フィリップス・ジャパン,次世代の脊椎疾患治療ソリューション「ClarifEye」の稼働開始

2022-10-14

血管造影/IVR

フィリップス・ジャパン


(株)フィリップス・ジャパン(以下 フィリップス)は, 「2030年までに25億の人々の生活を向上させる」を達成目標に掲げ, 健康な生活, 予防, 診断, 治療, ホームケアにいたるヘルスケア・プロセスのすべてにイニシアティブを持ち, すべての人々のより良い健康と満ち足りた生活の実現をめざしている。

今回,AR(拡張現実) テクノロジーを実装したフィリップスの脊椎手術用ナビゲーションシステム「ClarifEye(クラリファイ)」を用いた初めての症例が,国際医療福祉大学三田病院にて行われた。アメリカを含めた環太平洋地域で初めての稼働となる。日本では2022年4月に販売を開始し,既存のハイブリッド手術室におけるX線血管造影装置「Allura Clarity(アルーラ クラリティ)」に搭載する形で導入され,脊椎の狭窄症や側弯症に対する治療に活用されている。

三田病院での脊椎手術

 

国際医療福祉大学三田病院 整形外科 石井賢氏のコメント
「脊椎手術をハイブリッド手術室で行う利点は,低線量3D-CT撮影が可能であること,十分なスペースと大画面モニターを利用できることなどあるが,そこに今回の新たなナビゲーションシステムが加わったことで,より安全な手術環境が備わった。既存のシステムと比較するとレファレンスフレームならではの誤差がなく,リアルタイムで椎骨の位置を確認できることが素晴らしい。「ClarifEye」は患者にとっても医療従事者にとっても,真の低侵襲性を実現する新技術だと思う。」

今後は国際医療福祉大学三田病院とフィリップスで臨床研究に取り組み,「ClarifEye」の有用性に関して調査を進めていく。

ハイブリッド手術室と今後増加が見込まれる脊椎脊髄手術

ハイブリッド手術室

 

ひとつの部屋で血管撮影装置と手術台が組み合わさったハイブリッド手術室は,2013年にTAVI(経カテーテル大動脈弁植込術)が保険適用されたことをきっかけに広まり,現在は全国で約300台稼働している。近年では,稼働率の向上を目指して循環器以外の手術での使用が増え,中でも脊椎手術への活用が注目を集めている。

人口高齢化の先進国として,日本では脊椎手術の件数が年々増えてきている。脊椎の疾患で最も多くみられる腰椎脊柱管狭窄症は高齢者の約10%を占め,推定患者数は約580万人に上るとされている。重度の症状がみられる場合は外科的手術が行われ,圧迫部位の切除,スクリューなどの固定具を用いた骨の固定術が行われる。従来は大きな切開から骨を直視下で確認しながら固定具を留置することが一般的であったが,出血や軟部組織への損傷を最小限とし術後の痛みを低減するために,小さな切開から行う低侵襲手術が増えている。この場合,周辺の血管や神経を傷つけず高度な精度で手技を行うために,術中のX線撮影の重要性が高まっている。

様々な術中撮影装置がある中で,ハイブリッド手術室は短時間で高画質な3D画像(Cone-Beam CT撮影画像)が入手でき,詳細な解剖やスクリュー位置を術中に容易に確認できる。また,装置の柔軟性やワークフローに合わせた使い勝手も高い評価を得ている。脊椎手術ではそこからさらなる精度の向上と患者被ばく低減のため,手術用ナビゲーションシステムとの併用も導入が進み始めている。ナビゲーションシステムに患者の脊椎3D情報を事前に取り込むことで,術中にX線を使用することなく,表示されたガイダンスに沿ってのスクリューの留置が可能となる。しかし,撮影装置とナビゲーション装置がそれぞれ必要であることや,侵襲的なレファレンスフレームが必要であることなど既存のものでは使い勝手や精度にはまだまだ課題が見られ,市場では新たなソリューションが求められてきた。

