スペクトラテック,産総研が開発した新技術「血流動態分離法」を研究用fNIRS装置全機種に採用

2016-8-1


Spectratech OEG-17APD

(株)スペクトラテックは,国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下,産総研)が開発した皮膚血流分離に関する新技術「血流動態分離法」を,研究目的用に製造販売しているSpectratech OEGシリーズfNIRS装置の全機種に標準搭載し7月25日より発売開始した。

fNIRS装置で得られるヘモグロビン変化信号には,脳活動に起因する局所的な血流変化信号のほかに,主に全身性の変化を伴う頭皮からの血流変化信号が含まれていることが知られている。皮膚血流成分と呼ばれている成分である。このため従来,fNIRS装置で計測を行う脳科学の研究者は測定方法の工夫や各種の成分分析手法等によってこの皮膚血流成分を差し引く方法で対応してきた。

産総研は酸素代謝が生じる脳の毛細血管での血流動態と他の太い血管での血流動態を弁別することで脳機能活動に関わる血流変動を抽出する新技術「血流動態分離法」を考案,公告特許1)と論文2)により示した。加えて,スペクトラテックのfNIRS装置Spectratech OEG-17APDの開発版5)および製品版3),4)を使って基本のfNIRS信号に対し本分離法,同じく産総研が開発した「プローブ多重配置法」での分離能力の比較評価を示してきた。運動野での指タッピング時の検証では,従来有望視されていたプローブ多重配置法を上回る好結果を示した。プローブ多重配置法のように高価な補助センサーの追加の必要が無く,過去に計測した計測データにも利用できる優れた方法である。計測中に原信号と本分離法で得られた信号をリアルタイムで切り替え観測できる能力も持っている。

スペクトラテックは平成26年より産総研とfNIRSに関する共同研究を行っている。そこで脳科学の研究者の皆様に広く評価を得られればと産総研より実施許諾を得て,研究目的用装置Spectratech OEGシリーズのOEG-17APD,OEG-SpO2,OEG-16に,この機能を価格アップすることなく提供することにした。すでに同社装置を購入したユーザーにも無料で同社ホームページからダウンロードして利用できるようになっている。

fNIRS装置は最近では医療現場を越えて心理学,教育学,言語学,保健学,介護学,スポーツ,BCI(Brain Computer Interface)など多くの研究用途で利用され注目を浴びている。Spectratech OEGシリーズはこのような幅広い分野の研究者の皆様のお役に立てることを目指して開発された製品である。

スペクトラテックは医療機器の開発,ファブレス製造,販売を事業とし医療,半導体,画像の研究者及び技術者を中心に集まった,スペクトラム拡散技術を利用した医療装置に関する特許など新規性の高い技術を有するベンチャー企業である。

脳血流変化:一般的には,脳局所で計測されるオキシヘモグロビン,デオキシヘモグロビンの濃度変化を指し,最近は「ヘモグロビン変化」と学会等では呼ぶようになってきている。

fNIRS装置:従来は光トポグラフィー,機能検査オキシメータ,光イメージング脳機能測定装置などと呼ばれていた近赤外光を使った脳血流測定装置は,今後はfNIRS (functional NIRS equipment)の名称に統一されていく見込み。
 
References  
1) 日本国特許第5641355号 生体光計測装置,プログラム及び生体光計測方法  
2)  Toru Yamada, Shinji Umeyama, and Keiji Matsuda, ”Separation of fNIRS Signals into Functional  
  and Systemic Components Based on Differences in Hemodynamic Modalities,” PLOS ONE,7(11),e50271(2012)  
3)  Toru Yamada,Real-time system for extracting and monitoring cerebral functional component during  
    fNIRS measurement. SPIE Biophotonics Japan, 2015.10.27  
4)  山田ほか,fNIRS計測における脳機能信号の実時間抽出・モニタリングの試み,第17回日本ヒト脳機能 マッピング学会,2015.7.2  
5) Toru Yamada,Development of a fiber-less fNIRS system and its application to hair-covered head,SPIE 2014,2014.2.1 c.

 

●問い合わせ先
(株)スペクトラテック
広報担当
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