域の自動抽出,肋骨を展開した状態で表示するボーンビューワなどのアプリケーションが利用できる。
Supria Opticaは,2MHUのX線管装置ながらIPVとの組み合わせによって低線量でノイズを抑えた撮影が可能なことや経済性などが市場で評価されており,導入台数を伸ばしていることが紹介された。

寝台上のカメラから身体の特徴点を解析して最適な位置に自動でセッティングする「SCENARIA View Plus」

寝台上のカメラから身体の特徴点を解析して最適な位置に自動でセッティングする「SCENARIA View Plus」

 

映像を確認してワンボタンでポジショニングが完了

映像を確認してワンボタンでポジショニングが完了

 

データを自動転送して解析を行う「SYNAPSE VINCENT Core」(写真は頭部の低吸収域解析機能)

データを自動転送して解析を行う「SYNAPSE VINCENT Core」(写真は頭部の低吸収域解析機能)

 

●RIS:視認性や操作性を一新し,放射線部門のワークフローを支援する「RADISTA Workflow」をアピール

放射線技師支援ソリューションを展示したコーナーでは,富士フイルム医療ソリューションズの新しい放射線部門業務システムである「RADISTA Workflow」を展示した。RADISTAは,2022年10月に富士フイルム(株)が放射線部門業務支援ソリューションブランドとして新たに立ち上げたもので,RADISTA Workflowはその第1弾となる。
RADISTA Workflowは,富士フイルム医療ソリューションズが長年培ってきた放射線部門業務支援システムのノウハウをベースに,照射情報や統計情報など多くのデータを管理,把握しつつ,安心して業務を遂行できるソリューションとして新たに開発されたものだ。
RADISTA Workflowでは,“Simple&Quality”をデザインコンセプトとして視認性と操作性を高めることを目的に,注意喚起色が目立つようにベースの色はシンプルにすっきりとした配色になった。その一方で,アイコンやタブを使って少ないクリックで一覧性良く操作できるようにデザインも工夫されている。そのほか,データに合わせて表示する領域を変更したり,よく使うボタンを前面に使用頻度の低いボタンは隠すことができるなど,画面レイアウトの融通性を高めているのも特徴だ。
受付業務では,患者受付をバーコードで読み込んだのか,患者番号を手動で入力したかを色を変えて表示し,その記録をRISに記録するなど医療安全にも配慮されている。また,受付画面の表示では,患者のオーダ内容を,リスト表示だけでなくカード型で表示することで検査内容までくわしく参照できるようにした。1人の患者で複数の画像検査がある場合にも,次の検査を内容まで把握して検査業務を安全に進行できる。

デザインやレイアウトを見直し操作性や視認性が向上した「RADISTA Workflow」の基本画面

デザインやレイアウトを見直し操作性や視認性が向上した「RADISTA Workflow」の基本画面

 

患者受付画面はカード型でオーダ内容の詳細を一覧性良く確認できる。

患者受付画面はカード型でオーダ内容の詳細を一覧性良く確認できる。

 

受付以外の機能として,「カレンダー予約参照」機能も紹介した。検査予約の内容を1週間先まで一覧して確認できる機能だ。電子カルテなどでは予約の空き時間を探すのに,検査予約の内容を1つ1つ確認する必要があったが,カレンダー予約参照では予約スケジュールを週単位や1日単位で一覧表示が可能で,予約空き時間を簡単に探し出すことができる。また,「IVR予約オーダ管理」は,心臓カテーテル検査・治療を行う血管撮影室の予約管理を行うための機能だ。処置を伴うことが多い血管撮影室は,手技時間が流動的で決まった予約枠で管理することが難しい。IVR予約オーダ管理では,予約枠の変更を画面上でドラッグ&ドロップで変更したり,時間の延長などの管理も容易にできる。医師だけでなく看護師や診療放射線技師など多くのスタッフがかかわる心カテ業務でのスケジュールの共有などにも役立つ機能となっている。IVR予約オーダ管理は,新たに搭載された機能だが,施設からの要望でカスタマイズで構築しすでに稼働実績があるシステムをベースに開発されたもので現場の声を反映した完成度の高いシステムとなっていることをアピールした。

予約内容を一覧で確認して空き時間を効率的に管理できる「カレンダー予約参照」

予約内容を一覧で確認して空き時間を効率的に管理できる「カレンダー予約参照」

 

心カテ業務や血管撮影室の進行管理やスケジュールなどの共有が可能な「IVR予約オーダ管理」

心カテ業務や血管撮影室の進行管理やスケジュールなどの共有が可能な「IVR予約オーダ管理」

 