脊椎手術用AR搭載ナビゲーションシステム「ClarifEye」

「ClarifEye」はフィリップスのハイブリッド手術室のX線血管造影装置「Allura(アルーラ)」もしくは「Azurion(アズリオン)」に搭載することで,低線量で高画質の2D/3Dの術中画像とAR(拡張現実)を用いたナビゲーション情報を確認できる業界初のソリューション。術前の解剖の確認,手術プランの構築,手技中のガイダンス,そして術後の手技精度の確認をひとつの機械で行うことができ,術中はフィリップス製の皮膚マーカー「ClarifEyeマーカー」を使用することで,椎体ごとの誤差や患者への負担が少ない形で患者位置を把握し,手技精度を担保する。またハイブリッド手術室特有の大画面モニターには術野のライブ映像とCT画像に合わせたスクリューのガイダンスを表示でき,X線を用いることなくスクリューを留置することができる。

フィリップス製の非侵襲マーカー

 

術中時のライブ画像

 

今年から販売を開始した日本を始め,「ClarifEye」は世界各国で広まりを見せている。ヨーロッパや中東では昨年より導入が始まっており,University Medical Center Schleswig-Holstein (ドイツ,キール)やKarolinska University Hospital(スウェーデン,ストックホルム),Regional Hospital of Lugano(スイス,ルガーノ)などで,外傷(トラウマ),側弯症に対し「ClarifEye」を活用した低侵襲・直視下での脊椎手術が行われている。臨床現場データでは,術中撮影が手技精度とアウトカムの向上に寄与し,従来法と比べて再手術率の低減につながることが実証されており,学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されたデータでは,「ClarifEye」を用いた手技は3Dナビゲーションを用いない椎弓根スクリュー挿入と比較し精度の向上が見られた(94% vs 89.6%) [1]。また「ClarifEye」を用いた臨床研究のデータでは,低侵襲の椎弓根スクリュー挿入で98%の精度が見られた[2]。そして,モバイル Cone-beam CTと比較して,画質の評価に使われる信号雑音比は3.7倍,X線量は83%削減された[3]

「国際医療福祉大学三田病院の石井先生はじめ,多くの医療従事者の方々にご協力を頂きこの革新的なソリューションを日本に上市することができたことを嬉しく思います。フィリップスの脊椎に特化したソリューション「Spine Suite(スパインスイート)」に含まれる「 ClarifEye」は治療の安全性や質の向上に貢献できる大きな可能性を秘めています。一人でも多くの患者様の治療に貢献できることを期待しています。」((株)フィリップス・ジャパン  IGTビジネス・マーケティング&セールスリーダーの大島一範氏)

ハイブリッド手術室の新しい活用方法として脊椎手術が注目を集めているが,高画質や被ばく低減だけでなく,術者からはより良い使い勝手を提供できるソリューションが求められていた。フィリップスは新しいナビゲーションシステム「ClarifEye」を展開することで,次世代の手術環境の構築を目指している。

販売名:インテグリス アルーラ フラットディテクター
医療機器認証番号:21500BZY00208000
管理医療機器/特定保守管理医療機器/設置管理医療機器

販売名:血管造影X線診断装置 Azurion
医療機器認証番号:228ACBZX00012000
管理医療機器/特定保守管理医療機器/設置管理医療機器

販売名:ClarifEye ニードル
医療機器認証番号:303ACBZX00043000
管理医療機器

参考文献
[1] Elmi-Terander at el, Augmented reality navigation with intraoperative 3D imaging vs fluoroscopy-assisted free-hand surgery for spine fixation surgery, a matched-control study, Nature Sci. rep. 2020 Jan 20;10(1):707.
[2] Scarone, P., Mollica, C., Jenniskens, I., & Chatterjea, A. (2022). P120. Augmented reality navigation for percutaneous thoracolumbar pedicle screws: a prospective clinical study. The Spine Journal, 22(9), S184-S185.
[3] Rami Nachabe, at. el, Radiation dose and image quality comparison during spine surgery with two different, intraoperative 3D imaging navigation systems, J Appl Clin Med Phys. 2019 Feb;20(2):136-145.

 

●問い合わせ先
(株)フィリップス・ジャパン
TEL 0120-556-494
www.philips.co.jp/healthcare

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