●レポート:「読影トレーニング」や「自動割振」など教育や働き方改革を支援する機能を追加した「ShadeQuest/Report」

読影ソリューションコーナーでは,富士フイルム医療ソリューションズのPACSである「ShadeQuest」のラインアップが展示され,新機能を中心に来場者に紹介した。所見レポート作成システムである「ShadeQuest/Report」では,安全で確実な読影環境のためのさまざまなサポート機能,働き方改革を支援する機能,教育や研修のための機能などが新たに追加された。
「読影トレーニング」機能は,読影済みで所見や診断がついた検査を“トレーニング”フォルダに入れるだけで,患者情報や検査依頼情報のみの状態で診断や所見がマスクされたトレーニング用の症例が作成できる機能だ。指導医からの読影ヒントやフィードバックなどのコメントが入力でき,研修医が実際の症例で読影トレーニングを行う環境を用意することができる。トレーニング用の症例の作成にかかっていた手間や時間をサポートする機能だ。

フォルダに保存するだけでトレーニング用の症例が作成できる「読影トレーニング」機能

フォルダに保存するだけでトレーニング用の症例が作成できる「読影トレーニング」機能

 

働き方改革を支援する機能として提案されたのが,「読影自動割振機能」だ。自動割振で読影業務を分担するスタッフを選択して読影割り当てユーザーのグループを作成すると,当日の検査が自動で均等に割り振られる。従来は当日検査のリストから読影医が任意に検査を選択して読影業務を行うのが一般的な方法だったが,分担量が片寄るなどで不公平感が生まれるケースがあった。自動で割り振ることで平等な業務負担を実現できる。今後,スタッフの専門性やモダリティ担当などの割り振り条件などの設定も可能になる予定だ。
また,外部の遠隔読影サービスへの依頼がShadeQuest/Reportから直接できる機能が追加された。リスト上で外部へ依頼したい検査を選択して遠隔依頼先を選択するだけで読影依頼が完了する。読影結果も院内の読影と同じように扱うことができる。従来,遠隔読影サービスの利用は別システムが必要で,手間や進捗状況が把握できないなどの問題があったが,ShadeQuest/Reportに統合することで外部検査の進捗管理(依頼中,読影済みなど)もでき,読影業務の効率的な運用が可能になる。

読影業務を分担するスタッフを選択することで自動で業務を割り振る「読影自動割振機能」

読影業務を分担するスタッフを選択することで自動で業務を割り振る「読影自動割振機能」

 

ShadeQuest/Reportのリストから遠隔読影サービスへの依頼が可能

ShadeQuest/Reportのリストから遠隔読影サービスへの依頼が可能

 

インジケータ機能は,検索一覧画面上で作成された検査リスト(タブ)やメールをアイコン化して常時表示する機能で,所見入力画面上からでも使用頻度の高いタブの検査の進捗状況や内容を把握することができるようになった。アイコン上にはバッチで件数も表示させることができる。また,所見入力画面上では,症例検索を行うことができ,所見や診断,キー画像を確認できるとともに,参照用として「ShadeQuest/ViewR-DG」を別ウインドウで表示させることができるようになった。読影中の患者とは別の患者のコンサルテーション依頼を受けた時など,現在の読影業務を中断することなく所見内容や画像を確認して対応することができ,業務の効率化が期待される。

フローティングアイコンから各種の通知に直接アクセスできるインジケーター機能

フローティングアイコンから各種の通知に直接アクセスできるインジケーター機能

 

ドラッグ&ドロップで簡単にティーチングファイルが作成できる画像タグ機能

ドラッグ&ドロップで簡単にティーチングファイルが作成できる画像タグ機能

 

●お問い合わせ先
社名:富士フイルムメディカル株式会社 営業本部マーケティング部
住所:〒106-0031 東京都港区西麻布2-26-30 富士フイルム西麻布ビル
mail:shm-fms-event@fujifilm.com
URL:http://fms.fujifilm.co.jp/

●お問い合わせ先
社名:富士フイルムヘルスケア株式会社
住所:〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-3
mail:dgi-003198-item_info@fujifilm.com
URL:https://www.fujifilm.com/fhc/ja

●お問い合わせ先
社名:富士フイルム医療ソリューションズ株式会社
住所:〒106-0031 東京都港区西麻布2-26-30 富士フイルム西麻布ビル
TEL:03-6452-6880
URL:https://www.fujifilm.com/ffms/ja

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